辻堂ゆめ「辻堂ホームズ子育て事件簿」第37回「どうしましょう、習い事」

辻堂ホームズ子育て事件簿
ついに4歳になった長女。
令和時代の習い事、
半信半疑で始めたら、目から鱗!?

 似たようなところで、担当編集さんからはこんな質問もいただいた。


Q. 早期教育に熱心だったという辻堂さんのお母さん、具体的にどんなことをされていたのでしょうか⁉

 

A. 0歳から、自宅で絵本の読み聞かせとひらがなカード。2歳から公文式、4歳からピアノ、スポーツは小学生の途中から、ドッジボールや器械体操を地域のクラブなどでちょこちょこと。

 乳児期については……私自身は記憶がない。ただ、母が一貫して主眼を置いていたのはやはり勉強だったように思う。公文式は小学6年生まで10年間やった。その他、私にピアノを習わせたのは、母も昔習っていたため。スポーツクラブに入れたのは、健康な身体づくりのため。

 そんな教育を受けた私の考え方はというと、まあ、勉強はたぶん、やらないに越したことはない。子どもにお受験をさせたいとかいう希望は特にないのだけれど、この国では小中学校が義務教育である以上、勉強というのはみんなが通る道なのだから、そりゃなるべく苦労しないほうがいいに決まっている。無理はさせず、でも何もさせないこともせず、くらいのバランスで……。

 スポーツや音楽は、子どもが興味を持つようなら、キャパオーバーにならない範囲ですればいい。ちなみに私はピアノにあまり興味がなかったので、練習が好きになれなかった。結局小学校中学年の頃からやめたいと言い出し、5年生で退会した。反対にドッジボールや体操は好きで、やる気がわくぶん上達も早いので、「自分の得意分野である」という自信にもなった。後者のような習い事に子どもがどこかで出会えたなら、それはものすごく幸せなことだと思う。

 そういうわけで、娘にスポーツの習い事をさせてみるのはこの春から。音楽はひとまず、ピアノの基本的な音階くらいは自宅で教えてみることにして。

 あとは最近、タブレット学習の幼児コースを、半信半疑で契約してみた。

 一応小学校教員の免許も持っているし、参考書やドリルなどを買ってくれば、勉強も自分で教えられるかな、なんてそれまでは思っていたのだけれど。

 いやいや、これはすごい。

 私が幼い頃にやっていた紙のプリントでの学習と違い、正しい答えを選択したり書いたりすると、自動で丸つけをしてくれるのがいい。娘は正解するととても喜んでいる。効果音や映像、ごほうびのスタンプやアバターの着せ替えなども充実していて、いちいち子どもの興味を引くようにできている。問題文もすべて読み上げてくれるから、まだ文字をすらすら読めない子でも、ひとりで学習を進めることができる。おまけに言葉や数字だけでなく英語や自然、果ては交通安全やトイレの使い方まで、コンテンツが充実していて……。

 これが令和の通信教育か! と目から鱗だった。ゲーム感覚で大切な知識を身につけられるんだ。いいなぁ。いいなぁ。私も小さい頃、こういう勉強をしてみたかった。

 さてはタブレット学習開発会社の回し者か! と言われそうな内容だけれど、本当に感動してしまったのだから仕方ない(契約してしばらくは、次はどんな新着学習コンテンツが出てくるのだろうと、娘より私が毎日楽しみにしていた)。それに何より、価値観は常にアップデートしていかないとな、と自戒するきっかけにもなったのだ。勉強も音楽もスポーツも、最善の方法、最善の道筋というものが、IT革命の時代を経て、おそらくこの30年で大きく変わっているのだろう。

 自分がやらせてもらった習い事を、ただ自分の子どもにもやらせるだけでは芸がない。そのあたりをどう見極めて、子どもに何を提供できるかが、親としての腕の見せどころなのだ……って、あまりハードルを上げると、自分の首が絞まるだけなんだよなぁ。

(つづく)


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辻堂ゆめ(つじどう・ゆめ)

1992年神奈川県生まれ。東京大学卒。第13回「このミステリーがすごい!」大賞優秀賞を受賞し『いなくなった私へ』でデビュー。2021年『十の輪をくぐる』で第42回吉川英治文学新人賞候補、2022年『トリカゴ』で第24回大藪春彦賞を受賞した。他の著作に『コーイチは、高く飛んだ』『悪女の品格』『僕と彼女の左手』『卒業タイムリミット』『あの日の交換日記』『二重らせんのスイッチ』など多数。最新刊は『山ぎは少し明かりて』。

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