【クイズ】このフレーズ、自由律俳句? 漫才の台詞?

季語や定型を持たない「自由律俳句」と、お笑い芸人たちによる鮮やかな「漫才」のフレーズは、ときに驚くほど似ています。今回はそのふたつをクイズにしてみました。引用したワンフレーズが自由律俳句か、それとも漫才の台詞かを当ててみてください!

漫才を見ていて、ふと「いまの台詞、まるで自由律俳句だな……」と思ったことはありませんか? もしも思ったことがなくても、奇想天外な言葉で見ている人たちを笑わせてしまう漫才の台詞と、定型や季語を持たない自由律俳句はどこか似ているという意見には、おそらく頷いていただけるのではないでしょうか。

そこで今回は、引用した短いフレーズが「俳人たちが詠んだ自由律俳句」なのか、「お笑い芸人による漫才の台詞」なのかを当てていただくクイズを作りました。問題は全部で7問。全問正解目指して頑張ってください!

第1問

【問題】

次のフレーズは自由律俳句? それとも漫才の台詞?

入れものが無い両手で受ける

 

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【答え】
自由律俳句

【解説】
“入れものが無い両手で受ける”は、明治から大正にかけて活躍した俳人・尾崎放哉ほうさいによる自由律俳句です。放哉は種田山頭火と並び自由律俳句のもっとも有名な俳人として知られており、“咳をしても一人”、“こんなよい月をひとりで見て寝る”といった、静かでありながらも力強い句を数多く残しました。

この句は貧しい寺暮らしをしていた放哉が、お金や食べ物を恵んでくれる人に対し、その施しを受けるための器もないために、感謝の意を表して両手で受けた──というできごとを詠んだものとされています。


第2問

【問題】

次のフレーズは自由律俳句? それとも漫才の台詞?

ついには剥かずに食べはじめた

 

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【答え】
自由律俳句

【解説】
“ついには剥かずに食べはじめた”は、作家・コラムニストとしても活躍する自由律俳句俳人、せきしろによる一句です。なんらかの果物を黙々と食べていた人物があるときから“剥かずに”食べはじめるのを目にしてしまい、意表を突かれた──というようなワンシーンでしょうか。

せきしろはこれまで、お笑いコンビ・ピースの又吉直樹とともに『カキフライが無いなら来なかった』、『まさかジープで来るとは』、『蕎麦湯が来ない』の3冊の自由律俳句集を発表しています。せきしろの自由律俳句にはほかにも、“人混みの中テンガロンハットだけ頭ひとつ”、“カバーはいらないと言ったのにしてる店員の手”といった作品があります。


第3問

【問題】

次のフレーズは自由律俳句? それとも漫才の台詞?

信号機の灯りで髭を剃った

 

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【答え】
漫才の台詞

【解説】
“信号機の灯りで髭を剃った”は、お笑いコンビ・錦鯉の漫才のワンフレーズです。漫才の序盤、料金を滞納したのか「電気を止められた」と話すボケの長谷川が、信号機が近い角部屋に住んでいることを利用し、信号機の灯りで髭を剃ったというエピソードを披露します。「青い灯りは剃りやすく、赤い灯りは剃りにくい」ため、結果的に家のなかで信号を守ることになったという鮮やかなオチに繋がっていきます。


第4問

【問題】

次のフレーズは自由律俳句? それとも漫才の台詞?

手と手のあいだから海象せいうちが出てくる

 

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【答え】
漫才の台詞

【解説】
“手と手のあいだから海象が出てくる”は、お笑いコンビ・インパルスによる漫才のワンフレーズです。「いつの間にか子どもがいてもおかしくない歳になってきた」と語るボケの板倉。友達の赤ちゃんなどに会ったときにどうあやしているか、と板倉に聞かれたツッコミの堤下は、王道だけれどいないいないばあをしてみせる、と答えます。すると板倉が「それはウケるでしょ。だって手と手のあいだから海象が出てくるんだよ、それはおもしろいよ」とひと言。「待てよ、海象じゃないよ」とツッコむ展開が続きます。

インパルスといえば、凝った世界観のコントのイメージが強い方も多いのではないでしょうか。コンビ結成初期には漫才もしていた彼らの、貴重なネタのなかの1本です。


第5問

【問題】

次のフレーズは自由律俳句? それとも漫才の台詞?

ティラミスが煉瓦ぐらい硬かった

 

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【答え】
漫才の台詞

【解説】
“ティラミスが煉瓦ぐらい硬かった”は、お笑いコンビ・ミルクボーイの漫才「サイゼ」のワンフレーズ。「オカンに好きなレストランの名前を聞いてんねんけど、それがどこだったかどうしてもわからへんねん」というミルクボーイの十八番とも言うべきスタイルで、一見サイゼリヤのように思える“オカンのお気に入りのレストラン”が一体どこなのかを考察していくという内容です。

「オカンが言うには、服装によっては入店断られるらしいねん」と話すボケの駒場に、ツッコミの内海が「ほなサイゼとちゃうな」とひと言。しかし、駒場の「ティラミスが煉瓦ぐらい硬かったらしいねん」という証言を聞くと「サイゼや」と即答します。さまざまな角度からの“サイゼリヤあるある”に思わず笑わされてしまう、名作漫才です。


第6問

【問題】

次のフレーズは自由律俳句? それとも漫才の台詞?

はだかで話がはづみます

 

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【答え】
自由律俳句

【解説】
“はだかで話がはづみます”は、種田山頭火による自由律俳句です。旅と酒をこよなく愛したことで知られる山頭火。これは句集『草木塔』からの一句で、『千人風呂』と名づけられた一連のなかの作品です。『千人風呂』のなかには他にも“山ふところの、ことしもここにりんだうの花”、“けさは涼しいお粥をいただく”といった句が並び、山中の温泉で汗を流す山頭火の姿が浮かんでくるようです。


第7問

【問題】

次のフレーズは自由律俳句? それとも漫才の台詞?

仏が沼に嵌まったよ

 

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【答え】
漫才の台詞

【解説】
“仏が沼に嵌まったよ”は、お笑いコンビ・ランジャタイの漫才のワンフレーズ。漫才の冒頭、ボケの国崎が「欽ちゃん(萩本欽一)好き?」と尋ね、ツッコミの伊藤が「好きよ」と答えると、国崎が「子どもの頃から欽ちゃんが好きで、ずーっと応援してたの」「出ようかなあ、仮装大賞」と語りだします。伊藤に「演目は?」と聞かれた国崎は、「仏が沼に嵌まったよ」と回答。にこやかに説法印(釈迦が説法をする際のしぐさ)を見せながら歩き回る国崎が、突如沼に嵌まってしまい苦しみだす……という演目を披露すると、仮装大賞の点数は見る見る上がっていき、見事合格を勝ち取ります。隣でなんの脈絡もなく焼き鳥屋の演技をさせられる伊藤の姿も相まって笑ってしまう、ランジャタイらしいシュールなネタです。


【全問終了】あなたは何問正解できた?

こうして自由律俳句と漫才の台詞を並べてみると、思った以上にどちらがどちらかわからなかった……という方も多いのでは? お笑いのプロたちによる漫才の台詞がおもしろいのはもちろん、自由律俳句のなかにも思わずクスッと笑ってしまうようなフレーズや、クセの強いフレーズが多数あることがおわかりいただけたかもしれません。

自由律俳句は、その名のとおりどこまでも自由でありながら、とても奥深い世界です。今回ご紹介した俳句にピンとくるものがもしあれば、ぜひ、俳人たちの句集にも手を伸ばしてみてください。

初出:P+D MAGAZINE(2021/03/22)

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