ハクマン 部屋と締切(デッドエンド)と私 第167回

先日、現役漫画家が書いた、行き詰まった漫画家志望者に向けたアドバイス記事がバズっていた。
この漫画家の方とは若干知り合いなのだが、まず行き詰まっている漫画家志望者に手を差し伸べようという発想がすごい。
私だったら「悪霊退散」と叫んでその場を去るか「ついでに退路も塞げないだろうか?」と土嚢の手配を始めるところだ。
記事は「まず健康になれ」と、全てに通じる真理で始まるのだが、そこからものの数行で「不健康になるのはプロになってから」と、どこにも通じない異常業界の話になっていて面白かった。
健康になるのは会社員と他フリーランスだけで良く「漫画家なら不健康で死ねい」と江田島平八みたいなことを言っているわけではない。
もちろん漫画家も健康でいるべきだ、しかし漫画家の不健康は止めても無駄なのだから仕方ない。
漫画家になっても健康を維持しろというのは、オタマジャクシにカエルになってからもエラ呼吸を貫けと言っているのに等しい。
実現不可能なことを言うのはアドバイスでもなんでもない。できる範囲のことを言っているという意味でもこの記事は信用が置ける。
漫画家も肉体的には前ほど病まなくなってきていると思う。
しかしWEB掲載や電子配信の登場による競争の激化、加速する消費スピード、さらにSNSで可視化された他作家のサクセスなど、メンタル的には病みやすくなっているような気がする。
つまり、漫画家になれば自動的に体調崩し放題のサブスクに加入できるのだから、志望の内に壊すなどもったいないということだ。
むしろ漫画家になってから盛大に壊すためにも志望期間は必要以上に健康になっておくべきだろう。
だができれば自分の体でビルド&スクラップをやる前に「不健康になることが前提で話が進んでいく業界に本当に入りたいか」を再度胸に問い直してほしい。
実は私は「漫画家志望時代」というのをほとんど経験していない。
人生の大半をポートピア連続殺人事件のダンジョンで過ごしたかのような行き詰まり顔をしているが、唯一漫画家になるまでだけはほぼ行き詰まらなかった。
「漫画家になると言いながら1ページも描かなかった期間」を行き詰まりにカウントするなら、腸閉塞レベルのドン詰まりになってしまうが、投稿を始めてからデビュー、連載を始めるまでは本当に早かった。
その流れを説明しても聞いている人のご機嫌が暗峠になっていくだけなので割愛するが、漫画家志望者としての行き詰まりは経験したことがないので、その辛さはわからない。
地元のパイセンが和民で「俺童貞だったことないからお前らの気持ちわかんねえけど」と言いだした時と同じダルさを感じていることだろう。
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