ハクマン 部屋と締切(デッドエンド)と私 第4回
漫画家になる前は「〆切り」という現象に
憧れすら感じていたのに。
憧れすら感じていたのに。
それに対してそんなことを言うのは、老害が若者の足を引っ張っているにすぎない。
そういうことを言うパイセンのほとんどが、自分が好きでも嫌いでもない仕事を惰性でやっているのを「ヨシ」としたいからそういうことを言っているのである
しかし、中には、本当に好きなことを仕事にして楽しくなくなったパイセンもいるので、その一例としてそう言っている場合もなくはない。
そして私も一例として、漫画を描くこと自体は楽しくなくなった、とは言わないが「〆切りは全然楽しくなくなった」とだけは言っておく。
趣味であれば〆切りは「ゴール」だが、連載ともなると「〆切が終わる」「終わるとどうなる?」「知らんのか、次の〆切りがはじまる」というコブラ状態になるだけなのだ。
8合目を抜け頂上に立って見える景色は絶景ではなく「次の〆切り」なのである。
しかし次の〆切りがもう来ないというのは「連載終了」の時である。それこそ登頂しての終了なら良いが、漫画の世界は2合目あたりで「雲行きが怪しいので中止」ということが、たまに、いやよくある。
それを考えると、やはり「〆切り」がある状態こそが作家を作家たらしめ「あるうちが花」と言える。
そんな作家にとって色んな意味で大切な「〆切り」自体を忘れる私は、やはり「無職」なのだな、と実感した。
あと「〆切りの日、漫画家の後ろで担当が怖い顔をしている」という状態も、私にとってはフィクションだ。
何故なら私の家に来ようと思ったら飛行機でも2時間はかかる。わざわざ怖い顔をするためだけに来るようなら「逆にお前暇だろ」ということである。
(つづく)