【慶応大学から作品を発信】小島政二郎のオススメ作品を紹介
慶應義塾大学文学部在学中から作品を発表。彼の小説は次々と大衆の人気を得て、映画化もされ一躍人気作家となっていきます。直木賞・芥川賞の選考委員となり、文学界でも長く活躍をすることとなった小島。今回はそんな小島政二郎のオススメ作品をご紹介します。
慶應義塾大学文学部在学中から『三田文学』で作品を発表し、学生時代から慶應関係者の間では名の知られた存在でした。1916年には先輩作家の文章について書いた『オオソグラフィ』が森鴎外に認められ、1927年に発表した『緑の騎士』で大衆的人気を得ることになり名声と人気を獲得していきます。『花咲く樹』『人妻椿』『新妻鏡』など発表する小説は次々と大衆の人気を得て、映画化もされ一躍人気作家となっていきます。1934年には直木賞・芥川賞の選考委員となり、文学界でも長く活躍をすることとなります。
眼中の人
出典:http://www.amazon.co.jp/dp/400311471X
小島政二郎が文学の師と仰いでいた芥川龍之介や菊池寛らとの交流が描かれた自伝的な長編小説となっています。時代を代表する2人の人気作家との旅先でのエピソードや裏話なども興味深く、作品からだけではわからない彼らの才能や非凡さをうかがい知ることができます。また、2人以外にも日本を代表する児童文学作家である鈴木三重吉とのエピソードも登場します。彼らとの交流を通して、その才能を目の当たりにし自信を喪失しそうになったりもしながら、自身の執筆や理想の文学というものについての答えにたどりつくストーリーは大変興味深いものとなっています。
年少より鴎外・荷風に傾倒していた著者(1894-1994)が、芥川竜之介や菊池寛の知遇を得て文学に開眼してゆく経緯を描いた自伝的長編小説。文学修業の途上で自分を啓発してくれた人々をつねに眼中にあって忘れられない人として語る大正文壇史でもある。
食いしん坊
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1951年から1968年にかけて雑誌「あまカラ」で長期連載された、食にまつわるエッセイをまとめた『食いしん坊』は当時かなりの人気を集めました。この作品がきっかけで食通として知られるようになり、その後も食に関する著作が数多く発表されます。また、芥川龍之介や魯山人といった有名作家たちとの食を通じたエピソードも語られています。うなぎ、天ぷら、寿司など料理についての描写は実に臨場感があり食欲をそそられます。小島政二郎が甘党であったため甘味について多く書かれているのも特徴的です。
麩嘉の笹巻き、名古屋流スキ焼き、黄肌の鳥、桐正宗……、味を訪ねて西東。あまいカラいに舌鼓。うまいものに身も心も捧げた稀代の食通作家による、味の文壇交友録。
葛飾北斎
人々の生活や自然の美しさを絵で表現した葛飾北斎。写楽や滝沢馬琴など同時代に活躍した人気作家との交流を通じて画家として、人として北斎が成長してく姿がいきいきと描かれています。また、後に北斎の妻となるお砂との出会いや、写楽の恋人おかつなど魅力的な女性のキャラクターが作品をさらに盛り上げます。
人々の生活を見つめ、大いなる自然を見つめ、その感動を絵にした男・葛飾北斎。妻・お砂との運命的な出会い、写楽、馬琴、蔦屋重三郎らとの交流を通じて画家として人間として成長していく姿を瑞々しいタッチで描く。
芥川龍之介
出典:http://www.amazon.co.jp/dp/406290022X
その才能に感嘆し、プライベートでも交流のあった芥川龍之介の姿を描いた小説です。芥川の英語力や圧倒的な読書量、そしてそれらの突出した才能が彼の小説にマイナスの影響を与えているのではないかという考察がなされています。この作品は著者が84歳の時に発表されたものであり、長い間近くでその才能や苦悩を見ていたからこそ感じられた小島政二郎の芥川に対する様々な思いが表現されています。
若き日に師事した芥川龍之介の姿を活写した、著者晩年の作。芥川文学の、漢文脈による洗練された修辞をはじめとした教養主義は、「私」を語ることのできない「物語作家」に彼をおしとどめ、「小説家」へと転身をはかろうとした試みの不可能性を悲劇を読み解く。芥川の作品の持つ窮屈さは、養子・龍之介の養家への気兼ねの表われだとも喝破する。身近に接した芥川を、老成した小説家の眼で捉えた快作。
永井荷風
出典:http://www.amazon.co.jp/dp/4480431160
1972年に雑誌連載をまとめた本作が出版予定でしたが、作品を読んだ永井荷風の遺族から出版許可が降りなかったため、世には出ていませんでした。小島政二郎の死後、2007年に出版されると小島政二郎の才能が再評価されることとなりました。永井荷風についてその才能については賛辞が多いものの、人間性については辛辣な描写が続きます。芥川龍之介や森鴎外などとのエピソードも登場し、知られざる永井荷風の人間味あふれる姿が描かれています。
荷風を熱愛し、「十のうち九までは礼讃の誠を連ねた中に、ホンの一つ」批判を加えたことで終生の恨みをかってしまった作家の傑作評伝。
最後に
100歳で亡くなるまで、長い間文壇で活躍した小島政二郎。大衆向けの小説で人気を得ていましたが、辛口な人物批判もかなり注目を集めていました。作家との交流も活発で人気作家たちとの赤裸々なエピソードが作品にはよく登場します。大正から昭和にかけての文学や作家の雰囲気を堪能したい方にオススメの作品です。
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初出:P+D MAGAZINE(2016/09/01)