【ランキング】アメリカのベストセラーを発表!ブックレビューfromNY<第20回>

NY在住のジャーナリスト・佐藤則男が紹介する、アメリカのベストセラー事情と、注目の一作をピックアップするコラムの20回目。バケーションシーズンに突入したアメリカではどんな作品がヒットしているのでしょうか?今回は1位の作品をピックアップします!

<第20回>F・スコット・フィッツジェラルドの自筆原稿が盗まれた!

BRNY20_書影
Camino Island/ by John Grisham
Doubleday, 2017. 290ページ. US$28.95

今月のベストセラー事情

今月の「ニューヨーク・タイムズ ベストセラー事情」は、ハードカバー・フィクション部門のトップ10 (2017年7月2日の週)[1]を紹介する。

1.Camino Island

By John Grisham
Doubleday
プリンストン大学から盗まれたF・スコット・フィッツジェラルドの自筆原稿探索の舞台はニュージャージー州からフロリダ州のリゾート地に移った。
(ベストセラー2週目)


2.The Identicals

By Elin Hilderbrand
Little, Brown

一卵性双生児の姉妹は両親の離婚で、ケープコッドのナンタケットとマーサズ・ヴィニヤードで別々に育った。
(ベストセラー初登場)


3.Tom Clancy: Point of Contact

By Mike Maden
Putman

ジャック・ライアン・ジュニアと会計士のポール・ブラウンはトップ会計監査会社の依頼で、元米国上院議員のウェストン・ロードが買収しようとしているシンガポールのIT企業の財務状況の分析を行っていたが、次第に世界的金融危機の回避のために奔走する羽目になっていった。(トム・クランシーは2013年に死去)
(ベストセラー初登場)


4.Into the Water

By Paula Hawkins
Riverhead

イギリスの田舎町ベックフォードを流れる川には17世紀以来多くの女が溺死したと言い伝えのある淵がある。2015年、2人の女性がそこで溺れて死んだ。自殺、事故、それとも他殺か? 2人の死を巡って徐々に暴かれていく《溺死の淵》を巡る過去の出来事の真相。
(ベストセラー7週目)


5.Dragon Teeth

By Michael Crichton
Harper/HarperCollins

2008年に死去した『ジュラシック・パーク』作者の最近見つかった遺稿の出版。1876年、ワイオミングで2人の古生物学者が恐竜の化石探しでしのぎを削った。実在した古生物学者のライバル関係を描いた小説。
(ベストセラー4週目)

6.Come Sundown

By Nora Roberts
St. Martin’s

4世代の女性によって経営されているモンタナのリゾートを兼ねた牧場でボディーンは曾祖母、祖母、両親、兄弟たちと働いていた。ある日20年以上行方不明だった叔母が牧場に現れ、ずっと暴力的な精神異常者によって囚われていたと告白するのだが……。
(ベストセラー3週目)


7.No Middle Name

By Lee Child
Delacorte

ジャック・リーチャーが主人公の中・短編小説集。書き下ろしのノヴェラ(中編小説)“No Middle Name”と、過去に出版された11の短編小説が収められている。
(ベストセラー5週目)


8.Nighthawk

By Clive Cussler and Graham Brown
Putnam

人工衛星「ナイトホーク」は3年間の国家機密任務を終えて降下中にハイジャックされた。NUMA(国立海中海洋機関)はロシアや中国と競い、消息不明の人工衛星の行方を探索する。NUMAシリーズ14作目。
(ベストセラー3週目)


9.The Fix

By David Baldacci
Grand Central

メモリー・マンと呼ばれ、見聞きしたことを忘れることができない男、エイモス・デッカーはFBI本部前の路上で、男が女を射殺し自分も銃で自殺する場面を目撃した。そしてこの事件がアメリカ国防情報局(DIA)の機密捜査事項と関わっていたため、デッカーは、はからずもDIAの捜査に協力せざるを得ない状況になった。「エイモス・デッカー」シリーズ3作目。
(ベストセラー9週目)


10.16th Seduction

By James Patterson and Maxine Paetro
Little, Brown

サンフランシスコ市警察の女性刑事リンゼイ・ボクサーが主人公の「女性殺人倶楽部」シリーズ16作目。
(ベストセラー7週目)

先月のリストから4作品が残っている。先月レビューした“Into the Water”もその1つだ。そのほかは“No Middle Name”, “The Fix”, “16th Seduction”と人気シリーズ3作品が引き続き10位以内に入っている。

日本では夏のバケーション・シーズンはこれからだが、アメリカではすでに6月から夏休みに入っている。というわけで、売れ筋の本は気軽で読みやすい人気作家(J.グリシャム、T.クランシー、N.ロバーツ、C.カスラー、J.パターソン等)の作品が多くなる。ベストセラーのトップ2作品、“Camino Island”と“The Identicals”はどちらもリゾート地を舞台にした、まさに夏らしい品(本)揃えとなっている。

[1]“A version of this list appears in the July 2, 2017 issue of The New York Times Book Review. Rankings reflect sales for the week ending June 17, 2017. Lists are published early online.”(このベストセラー・リストは2017年7月2日のニューヨーク・タイムズ紙ブックレビュー欄に掲載。リストは6月17日で終わる週の売り上げをもとに作成されている)

加藤秀行著『キャピタル』著者インタビュー!
芥川賞作家・三田誠広が実践講義!小説の書き方【第23回】静かで穏やかな悪夢の世界