滝沢カレンさん 第1回 インタビュー連載「私の本」vol.10 

2020年4月に発売された著書『カレンの台所』は、滝沢さん独特の言葉選びで可愛らしく彩られたレシピ本。業界内外から大きな注目を集めたこの本へたどり着くまでに、滝沢さんの中にはどんなご経験があったのでしょうか。ご本人に聞いてみました。


 今年4月、『カレンの台所』という料理本を出版しました。おかげさまで15万部を超える売れ行きで、みなさんに楽しみながら、読んでいただいているみたいです。

 ふだん自分が作った料理の写真と、そのとき頭のなかに浮かんだことをインスタグラムに上げていたら、「もっと見たい」と言っていただいて、1冊の本という形になりました。

 読者の方からは「超感覚レシピ」「食材が登場人物みたい」「絵本を読んでいるよう」「独特の表現がおもしろい」といった声が届いているそうです。たとえば、「唐揚げ」の章は、こんな感じです。

 まず、透明まではいかないがスーパーでよく見かけるしもらうビニール袋を二重にします。(豪快な方はジップロックなど)。
 そこに冷たい何も知らない鶏肉を入れてあげます。
 やれやれとボッタリくつろぐ鶏肉に、上からいくつかかけ流していきます。
 まずリーダーとして先に流れるのは、お醤油を全員に気づかれるくらいの量、お酒も同じく全員気づく量、乾燥しきった粒にみえる鶏ガラスープの素をこんな量で味するか?との程度に、ふります。
 入れすぎても、入れなさすぎても、あまり変わるわけではないので気にしすぎもよくないです。
 そして匂いが取り柄なにんにくすりおろしかチューブ、生姜すりおろしかチューブを、鶏肉ひとつにアクセサリーをつけるくらいの気持ちでつけてあげてください。
 あとはごま油をご褒美あげるくらいにします。
 最後に気前よく塩胡椒して鶏肉への刺激は終わります。
 順番は自由です。
 そうしましたら開きっぱなしの入り口を柔らかく結んでください。
 あとでまた開けます。
 自分が二の腕気にして触ってるくらいの力で鶏肉をさらに最終刺激します。

──『カレンの台所』より

 この「唐揚げ」と、あとは「ロールキャベツ」も人気が高いです。この本に収めた30品はすべてお気に入りなので、順位をつけてくださいとよく言われるんですが、それはできません。全部が肩を並べて、みんなで手を繋いでいるような本だと思っています。

 書いた内容は、料理中にいつも私の頭の右上あたりに広がっている世界なんです。登場人物たちが映像みたいに動いているときもあれば、絵になっているときもあるという感じで。

おたまにも感情がある

 食材の扱いには、注意していますね。私はどんなものにも感情があるし、生きていると考えてしまうところがあって。おたまひとつにしてもそうです。おたまに比べたら食材なんてもっともっとたくさんの感情があるんじゃないか、育ったからには命があるはずだ、と感じていて。

 そんなふうに食材にとても価値があると思っているから、人間のような扱いをしているんでしょうね。

 料理をしていると、食材たちがいろんな声を出しているように感じます。火をかけて煮られたり、揚げられたりするのは人間界だとたまらないのに、食材はうれしいのかな? うめき声をあげているかも? と考えてみたり。

 それから今回の本ですごくうれしかったのは、私の頭のなかを絵にしていただいたこと。一番自分の世界に近い感覚を持つイラストレーターさんが絵にしてくれたので、とても感動しました。

 私たちがあたり前だと思っていることではない世界がきっと外にはあるはずで、食材的にはこういう目線で生きてるんじゃないか、というふうに膨らんだ想像を、そのままただ文字にしているだけなのです。

料理は、友達と会うような感覚

 初めて料理をしたのは17歳のときです。すごくお腹がすいていたのに、食べるものがなくて。どうしたらいいかなと思ったとき、必要に迫られて自分でやってみました。

 うちはお小遣い制で、そのころはプリクラを撮りすぎたせいで、ファーストフードさえ買えないくらいしかお金が手元になかったんです。

 それでコンビニに行って、市販のパスタソースを買って温めました。確か乾麺は家にあったと思います。いま思い出せば料理といえるようなものではなかったけれど、鍋を使ったのも、それが初めてだったんですよ。

 うちはお手伝いは全然やれと言われたことなくて、言われることといえば、生きていくために必要なこと、たとえば「人を傷つけたらダメよ」くらいでした。個人として大人になっていくような感じで、14~15歳を超えてからはもうほとんど何も言われなくなりました。料理とかファッションとか、そういう人生のオプションは何も習わなかったんです。

 当時はおばあちゃんが料理を作ってくれていたので、一生おばあちゃんがやってくれるものと思っていたところがありました。おばあちゃんが作れなくなる日が来るということを高校生のときはわかってなくて、私は料理を覚える必要なんかないって勝手に思っていたんです。

 でも、一度料理をやってみたら、すぐに好きだとわかりました。料理を作れたときのうれしさが忘れられなくて、明日は何にしよう、今度はこれに挑戦しようと、いつもわくわくしていました。

 あの頃は、すべてが初めましての食材や料理ばかりで。和食をひととおり作ったあと次はイタリアンに挑戦したりと、何をやっても毎日、新しい友達と会うような感覚が楽しかったですね。

(次回へつづきます)
(取材・構成/鳥海美奈子 写真提供/サンクチュアリ出版)

滝沢カレン(たきざわ・かれん)
1992年東京生まれ。2008年、モデルデビュー。現在は、モデル以外にもMC、女優と幅広く活躍。主なレギュラー出演番組に『全力!脱力タイムズ』(フジテレビ)、『沸騰ワード10』(日本テレビ)、『伯山カレンの反省だ!!』(テレビ朝日)、『ソクラテスのため息~滝沢カレンのわかるまで教えてください~』(テレビ東京)など。


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