【「カナナナナナナ」はなんの音?】世界各国のオノマトペクイズ

日本語は、自然や人の様子を擬音を用いて表す“オノマトペ”が豊富な言語と言われています。しかし実は日本語以外にも、ユニークなオノマトペを持つ言語はたくさん存在するのです。今回はそんな世界各国のオノマトペをクイズ形式でご紹介します。

“雨がしとしとと降り続く”、“パクパクとおいしそうにご飯を食べる”など、オノマトペ(=擬音語、擬声語)のなかにはユニークな言葉がたくさん存在します。日本語は特にオノマトペが豊かな言語として知られていますが、じつは世界には日本語以外にも、独創的で興味深いオノマトペを持つ言語がたくさんあるのです。

今回は、そんな世界各国のオノマトペにスポットをあて、そのオノマトペがどんな様子や動きを表しているかを4択のクイズにしてみました。言語にまつわる解説も合わせ、広くて深いオノマトペの世界に触れてみてください!

【第1問】

フランス語における「ピコティ・ピコタ(Picoti Picota)」という言葉は、ある動物の行動を表すオノマトペです。次の4つのうち、正解はどれでしょう?

A.豚が空腹で鳴いている様子
B.ニワトリが餌をついばむ様子
C.カエルが雨の中跳び回っている様子
D.アリクイが蟻を食べる様子

 

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【答え】

B.ニワトリが餌をついばむ様子

【解説】

オノマトペ(onomatopée)という言葉そのものがフランス語であること(「オノマトペ」は古代ギリシア語の「オノマトポイーア」に由来する)からもわかるように、フランス語もオノマトペが豊富な言語のひとつです。

フランス語におけるオノマトペは、大人の日常会話で多用されるというよりも、子ども向けの絵本や童謡の中でしばしば登場します。この“ピコティ・ピコタ”は、ニワトリがパンくずなどの餌をリズミカルについばんでいる様子を表したオノマトペで、フランスの有名な童謡のワンフレーズにもなっています。他の国の言語にはなかなか見られないような独創性を感じる言葉ですが、思わず口に出したくなる音楽的なオノマトペではないでしょうか。


【第2問】

「シウ語」という言語において、「カナナナナナナ(kanana,nananana)」はどのような様子を表すオノマトペでしょう? 次の日本語のオノマトペのなかから、もっとも「カナナナナナナ」に近いニュアンスを持つものを選んでください。

A.先生が話し出すと、騒がしかった教室が“シーン”とした。
B.セミが“ミーンミーン”とせわしなく鳴いている。
C.彼女は“ジャーン!”と大げさに、隠していたものを周りに見せた。
D.彼は“グーグー”とイビキをかきながら眠っている。

 

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【答え】

A.先生が話し出すと、騒がしかった教室が“シーン”とした。

【解説】

シウ語は主に西アフリカ・ガーナで話されている、オノマトペの多い言語です。「カナナナナナナ」は、場が静かになり、音がしなくなったときに使われるオノマトペ。日本語における「シーン」にもっとも近く、“彼がその場をカナナナナナナと静かにさせた。”といった形で使われます。

西アフリカは世界のなかでも、オノマトペが多く発見・報告されている地域のうちのひとつ。世界的に見ると、オノマトペは西アフリカの他にもインドや東南アジアに多いとされています。日本語のオノマトペの数が約2000以上と言われているのに対し、西アフリカや東南アジアの地域のなかには5000語以上のオノマトペを持つ言語もあるのです。


【第3問】

インド東部で話されている言語・ムンダ語において、「ヘロ・デロ(helo-delo)」は人間のどのような様子を表すオノマトペでしょうか?

