【幅広い作風で読者から支持!】奥田英朗のオススメ作品を紹介

幅広い作風と圧倒的な筆力で読者から高い支持を得ている奥田英朗。学生時代は音楽評論家を目指し、広告プランナーや雑誌の仕事を経て小説家に。ストーリーよりも人の気持ちを書くのが好きだと語っているように、登場人物のキャラクター設定や心情描写が巧みです。

イン・ザ・プールシリーズ(伊良部シリーズ)

イン・ザ・プール
出典:http://www.amazon.co.jp/dp/416771101X

主人公は肥満で色白の精神科医、伊良部一郎。伊良部総合病院の息子で、病院の地下にある精神科で気ままに診察をしています。この作品の魅力はとにかく非常識でとんでもない医者である伊良部のキャラクターと言動です。1つのストーリーごとにちょっと変わった精神疾患を抱えた患者が登場し、伊良部が診察、治療していきます。治療と言いつつも、はたから見ればただ遊んだりふざけているようにしか見えないので伊良部の行動に戸惑う患者ですが、最後にはどの患者も症状が治ってしまいます。

人気シリーズの第1作目は『イン・ザ・プール』。ケータイ依存の男子高校生や強迫神経症のルポライターが登場します。第2作目の『空中ブランコ』では、第131回直木賞を受賞。肥満の伊良部が空中ブランコに挑戦する様子が笑いを誘います。第3作目『町長選挙』では、有名人や芸能人をモデルにしたであろう患者が登場します。

「いらっしゃーい」。伊良部総合病院地下にある神経科を訪ねた患者たちは、甲高い声に迎えられる。色白で太ったその精神科医の名は伊良部一郎。そしてそこで待ち受ける前代未聞の体験。プール依存症、陰茎強直症、妄想癖…訪れる人々も変だが、治療する医者のほうがもっと変。こいつは利口か、馬鹿か?名医か、ヤブ医者か。

最悪

最悪
出典:http://www.amazon.co.jp/dp/4062735342

娘の短大進学のために何とか売り上げを増やそうと奮闘する鉄工所社長の川谷信次郎。セクハラを受けて会社を辞めようと決心する銀行員の藤崎みどり。ヤクザに恨みを買ってしまうフリーターの野村和也。この3人を中心に物語が進んでいきます。すべてが悪い方へ悪い方へと転がっていき、タイトルの通り最悪な状況に。超大作なのでかなりボリュームがありますが、あっという間に読み進めてしまいます。

不況にあえぐ鉄工所社長の川谷は、近隣との軋轢(あつれき)や、取引先の無理な頼みに頭を抱えていた。銀行員のみどりは、家庭の問題やセクハラに悩んでいた。和也は、トルエンを巡ってヤクザに弱みを握られた。無縁だった3人の人生が交差した時、運命は加速度をつけて転がり始める

ガール

ガール
出典:http://www.amazon.co.jp/dp/4062762439

30代独身女性の微妙な気持ちが見事に表現されている作品です。表題作である『ガール』の主人公は、32歳のOL滝川由紀子。容姿端麗で仕事も順調なのになぜか感じる違和感。30代になったら今までの自分とは何かが違うように感じて…。シングルマザーとして仕事に励む女性を描いた「ワーキング・マザー」やマンションの購入を考え始める『マンション』など5つの短編を収録。働くアラサー女子は共感するところも多いでしょう。

わたし、まだオッケーかな。ガールでいることを、そろそろやめたほうがいいのかな。滝川由紀子、32歳。仕事も順調、おしゃれも楽しい。でも、ふとした時に、ブルーになっちゃう。

ララピポ

ララピポ
出典:http://www.amazon.co.jp/dp/4344411668

ひとつひとつは短いストーリーで、短編集のようになっています。ストーリーごとに対人恐怖症のフリーライターやAVのスカウトをしている青年などがフィーチャーされ、脇役として登場していた人物が次のストーリーで主役になるというオムニバス形式になっています。すべてのストーリーは性衝動がテーマになっていて、性的な満足に溺れていく人々が生々しく描かれています。

みんな、しあわせなのだろうか。「考えるだけ無駄か。どの道人生は続いていくのだ。明日も、あさっても」。対人恐怖症のフリーライター、NOと言えないカラオケボックス店員、AV・風俗専門のスカウトマン、デブ専裏DVD女優のテープリライター他、格差社会をも笑い飛ばす六人の、どうにもならない日常を活写する群像長篇。

家日和

家日和
出典:http://www.amazon.co.jp/dp/4087465527

家をテーマにした作品の短編集です。『サニーデイ』はネットオークションでいい評価をもらえたことに快感を覚えてオークション出品がやめられなくなる主婦の話。会社が倒産して妻が働き出したため主婦となった男性を描いた『ここが青山』。ロハスな食事にはまる妻やその友人たちに戸惑う作家の話『妻と玄米御飯』。妻と別居することになったのをきっかけに部屋を好きなもので満たしていく営業マンを描いた『家へおいでよ』。普通の家族の何気ない日常がユーモラスに描かれています。読んだあとは明るい気持ちになれる、そんな小説です。

ネットオークションにはまる専業主婦、会社が倒産し主夫となった夫、ロハスに凝る妻に辟易する小説家の夫……など。あたたかい視点で描く新しい家族の肖像。

最後に

ジャンルが特定できないくらい、笑えるものからシリアスなものまで作品の幅が広い奥田作品。どの作品にも共通しているのは魅力的なキャラクターが登場すること。そしてすっきりとした読みやすい文章なので本が苦手な方にもおすすめです。

初出:P+D MAGAZINE(2016/10/29)

『蜜蜂と遠雷』は傑作青春群像小説。
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