採れたて本!【デビュー#39】

採れたて本!【デビュー#39】

 公募新人賞なのになかなか正賞受賞作が出ない賞と言えば、かつては日本ホラー小説大賞が有名で、2回に1回しか大賞が出ないと言われていた(実際、25回のうち13回しか大賞が出ていない)。しかし、集英社のジャンプホラー小説大賞はそれ以上の難関。過去10回のうち、3回しか大賞(金賞)が出ていない。応募作品の中で最高評価を得ても、大賞を受賞できる確率は3割という計算になる。

 この高いハードルをクリアして、昨年、4年ぶり3度めの〈金賞〉を受賞したのが、高谷再『この罪を消し去ってください』。

 カバーは、遠田志帆の描くセーラー服ショートボブ(前髪あり)少女のアップ。ど真ん中のストレートです。帯の推薦コメントがまたすごい。斜線堂有紀の〈罪と心が連鎖し、未知の場所へとあなたを導く。新たなる傑作箱庭譚〉はまあ順当としても、もう片方の推薦者は、なんと、集英社ゲームズの人気ミステリーアドベンチャーゲーム『都市伝説解体センター』の主人公のあざみちゃんことふくらいあざみ。ふうん、小説とか読むんだ。まあ、大学3年生だしねえ。あざみちゃんいわく、

〈もしかして、いちばん怖いのは【お化け】じゃなくて、【気持ち】の【すれ違い】なのかも。うん、きっとそう!〉

 ……はい、そうですね。発売前にはバウンドプルーフ(簡易製本の見本版)も送られてきたが、担当編集者の推薦コメントの熱量もすごかった。

〈2014年にホラーの新人賞を立ち上げて10年。10年間応募作を読み続けた中で、最もすぐれたエンタメ作品であり、最も心を打たれ、最も世に届けたいと思った、「今しか書けない」ホラーです〉

 ちなみに著者の高谷再は、昨年、第16回創元SF短編賞を「ピンチヒッター」で受賞。受賞作を改題した「打席に立つのは」が〈紙魚の手帖〉vol.24に掲載されて商業誌デビュー。こちらは、誰もが電化脳を埋め込んでいる近未来を背景に、高校野球部の選手がイップス克服のため女子マネージャーと人格を入れ替える話。高校野球版「君の名は。」というか、特殊設定スポーツ青春小説です。


 一方、著者初の長編にしてデビュー単行本となる『この罪を消し去ってください』の舞台は、私立女学園の高等部。由緒正しい中高一貫のミッション系女子校だが、運営母体は大手医療メーカー。その企業のAI部門が独自開発した高度なAI〈ニア〉が生徒を管理し、ウェアラブルデバイス(携帯端末と連動したシリコン製チョーカー)を通じて個々の生徒をサポートする。

 この学校に高等部から入学した新入生、つきしまは、入学式の日に遅刻し、偶然出会った上級生のおりはらぞらに助けられる。果穂には、秘めた目的があった。かつてこの学園の時計塔から転落死した姉のあいの死の真相をつきとめ、姉の最期の願いを叶えること。

 しかし、果穂が藍奈の妹だと知った夜空は、なぜか態度を急変させる。夜空は、藍奈の死にまつわる秘密を抱えていた……。

 というわけで、お嬢様学校の女子寮を舞台にした典型的な百合ミステリ風に幕を開けるが、早々に生徒会長・ほうじょうかなでの死体が転がり、物語は二転三転、思いがけない方向に転がってゆく。

 後半の主役はAIの〈ニア〉。ある意味ロボットSF的な展開だが、いやまさか、こんなことになるとは。まさにノンストップ学園ホラー。一応、前半から伏線が張ってあるとはいえ、この着地には仰天しました。実写映画化に期待したい。

この罪を消し去ってください
『この罪を消し去ってください』

高谷 再
集英社

評者=大森 望 

萩原ゆか「よう、サボロー」第147回
田口幹人「読書の時間 ─未来読書研究所日記─」第40回