【NYのベストセラーランキングを先取り!】「リース・ブッククラブ」で推薦され、処女作にしてベストセラー入りした心理サスペンス小説 ブックレビューfromNY<第86回>
NY在住のジャーナリスト・佐藤則男が紹介する、アメリカのベストセラー事情と、注目の一作をピックアップするコラムの86回目。今回はアメリカで影響力のあるブッククラブで取り上げられて話題となった、若い女性の突然死動画からストーリーがはじまるアナ・レイエズの処女小説を紹介します。
<第86回>7年前に別れた元恋人は、本当に手も触れずに2人の女性を突然死させたのか
The House in the Pines/ by Ana Reyes
Dutton, 2023.336ページ. US$27.00
今月のベストセラー事情
今月の「ニューヨーク・タイムズ ベストセラー事情」は、ハードカバー・フィクション部門のトップ10 (2023年2月5日の週)[1]を紹介する。
1.Lessons in Chemistry
By Bonnie Garmus
Doubleday
1950年代の終わり、まだ男性優位の時代に、 エリザベス・ゾットは唯一の女性化学者として研究所内で難しい立場にあった。そして、シングルマザーになることが明らかになると、研究所から解雇された。その彼女は1960年代の初め、なんとテレビの料理番組のスターになっていた。
(ベストセラー37週目)
2.The Cabinet of Dr. Leng
By Douglas Preston and Lincoln Child
Grand Central
FBI特別捜査官のペンダーガストの家系には、19世紀、エノック・レン博士と呼ばれた悪名高い殺人鬼の医者がいた。彼が作った不老不死の秘薬を飲まされ、現代まで生きているコンスタンスは、きょうだいが博士によって殺されるのを阻止するため、19世紀のニューヨークへ戻った……。はたして現代を生きるペンダーガストと過去に戻ったコンスタンスは再び会うことができるのか? 「アロイシウス・ペンダーガスト」シリーズ21作目、「レン博士」三部作の2作目。
(ベストセラー初登場)
3.The House of Wolves
By James Patterson and Mike Lupica
Little, Brown
冷酷で強引なやり方で、カリフォルニアでのビジネスを拡大してきたジョー・ウルフが殺害された後、4人の子供のなかで、ジェニー・ウルフが父のビジネス帝国を引き継いだ。House of Wolvesシリーズ1作目。
(ベストセラー2週目)
4.Tomorrow, and Tomorrow, and Tomorrow
By Gabrielle Zevin
Knopf
MITの学生セイディとハーバード大学のサムは卒業の前年、共同でビデオゲームを開発した。そして、サムのルームメートのマークスを加えた3人はビデオゲーム会社を立ち上げた。
(ベストセラー17週目)
5.How to Sell a Haunted House
By Grady Hendrix
Berkley
両親の死後、故郷チャールストンに戻ったルイーズは、生まれ育った家を売りに出そうとしたが、様々な困難に直面した。あたかもこの家は売られること拒んでいるように思えた。
(ベストセラー初登場)
6.The House in the Pines
By Ana Reyes
Dutton
マヤは大学入学直前の7年前の夏、故郷のマサチューセッツ州ピッツフィールドで、親友の原因不明の突然死を目撃した。ボストン大学を卒業後、故郷に戻らずボストンで就職したマヤは、ロースクールに通っているボーイフレンドのダンと一緒に暮らしている。ある日、若い女性が突然死する動画がネットで拡散され、動画の中でその女性と向かい合って座るフランクの姿を見た時、マヤは忘れかけていた7年前の不可解な経験を思い出し、動揺するのだった。
(ベストセラー3週目)
7.Hell Bent
By Leigh Bardugo
Flatiron
アレックス・スターンはイェール大学での将来を棒に振ってでも、地下世界の煉獄の苦しみからダーリントンを救出する決意をした。「アレックス・スターン」シリーズ2作目。
(ベストセラー2週目)
8.The Boys from Biloxi
By John Grisham
Doubleday
美しいビーチ、リゾート、水産業で知られたビロクシは、同時にギャンブル、売春、薬物など不正と堕落の町として悪名高かった。そんな町で幼馴染として育ったキースとヒューは、それぞれの父親と同じ道を歩むようになった。この町の悪の根絶を目指した検事である父を持つキースはロースクールへ進み、犯罪組織のボスとなった父を持つヒューは、父のクラブを手伝い、夜の世界に入っていった。
(ベストセラー14週目)
9.Demon Copperhead
By Barbara Kingsolver
Harper
アパラチア山脈南部の山の中で、ティーンエージャーのシングルマザーから生まれた赤毛の少年のサバイバル物語。チャールズ・ディケンズの『デイヴィッド・コパフィールド』の現代版ともいえる作品。
(ベストセラー14週目)
10.Fairy Tale
By Stephen King
Scribner
チャーリー・リードは野球とフットボールが得意な普通の高校生だった。しかし17歳の時、丘の上の大きな家に住む孤独な老人ハワード・バウディッチと知り合ったことで、ハワードの死後、その大きな家と裏庭の小屋、そして大量の金と信じがたい話を物語るカセットテープを引き継ぐ羽目に陥った。そして、この小屋は善と悪が戦う別世界への入り口だった。
(ベストセラー20週目)
先月から5作品が10位以内にとどまり、そのなかで先月1位に返り咲いたLessons in Chemistryはベストセラー37週目の今月も1位の座を守っている。また17週目のTomorrow, and Tomorrow, and Tomorrowは4位に順位を上げている。
今月は、ベストセラー3週目になる心理サスペンス小説The House in the Pinesを取り上げたい。
[1]“A version of this list appears in the February 5, 2023 issue of The New York Times Book Review. Rankings on weekly lists reflect sales for the week ending January 21, 2023.” (このベストセラー・リストは2023年2月5日のニューヨーク・タイムズ紙ブックレビュー欄に掲載。リストは2023年1月21日で終わる週の売り上げをもとに作成されている。)
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