菊池良の「もしビジネス書が詩だったら」──『金持ち父さん 貧乏父さん』【第4回】

堅苦しいイメージの強い「ビジネス書」が、もし「詩」だったら──? この連載では、『もし文豪たちがカップ焼きそばの作り方を書いたら』(共著・神田桂一)シリーズがメガヒットを記録しているライターの菊池良さんに、ビジネス書の内容を要約・凝縮し、自由詩に変換してもらいます。第4回のお題は、『金持ち父さん 貧乏父さん-アメリカの金持ちが教えてくれるお金の哲学』(ロバート・キヨサキ/シャロン・レクター 共著、白根 美保子 訳)です。

堅苦しく読みにくいイメージの強い「ビジネス書」を、簡潔かつ文学的な「詩」に変換して読み解く連載「もしビジネス書が詩だったら」

第4回のテーマは、『金持ち父さん 貧乏父さん-アメリカの金持ちが教えてくれるお金の哲学』(ロバート・キヨサキ/シャロン・レクター 共著、白根 美保子 訳)。20年以上前に発表された本でありながら、お金について知るための入門書としてビジネスマンから推薦されることも多い本書を、ライターの菊池良さんがやさしい言葉と“詩”で読み解きます。

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出典: http://amzn.asia/d/dt94kQF

全世界で3000万部超売れたという『金持ち父さん 貧乏父さん』

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『金持ち父さん 貧乏父さん-アメリカの金持ちが教えてくれるお金の哲学』(ロバート・キヨサキ/シャロン・レクター 共著、白根 美保子 訳)は、1997年の発売以来、世界で3000万部を突破したと謳う一大ベストセラーだ。

中身は読んだことがなくても、書店で表紙を見たことがあるという人は多いのではないだろうか。この本はシリーズ化していて、『金持ち父さんのキャッシュフロー・クワドラント』『金持ち父さんの投資ガイド〔入門編〕―投資力をつける16のレッスン』といった書籍も出ている。
シリーズ全体での累計発行部数は、4000万部にも及ぶという。また、著者であるロバート・キヨサキは、現在はアメリカ大統領であるドナルド・トランプとも2冊にわたって共著を出版している。

ロバート・キヨサキは、オイルタンカーの航海士、海兵隊のパイロット、ゼロックスの営業職といったさまざまな仕事に従事したあとに自分でビジネスを起こした人物だ。
『金持ち父さん貧乏父さん』によれば、その後は不動産投資によって不労所得を築き、経済的な自由を手に入れたという。本書は、彼が成功できたのは「金持ち父さん」の教えがあったからだとし、あなたもその教えを学んで「ラットレース」(お金を払うために働き続ける人生)から抜け出そう、と主張する。

「持ち家=資産」ではない! 負債ではなく資産を手に入れるには

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著者に成功のためのヒントを与えた「金持ち父さん」とはいったい誰か。それは、彼の友人の父親である。そして、「貧乏父さん」とは著者の実の父親である。
金持ち父さんは学歴がなかったが、お金に困らない生活をしていた。対して、貧乏父さんは高度な教育を受けたが、いつもお金に困っていた。著者はその2人を比べることによって、どうやったらお金持ちになれるかを掴んだのだ。

本書のメッセージは明快だ。それは、「負債を買わずに、資産を買え」ということ。本書の中で、「負債」と「資産」はシンプルにこう定義されている。

資産は私のポケットにお金を入れてくれる。負債は私のポケットからお金をとっていく。

つまり、「資産」とはそれを持っているだけでお金を生み出してくれるもののことだ。たとえば株、収入を生む不動産、市場価値のある物品などがそれに当たる。一方で、多くの人は持ち家や車といった「負債」ばかりを買っていると言う。著者は、負債を負うのではなく、資産を買うのを何よりも優先しようと説く。

一番大切なことは資産と負債の違いを知ることだ。その違いがわかったら、次は収入を生む資産を買うことだけに努力を集中する。これが金持ちになるための道を歩み始める最善の方法だ。その一方で、負債と支出は低く抑えるように努力する。

著者は、収入を生む資産を買うことに努力を集中すれば、お金のために働くのではなく「お金に働いてもらう」状態になり、ラットレースから脱出できると語る。
そして、その感覚を掴むために、『キャッシュフロー101』というゲームを勧める。これは著者が開発した、お金のことが学べるボードゲームのことだ。2万円以上とかなり高価なゲームではあるが、本の最後にはこのゲームの広告も入っている。

本書はほかにもファイナンシャル・インテリジェンス(お金に関する知性)の重要性、その磨き方などを説く。
本書を換骨奪胎したビジネス書は多い。「持ち家は負債である」「学ぶために働け」「個人会社を作って節税しよう」など、本書と似通った主張をする書籍は今でもよく目にする。
『金持ち父さん 貧乏父さん』は20年以上前の本ではあるが、その後の数多のビジネス書に多大な影響を与えた1冊であることは間違いない。その源流を知るために、一度は読んでもいいだろう。

『金持ち父さん 貧乏父さん』がもし詩だったら──(作・菊池良)

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【プロフィール】菊池良(きくちりょう)

ライター。2017年に出した書籍『もし文豪たちがカップ焼きそばの作り方を書いたら』(共著・神田桂一)が15万部のスマッシュヒット。そのほかの著書に『世界一即戦力な男』がある。
Twitter:@kossetsu

初出:P+D MAGAZINE(2018/11/10)

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