【高校生になりました!】鈴木るりか新作『太陽はひとりぼっち』インタビュー「光、希望、救いのある物語を書いていきたい」

10万部を超えるベストセラーとなったデビュー作『さよなら、田中さん』の田中花実母娘が帰ってきた! 文学界を騒然とさせた中学生(当時)作家・鈴木るりかの3作目にして、高校生になって初の新作書き下ろし小説『太陽はひとりぼっち』が、2019年10月に発売。今作で描きたかったこと、読者に伝えたかったこととは何なのか、創作に込めた熱意とこれからの展望について、著者にインタビューしました。

──高校生になって、環境や心境の変化はありますか? 執筆をするにあたって、何か変わったことがありましたら、教えてください。

鈴木るりかさん(以下、鈴木):試験や課題も増えたので学校の勉強が大変になったほか、部活動が週に2回あるので、執筆時間を確保するのが大変にはなりましたね。やらなければいけないことが増えました。環境については、中高一貫校なので、一緒に進学した友人も多く、変わったと実感することは少ないのですが。

 

──デビュー作『さよなら、田中さん』がベストセラーとなり、大反響を呼びました。続編となる『太陽はひとりぼっち』は3作目ですが、書いていて苦心したのはどんなところですか?

鈴木:高校生になったこともあり、「文芸書」として書きたい、という気持ちで、表現や使う言葉に気を配りました。私は簡潔でわかりやすい文章が好きなので、それも心がけて書くようにしましたね。苦心したというよりは、書いているうちにキャラクターが動いてくれて、それぞれの生を生きてくれて……。とても楽しく書くことができました。
 
3Q6A0459
 

──ご自身で、作家としてステップアップしたと感じられる部分、成長したと思う部分はどんなところでしょうか?

鈴木:年齢を重ねるにつれて、「良いものを書きたい」という意識が強くなったんです。私が思う「良いもの」というのは、わかりやすくて、簡潔で読みやすいもの、続きが読みたくなるもの。以前にも増して、その点を心がけて書くようになったことが、成長したと言える点なのかもしれません。

 

──なるほど。今作は『さよなら、田中さん』の続編ですが、どうやって物語を作っていったのですか?

鈴木:続編としてのつなぎ方については、以前に構想を考えていて、それを付け足したり、思いついた時と少し変えたりして書いていきました。生活の中で情景として浮かんだことを、メモはせずに頭の中にとどめて、普通に過ごしていくのですが……、後になって、いくつかの断片的な記憶が突然ハマることがあるんです。それをつなぎ合わせ、書き留めていきながら、物語を作っていきます。プロットなど、決めごとをあまりしないで書いていきますね。

 

──実際に起きた出来事を物語に取り入れたりもするのでしょうか?

鈴木:友達のエピソードなども、頭に残っていたら取り入れます。メモをするのではなく、脳の中に入れて書き始めますね。そうするうちに、キャラクターが自然に動き出す、という感じです。

 
3Q6A0456
 

──すごいですね! だからキャラクターが生き生きしているんですね。各登場人物の言葉がとても印象的ですが、前作に続いて登場する担任の木戸先生の言葉を始め、祖母のタツヨさんの言葉や、『太陽はひとりぼっち』というタイトルなどは、どうやって生まれたのですか?

鈴木:文中に出てくる言葉は、本で読んだり映画で観たり、家族の言葉だったりすることが多いんです。たとえば『太陽はひとりぼっち』というタイトルについては、もともとは「どんなに輝いていても太陽はいつもひとりぼっちだ」、という母の口癖から取りました。実はこれは、母のオリジナルの言葉ではなくて、古い映画のタイトルだったようで、書き終わってからそれを知り、とても驚きました。

 

──そうだったのですね。とても印象的なエピソードですね。
これから、花実ちゃんとお母さん、おばあちゃんがどのような関係になっていくのか、とても気になります。

鈴木:私がこの作品を書いていて思ったのは、どんな関係性にも、やはり「どこかに光がある」、ということなんです。どんな状況にでも、かすかな光を感じるから、救いがある。私は、読む場合も書く場合も、光、希望、救いがある話が好きなので、そういう作品を書くようにいつも心がけています。登場人物の今後についても、きっと明るい展開が待っていると思っていて欲しいです。

 

──とても心に響きます。るりかさんが、今作を通じて最も強く感じたことや、これから読者に伝えていきたいことというのはどのようなことですか?