A.酒に酔ってぐでんぐでんになっている様子
B.曲がりくねった山道を勇ましく歩いている様子
C.嘘がばれてあたふたしている様子
D.重い荷物を背負ってフラフラになっている様子

 

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【答え】

D.重い荷物を背負ってフラフラになっている様子

【解説】

ムンダ語は、インド東部で約900万人の人々に用いられている言語。ムンダ語にはオノマトペが700語以上存在すると報告されており、特に人の動きや手ざわりを表すオノマトペが豊富です。

“ヘロ・デロ”もその一種で、人が重い荷物を背負ってフラフラになっている様子を表す言葉。ヘロ・デロという響きからは、どこか“クタクタ”や“ぐったり”に近い疲れた雰囲気を感じとれるのではないでしょうか。このように、まったく触れたことのない言語であっても、なんとなくその意味を推測することができるのが、オノマトペのおもしろさです。


【第4問】

スペインとフランスにまたがるバスク地方で話されている言語・バスク語において、「バランバラン(balan-balan)」はどのような様子を表すオノマトペとして用いられているでしょう?

A.ぎこちなく
B.慌てず、ゆっくりと
C.せわしなく
D.愛嬌たっぷりに

 

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【答え】

A.ぎこちなく

【解説】

バスク語は、主にバスク人によって用いられている言語です。現在は66万人ほどの話者を持つ言語ですが、完全に独立した言語体系の言葉であるため、話者全員がスペイン語もしくはフランス語とのバイリンガルであるとされています。

そんなバスク語も、特に人の様子や動きに関するオノマトペが豊富な言語のひとつ。“バランバラン”は人がぎこちなく歩いたり動いたりする際に用いられる言葉です。バスク語には他にも、短い歩調で歩くことを表す「ティピタパ(tipi-tapa)」やぽっちゃり太った人を表す「torropilo」など、ユニークなオノマトペが多くあります。


【第5問】

韓国語において「チョンドゥクチョンドゥク(쫀득쫀득)」というオノマトペは、物体のどのような様子を表す言葉でしょうか?

A.ザクザクとした歯ごたえのある様子
B.ぐるぐると渦巻いている様子
C.柔らかくてもちもちした様子
D.水のようになめらかな様子

 

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【答え】

C.柔らかくてもちもちした様子

【解説】

「チョンドゥクチョンドゥク(쫀득쫀득)」は、柔らかくてやや粘り気のあるものに対してしばしば用いられるオノマトペ。大福やお餅、もっちりとしたパンといった食べ物を表す言葉としてメジャーです。

韓国語は特にオノマトペの多い言語として知られており、その数は約8000以上と言われています。世界のなかにはフランスや英語圏の国々のように、大人が日常会話においてあまりオノマトペを使わない言語も少なくありませんが、韓国語においては、日本語と同じようにごく一般的にオノマトペが会話に登場します(“ごはんをポックムポックム(パクパク)と食べる”、“トゥクトゥク(ザクザク)とした食感”など)。韓国に行く際は、挨拶とあわせてよく使われるオノマトペを覚えておくと、現地での会話がより楽しめるかもしれません。


おわりに

世界には、日本語と同じかそれ以上に興味深いオノマトペが多数存在することがおわかりいただけたでしょうか。では、そのなかでも特に“日本語はオノマトペが豊富だ”と言われているのはなぜなのでしょう?

一説では、日本語は、オノマトペを“子どもが使う言葉”、“幼稚な言葉”として忌避していないからだと言われています。オノマトペは一般的に都市部よりも自然豊かな田舎において発展しやすいとされていますが、日本の場合、山や川といった身近な自然、あるいは身の回りの道具などに神が宿っていると信じるアニミズム的な思想が古来から根付いていることもあり、そのような文化的な土台もオノマトペの発展に寄与したのではないかというのです。

世界各国のオノマトペを辿っていくと、その言語を用いる人たちが自然や動物、他の人々の様子にどのようなまなざしを向けているのかが見えてくるのが面白いところです。海外の方と話す機会があるときは、ぜひその言語特有のオノマトペについて聞き、日本との違いを体感してみてください。


(※参考文献
・『オノマトペ 擬音語・擬態語の世界』小野正弘
・講演「外国語にもオノマトペはあるか?」秋田喜美)

初出:P+D MAGAZINE(2021/10/19)

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