ハクマン 部屋と締切(デッドエンド)と私 第6回
漫画雑誌というのは「努力・友情・勝利」などではなく「疑心暗鬼」で出来ている。
だからというわけではないが、私はピンチはあっても「落とす」というところまでは行ったことがない。
日銭が惜しいというのもあるが、私が雑誌に穴をあけると「フレッシュな読み切り」が載ってしまうかもしれないからである。
そのフレッシュな奴がそれを機に注目を集め、連載になり単行本が100万部売れてアニメ化されたら死んでも死にきれない。
毎年新しい才能が生まれる。私には「若い芽を摘む」力などない。だったらせめて、若い芽が最初に地上に出るチャンスを少しでも減らすべきだろう。
よって私は連載中は絶対に穴をあけない、そこにフレッシュが流れ込んでくるからだ。
そんなわけで私は今まで自分の都合で休んだことはない。
編集はそう思ってないようだが、もちろん作家とて人間である。病気などやむを得ない理由で休まなければいけない時もある。
だが私は「馬鹿は風邪を引かない、ソースは俺」と言えるぐらい、今まで健康だったため「作者急病のためお休みします」も今までやったことがない。
ただし「担当急病のため休載」はやったことがある。
嘘のような話だが本当だ。
漫画ではないが、担当編集が入院するため連載がしばらくストップするということがあったのだ。もし私にその連載しかなかったら餓死である。
こういうことがあるから、歩合制の奴が月給の奴を心から信頼することはないのだ。
(つづく)