森岡督行「銀座で一番小さな書店」最終回
いずれにしても、「森岡書店 渋谷ヒカリエ店 ソール・ライター日本関係蔵書展」は大好評となり、最終的には1万2千人以上の方にご来場いただきました。会期中、ライトパブリシティーの杉山恒太郎さんから「よい仕事をしているね」と声をかけられた時はハッとしました。そのように言われたのは実は初めてで、これまでも体当たりでさまざまな仕事をしてきましたが、これが「よい仕事」というのかと思った時、確かに、このソール・ライターの蔵書のまわりにいる人々はみんな楽しそうに見入っていて、そのことを実感したのでした。その時、「ものや商品はコミュニケーションの手段だから」と、かつて自分が17年前に、独立開業した直後に、古美術「うちだ」の内田明夫さんに教えてもらったアドバイスを思い出したりもしました。
今、こうして大きな仕事を終えてみると、このようなアーティストの蔵書を調査し可視化する展示は、大変だけどやりがいがあることがわかりました。書店を営む自分の性にも合っていて、近い将来、また誰かの蔵書を探して、海を渡る日が来るという予感がしてなりません。そして、そのきっかけはきっと、銀座での店頭での出会いが連れてきてくれるのでしょう。
(おわり)
*連載は今回が最終回です。ご愛読ありがとうございました。
本作品は、単行本として刊行を予定しております。