【著者インタビュー】雁須磨子『あした死ぬには、』1/40代が直面する不安な「あるある」を人気漫画家が細やかに描く

映画宣伝会社に勤める42歳独身の主人公は、仕事ができない同僚に怒りながら働く日々を過ごしていたが、ある夜、心臓の動機が止まらなくなって……。40代女性の体調の変化や、周囲の人間関係などを細やかに描いた傑作。

【大切な本に出会う場所 SEVEN’S LIBRARY 話題の著者にインタビュー】

あっという間に過ぎていく毎日の中で、一生懸命生きているあなたへ――人気漫画家が描き出す40代の不安と明日。

『あした死ぬには、』1
あした死ぬには、書影
太田出版 1296円

本奈多子42歳は映画宣伝会社「ガールフレンド」に勤めている。仕事ができない同僚に怒りつつもハードに働く毎日だが、ある夜、心臓の動悸が止まらなくなる。〈やだ まって まって まって まって 映画祭も途中だし 部屋だって片づけてない〉‥‥もしかして更年期障害かも? 健康に気を遣いつつ、それでも忙しなくハードに仕事をする多子に、中学生の時の同級生から連絡が――

雁須磨子
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●KARI SUMAKO 福岡県生まれ。1994年に漫画家デビュー。BL(ボーイズラブ)から青年誌、女性誌まで活躍の分野を広げながら、感情の機微を捉えた新しい作品を生み出し続けている。2006年に『ファミリーレストラン』が映像化。『幾百星霜』『どいつもこいつも』『つなぐと星座になるように』『感覚・ソーダファウンテン』『胸にとげさすことばかり』『うそつきあくま』など。

同じ気持ちの人がどこかにいると思って私は自分の考えていることを描いている

 インパクトのあるタイトルで、余韻が残る。「あした死ぬには、」の後には、どんな言葉が続くのか。
「この先に続く言葉で、どうとでも取れる感じにしたかったんです」
 映画の宣伝会社に勤める多子さわこは42歳独身。彼女が直面する40代の壁、体調の変化や周囲の人間関係が細やかに描かれ、「それって、あるある」、という読者の共感を呼び起こす漫画だ。
「多子が経験する不整脈は自分の身にも起きたことなんですが、それ以前から40代の人を描きたいという気持ちはありました。知り合いで、40代でがらっと性格が変わった人が出てきたんですよ。たぶんそれが本当の姿というか、もともと根っこにあるものが隠せなくなった、隠したくなくなったっていうことなのかなと思って」
 更年期のホットフラッシュやまったく仕事ができない年上の同僚男性へのイラ立ち、頼れる女性の後輩、目減りする預金通帳の残高など、働く40代女性の「今」を際立たせるディテールがどれも興味深い。
「老後にいくらお金がかかるかっていうのは30代から気にしていました。自分の考えていることが世間の人の悩みから外れているとは思わないので、自然に出てきたエピソードを描いていきます。同じ気持ちの人がどこかにいる、っていうのを常に思って描いてます。読んだ人にほっとしてもらえたらうれしいし、自分としてもありがたいです」
 多子の仕事上の知り合いで、病気で余命宣告を受ける人も出てくる。多子が述懐するように、「死ぬのも怖いが、生きるのも怖い」。それでいてまだまだ変化し続ける、40代はそんな年齢だ。
 パート先で客から「オバチャン」と呼ばれショックを受ける同級生の塔子ほか、多子以外の40代女性も登場する。作品は今も太田出版のウェブで連載中。これが初めてのウェブ連載だそう。
「これまでは私のことが好きで読んでくださる媒体での連載でしたが、ウェブだと、読者の間口が広がるのがうれしくもあり、怖いところも。描いてすぐ反応があるので、描き上げて掲載するまですごく緊張します」

素顔を知りたくて SEVEN’S Question-1

Q1 最近読んで面白かった本は?
バーリー・ドハティ『蛇の石 秘密の谷』。表紙が気になってずっと前に買っていて、思い立って本棚から出して読んだらすごく面白かった。さわやかな青春小説です。

Q2 新刊が出たら必ず読む作家は?
今市子さん。ずっとファンです。

Q3 好きなテレビ・ラジオ番組は?
リアルタイムではほとんど見てないんですが、『スーパーナチュラル』。アメリカのテレビドラマです。

Q4 趣味はなんですか?
同人誌。あと映画鑑賞。〆切が終わったら『アベンジャーズ/エンドゲーム』と『名探偵ピカチュウ』を観たいと思っています。

Q5 最近ハマっていることは?
『スーパーナチュラル』以外だと、洋楽にずっとハマっています。あとはウオーキングですね。体力づくりで毎日1時間歩いてるんですが、雨の時はみなさんどうしてるんでしょうか。

Q6 一番リラックスする時間は?
起きてから仕事に入るまでの間ですね。あと、ウオーキングしている間はリラックスできてると思います。

●取材・構成/佐久間文子

(女性セブン 2019年7.18号より)

初出:P+D MAGAZINE(2020/02/05)

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