鈴木:「誰もが、他の人のことについていつも思っている」ということです。私が小説を書き始めてからずっと思っているのは、「何があっても生きていく」ということ。これは、これからも、真っ直ぐに伝えていきたいことです。

 
3Q6A0476
 

──次回作についてはもう構想がありますか?

鈴木:次の構想は……、普段日々を過ごしていって、何か小説のヒントを見つけていけたらいいなと思っています。
続きが読みたいと思ってもらえる作家になる、というのが目標なので、血が通っている、感動する作品を生み出していきたい。そう強く思いながら、執筆していきたいですね。

 

──今後書きたいのは、どんなジャンルですか?

鈴木:一貫して、最後に光がある物語を書きたい、というのは変わりません。
ミステリーなども好きなので、自分でいつか書けたらいいな……、と思いますが、それには、
理系の知識も必要なので、ちょっと大変かな。

 

──最後に、読者へのメッセージをお願いします。

鈴木:私自身、とても楽しく書けた小説なので、多くの方に読んでいただけたら嬉しいし、ありがたく思います。登場人物とともに、私も成長していけたら、と思っているので、これからもよろしくお願いします。

<了>

【鈴木るりか プロフィール】

3Q6A0399
2003年、東京都生まれ。
小学4年、5年、6年時に3年連続で、小学館主催の『12歳の文学賞』大賞を受賞。
2017年10月、14歳の誕生日に『さよなら、田中さん』でデビュー。10万部を超えるベストセラーに。韓国や台湾でも翻訳される。2018年10月、15歳の誕生日に地方の中学を舞台にした2作目の連作短編集『14歳、明日の時間割』を刊行。現在、都立私立女子高校1年生在学中。

【著作紹介】

さよなら、田中さん書影高画質_C1
https://www.shogakukan.co.jp/books/09386484

『さよなら、田中さん』
14歳スーパー中学生作家(当時)、待望のデビュー
田中花実は小学6年生。ビンボーな母子家庭だけれど、底抜けに明るいお母さんと、毎日大笑い、大食らいで過ごしています。そんな花実とお母さんを中心とした日常の大事件やささいな出来事を、時に可笑しく、時にはホロッと泣かせる筆致で描ききります。全5編収録。

 

14歳、明日の時間割書影1
https://www.shogakukan.co.jp/books/09386524

『14歳、明日の時間割』
文学界騒然の中学生作家(当時)待望の第2弾小説!
現在、青春時代のまっただ中にいる方はもちろん、学生時代が遠い昔という大人や遥か彼方という熟年世代まで、どんな世代も共感できる、笑える、そしてホロッと泣ける、全方位型エンジョイ小説の誕生です。短編小説を学校の時間割に見立て、7つの物語が展開されます。
 

太陽はひとりぼっち書影帯有り_COV_OB
https://www.shogakukan.co.jp/books/09386556

『太陽はひとりぼっち』
文学界注目の高校生作家、待望の新刊!
デビュー作として異例の10万部を超える大ヒット『さよなら、田中さん』の田中母娘が帰ってきました。単なる「続編」とはせず、ひとつの新しい文芸作品として意欲的に取り組んだ一作。前作で強い印象を残した登場人物達がさらに謎とドラマ、嵐を呼ぶ!!

初出:P+D MAGAZINE(2019/11/20)

中山七里さん『人面瘡探偵』
「鴨川食堂」第1話 鍋焼きうどん 柏井 壽