ハクマン 部屋と締切(デッドエンド)と私 第33回

ハクマン 部屋と締切(デッドエンド)と私 第33回

ロックダウンにより、
印刷所の稼働が止まってしまったら、
私も収入激減の恐れが……。

ともかく、今後私も収入激減の恐れが十分にある。
今特に影響を受けていない、という人も、風が吹いて儲かった桶屋が副業で始めたデリヘルに、マックスバリュのレジをやっているはずの嫁が在籍していたという、連鎖的影響を受ける可能性はいくらでもあるのである。

むしろ、無影響な内に、影響を受けた時どうしたらよいかを考えておくべきだろう。
現在日本政府は、マスクを2枚配ることを決定した以外は何もしていないように思えるが、ウィルスによる減収世帯への貸付などはすでにはじまっている。

借りたからには返さなければならず、貸付より補償を早くすべきだとは思うが、この無利子貸付金を利用するか、いきなり闇金に行ってしまうかでは大きな差がある。

日本はそう言った支援制度の多くが「申告制」であるのが問題だ、と言われている。
どれだけ巨根でも、ズボンに乳袋ならぬ棒袋が必要なほどでかくなければ「僕はちんちんがでっかいでーす!」と地獄のミサワのように自己申告しなければ誰にもわかってもらえないように、制度も、まず知っていてさらに「お金貸してください!」と自ら手を挙げなければ、向こうから「困ってないすっか? 金貸しましょうか? ちんちんでかくないすか?」と聞いてきてはくれないのである。
経済的弱者は同時に情報弱者であるケースも多いため、弱者のための制度が弱者に知られていない、という問題があるのだ。

つまり、政府の案内不足が問題、むしろ金を出したくないから「次郎スペシャルタピオカマシマシ」みたいな、知る人ぞ知る裏メニューみたいにしている、という意見もある。
しかし、実は結構役所やHPに案内は出ているのである。
少なくとも、ヒミツの入口を発見しないと入れないというような、昔の個人HPのエロ置き場みたいな仕様ではない。

しかし、案内が出ていても、困っていない時はそれが自分には無関係と思っているので、視界に入っていないため、知らない、聞いてない、ということになってしまうのだ。
そして、いざ困った時に情報を得ようにも、ネットどころかすでに電気が止められている場合もあるし、役所に行こうにも、役所に行ける服がなく、道中5回ほど職質に遭って心が折れるという事態も予想される。

そもそもそういう状態になると、「役所へ行く」という発想すらできなくなる可能性も高い。

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カレー沢薫(かれーざわ・かおる)

漫画家、エッセイスト。漫画『クレムリン』でデビュー。 エッセイ作品に『負ける技術』『ブスの本懐』(太田出版)など多数。

【著者インタビュー】貫井徳郎『罪と祈り』/あまりにも切ない「正義と罪を巡る小説」
◎編集者コラム◎ 『浄瑠璃長屋春秋記 潮騒』藤原緋沙子