湊かなえのオススメ作品を紹介

映像化されている作品も多い湊かなえ。イヤミスと呼ばれる湊かなえのおすすめ作品5選をご紹介します。

イヤミスの女王と呼ばれる湊かなえ。読むとイヤな気分になるミステリー、という新しいジャンルを築きました。キャラクターの細かい設定にはこだわりがあり、登場人物すべての履歴書を作成するそう。登場人物がとてもリアルで、読み始めるとすぐに作品の世界へと引きずり込まれてしまいます。湊作品は映像化されているものが多いので、映画やドラマで見たことがあるという方も多いと思いますが、独特の世界観を是非原作で味わってみてください。

告白

告白
出典:http://www.amazon.co.jp/dp/4575236284

第6回本屋大賞を受賞した作品です。中学で教師をしている主人公の森口瑤子。ある日学校に遊びに来ていた主人公の3歳の娘が、学校のプールで死体となって発見されます。主人公は終業式のホームルームで娘は事故で死んだのではなく、このクラスの生徒に殺されたと話し始めます。そして主人公は娘を殺した犯人を追い詰めていきます。主人公の復讐心や家庭の問題、クラス内のいじめなど、全編を通して重たく暗い雰囲気が漂います。暗くて嫌な気分になるのに読むのがやめられない。一度読み始めると続きが読みたくなり、ページをめくる手が止まらなくなる作品です。

少女

少女
出典:http://www.amazon.co.jp/dp/4575514837

「死」に強い興味を持った女子高生達の心の闇を描いた作品です。転校してきた女子生徒から、親友が自殺したことがあるという話を聞いた2人の女子高生、由紀と敦子。転校生に嫉妬のような感情を覚えた由紀は自分は実際に人が死ぬところを見てみたいと思い始めます。自殺を考えたことがある敦子も実際に誰かの死を目撃すれば自分の死への考えが変わるかもしれないと思うようになります。伏線が巧妙に張り巡らされており、ラストにはハッとさせられる結末が待っていますが、仕掛けが複雑なので、重要なポイントを見逃さないように、注意深く読んでみてください。

夜行観覧車

夜行観覧車
出典:http://www.amazon.co.jp/dp/4575515523

ある日、何もかも完璧に見えていたエリート一家、高橋家の父親が殺害されます。その動機が徐々に解明されていくというストーリー。物語は夢のマイホームを建てて、高級住宅地に引っ越してきた遠藤家を中心に展開されます。母親の遠藤真弓は、近所の主婦達に馴染めずにいじめを受けるようになります。娘の彩花は中学受験に失敗し友達からも仲間はずれにされて、家庭内暴力が次第にエスカレートしていくようになり……。子供への過度な期待や家族のすれ違いなど、家の外からは見えない家族の内側が描かれています。

白ゆき姫殺人事件

白ゆき姫殺人事件
出典:http://www.amazon.co.jp/dp/4087451585

井上真央、綾野剛、菜々緒など豪華キャストで映画化されたことも話題となりました。化粧品会社に勤める美人OLが何者かに殺害され、灯油をかけて焼かれた死体が発見されます。事件を追うフリーライターや周囲の人間によるインターネットへの書き込みから、まるで犯人のように仕立て上げられたのは被害者と同じ会社で働く地味な女性社員でした。多くの無責任な発言が社会現象となり、一人の人間を追い詰めていきます。

贖罪

贖罪
出典:http://www.amazon.co.jp/dp/4575515035

『告白』のような独白形式で物語は進行します。ある日、田舎町に引っ越してきた美しい小学生の少女が殺害されます。事件の直前まで一緒に遊んでいた4人の少女達は、犯人と話をしたにもかかわらず犯人の顔が思い出せないと証言。事件は解決されないまま少女達は大人になり、大人になった少女達は殺人を犯します。子供時代の暗い過去を引きずりながら大人になった、4人の女性たちの心の闇が描かれています。

最後に

読者をぐいぐい引き込むストーリー展開。そしてまるで実在の人物であるかのように感じさせるキャラクターの造形術。ハッピーエンドのストーリーだけが、素晴らしい物語ではありません。イヤミスの癖になりそうな楽しさを体験してみてください。

初出:P+D MAGAZINE(2016/11/21)

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