ハクマン 部屋と締切(デッドエンド)と私 第33回

ハクマン 部屋と締切(デッドエンド)と私 第33回

ロックダウンにより、
印刷所の稼働が止まってしまったら、
私も収入激減の恐れが……。

相変わらずコロナウィルスは終息することなく、日々悪化の一途をたどっている。

コロナ自体も脅威であるが、その影響で多くのイベントが中止されている。
また現在、「外出自粛を要請」という、映画八甲田山で上層部が「これは命令ではなく希望であり提案だ」と言ったのと全く同じ号令が出されている。

何故命令しなかったかというと、命令にすると、装備がどうのこうのと、金を引っ張られてしまうため、あくまで隊が自主的に行った訓練ということにしたいからである。
しかし、上層部が言う「提案」というのはほぼ命令と同じなので、下の者はやらざるを得ないのである。
その提案によりどのような結果になったかは映画で確認してほしい。

それと同じように、外出禁止命令にすると、国が出した命令なのだから禁止中の生活は政府が保障すべき、という話になってしまうからだろう。

まさに「完全に一致」であり、事前に300回ほど八甲田山を予習しておいた私は瞬時に「これ八甲田山で見たやつだ!」と気づくことができた。
このように、日本というのはある意味明治時代から変わっていない、そして八甲田山は神映画ということが言える。外出自粛ついでに全国民が履修することをお勧めする。
もう八甲田山を見てくれるなら何でも構わない。

実際すでに自粛要請により、何かとやり玉に挙がっているライブハウスなどを筆頭に、飲食店など、外出を要する産業は大ダメージを受けているようである。
もはやコロナによる死より、経済的な死の方が迫っているという人も多いのではないだろうか。

漫画家は、基本的に家の中で仕事が出来る。むしろ言われなくても外に出ないし、逆に外に出ろと言われた方が生命の危機を感じてしまう人種である。

しかし、このまま事態が深刻化すれば、影響が出るのは時間の問題だと思う。
いくら作家が「外出なくても平気っす! いくらでも原稿書けるっす!」と、後半若干心にもないことを言っても、ロックダウンにより、印刷所の稼働が止まってしまったら、雑誌が発行されず休刊、そしてそのまま廃刊が相次ぐ可能性が十分にある。
作家にとって、掲載誌が休刊になり、移籍先が見つからなければ打ち切りと同様であり、他に連載がなければ即無職である。
また、発売予定だった単行本が発売されないという事態も予想される。
今はネットがあるため、WEB連載に切り替える、単行本も電子だけ出すなど救済策はある。

逆に言えば「電子がなければ即死だった」ということであり、20年前に同じ事態が起こっていたら、作家は軒並み餓死である。
もちろん電子書籍も、配信会社の機能が止まったら終了だ。

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カレー沢薫(かれーざわ・かおる)

漫画家、エッセイスト。漫画『クレムリン』でデビュー。 エッセイ作品に『負ける技術』『ブスの本懐』(太田出版)など多数。

◎編集者コラム◎ 『ボローニャの吐息』内田洋子
◎編集者コラム◎ 『浄瑠璃長屋春秋記 潮騒』藤原緋沙子