森岡督行「銀座で一番小さな書店」最終回

森岡督行「銀座で一番小さな書店」


 いずれにしても、「森岡書店 渋谷ヒカリエ店 ソール・ライター日本関係蔵書展」は大好評となり、最終的には1万2千人以上の方にご来場いただきました。会期中、ライトパブリシティーの杉山恒太郎さんから「よい仕事をしているね」と声をかけられた時はハッとしました。そのように言われたのは実は初めてで、これまでも体当たりでさまざまな仕事をしてきましたが、これが「よい仕事」というのかと思った時、確かに、このソール・ライターの蔵書のまわりにいる人々はみんな楽しそうに見入っていて、そのことを実感したのでした。その時、「ものや商品はコミュニケーションの手段だから」と、かつて自分が17年前に、独立開業した直後に、古美術「うちだ」の内田明夫さんに教えてもらったアドバイスを思い出したりもしました。

 今、こうして大きな仕事を終えてみると、このようなアーティストの蔵書を調査し可視化する展示は、大変だけどやりがいがあることがわかりました。書店を営む自分の性にも合っていて、近い将来、また誰かの蔵書を探して、海を渡る日が来るという予感がしてなりません。そして、そのきっかけはきっと、銀座での店頭での出会いが連れてきてくれるのでしょう。

(おわり)
*連載は今回が最終回です。ご愛読ありがとうございました。
本作品は、単行本として刊行を予定しております。

森岡督行(もりおか・よしゆき)

1974年、山形県生まれ。法政大学卒業後、一誠堂書店(東京・神保町)勤務を経て、2006年、「森岡書店」(同・茅場町)オープン。2015年、「一冊の本を売る書店」がテーマの「森岡書店」を銀座にリニューアルオープン。株式会社森岡書店代表。著書に『荒野の古本屋』(小学館文庫)、絵本『ライオンごうのたび』(あかね書房)、『写真集 誰かに贈りたくなる108冊』(平凡社)、『BOOKS ON JAPAN 1931-1972 日本の対外宣伝グラフ誌』(ビー・エヌ・エヌ新社)、『ショートケーキを許す』(雷鳥社)などがある。

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