【先取りベストセラーランキング】見聞きしたことを決して忘れないメモリー・マンの大人気シリーズ! ブックレビューfromNY<第43回>

NY在住のジャーナリスト・佐藤則男が紹介する、アメリカのベストセラー事情と、注目の一作をピックアップするコラムの43回目。今回は、一度見聞きしたことを絶対に忘れない超記憶症候群のエイモス・デッカー(メモリー・マン)を主人公にしたシリーズの5作目を紹介します。

<第43回>超記憶症候群の元刑事(メモリー・マン)が主人公の大人気シリーズ5作目

Redemption 書影1
Redemption/ by David Baldacci
Grand Central, 2019.432ページ. US$29.00

今月のベストセラー事情

今月の「ニューヨーク・タイムズ ベストセラー事情」は、ハードカバー・フィクション部門のトップ10 (2019年6月2日の週)[1]を紹介する。

1.Where the Crawdads Sing

By Delia Owens
Putnam

1969年、ノースカロライナ州の静かな町でチェース・アンドリュースの死体が発見された時、地元の人たちは、湿地帯で一人暮らしをする「湿地帯の娘」と呼ばれていた若い女性を犯人だと思った。
(ベストセラー37週目)


2.The 18th Abduction

By James Patterson and Maxine Paetro
Little, Brown

行方不明になった女性教師の事件の捜査を担当したサンフランシスコ警察の刑事リンゼイ・ボクサーは、事件の裏に潜む国際的な戦争犯罪人からサンフランシスコを守るために、夫ジョーと「女性殺人倶楽部」の親友たちの助けを借り、事件を解決する。「女性殺人倶楽部」シリーズ18作目。
(ベストセラー3週目)


3.The Night Window

By Dean Koontz
Bantam

一匹狼の元FBI捜査官のジェーン・ホークスが悪と戦う、「ジェーン・ホークス」シリーズ5作目。
(ベストセラー初登場)


4.Redemption

By David Baldacci
Grand Central

見聞きしたことを決して忘れないメモリー・マンと呼ばれるエイモス・デッカーは新米警察官だった時に犯したかもしれない間違いが、新たな犯罪につながっていることに今になって気づいた。「エイモス・デッカー(メモリー・マン)」シリーズ5作目。
(ベストセラー5週目)


5.Blessing in Disguise

By Danielle Steel
Delacorte

イザベルはシングル・マザーとして父親の違う3人の娘を育て、美術コンサルタントとしてのキャリアを築き上げ、そして3番目の娘の父親と幸せな関係を保っていた。そんな時、過去の秘密が明らかになリ、イザベルの人生は思わぬ方向に展開していくのだった。
(ベストセラー2週目)


6.The Guest Book

By Sarah Blake
Flatiron

アメリカのメイン州、かつて権力をふるったミルトン家の3代にわたる愛と過ちと裏切りの物語。
(ベストセラー2週目)


7.Sunset Beach

By Mary Kay Andrews
St. Martin’s

ドゥリュー・キャンベルはすべてがうまくいかず、おまけに失業中だった。そんな時、母の葬式に、25年間音沙汰のなかった派手好きの父ブライス・キャンベルが現れた。弁護士のブライスは自分の法律事務所のオフィス・マネージャーであり、ドゥリューが8年生の時のクラスメートだったウェンディと再婚していた。ブライスとウェンディはドゥリューに自分たちの法律事務所で働くよう勧めた……。
(ベストセラー2週目)


8.Neon Prey

By John Stanford
Putnam

米国連邦保安官のルーカス・ダベンポートは、長い間、誰にも気づかれず殺人を行ってきた連続殺人犯を追跡する。「ルーカス・ダベンポート(獲物)」シリーズ29作目。
(ベストセラー4週目)


9.Fire and Blood

By George R.R. Martin
Bantam

米国で人気のファンタジー・テレビドラマ・シリーズ『ゲーム・オブ・スローンズ』の原作者の最新小説。テレビドラマの時代より300年以上前に始まったターガリエン王朝の栄枯盛衰の物語。ニ部作の最初の作品。
(ベストセラー21週目)


10.Normal People

By Sally Rooney
Hogarth

高校時代、サッカー選手で人気者だったコネルと孤独でプライドの高いマリアンヌはお互いに意識しながら無視しあっていた。そして2人は1年後、ダブリンにあるトリニティ大学で学んでいた……。
(ベストセラー5週目)


先月のリストで2位だった“Where the Crawdads Sing” は1位に返り咲き、ベストセラー37週目に入って相変わらず根強い人気だ。そのほか、4位の“Redemption”、10位の“Normal People”が先月のリストから残っている。

“Fire and Blood”(21週目)は昨年12月の第2週目に1位で初登場以来、今年3月までは10位以内だったが、その後は11位から15位の間にとどまっていたため、4月、5月のこのコラムのリストには登場していなかった。この小説の時代の300年後を舞台にしたHBOの人気ドラマ・シリーズ『ゲーム・オブ・スローンズ』のシーズン8(最終シーズン)が今年4月14日に始まり、5月19日に最後のエピソードを放映し、終了した。以来、ストーリーの結末に関して、賛否両論、メディアでいろいろ取り上げられている。そのためか、この小説は最近になりまた少しだけ順位を上げてきている。

7位のMary Kay Andrewsの名前を見ると「夏のバケーション・シーズンになったなあ」と思う。リゾート地を舞台にした彼女の小説は毎年、この季節に発行され、ベストセラー入りをしている。

今月は、「エイモス・デッカー(メモリー・マン)」シリーズの5作目になる、“Redemption”を紹介したい。

[1]“A version of this list appears in the June 2, 2019 issue of The New York Times Book Review. Rankings reflect sales for the week ending May 18, 2019. Lists are published early online.” (このベストセラー・リストは2019年6月2日のニューヨーク・タイムズ紙ブックレビュー欄に掲載。リストは2019年5月18日で終わる週の売り上げをもとに作成されている。)

◎編集者コラム◎ 『カレーライスはどこから来たのか』水野仁輔
第20回小学館文庫小説賞贈呈式が行われました。受賞作は、黒田麻優子さん『春がまた来る』。