遠藤周作著『沈黙』がハリウッド映画化!遠藤周作のオススメ作品は?

遠藤周作のキリスト教小説の傑作「沈黙」がハリウッドで映画化され、2016年秋に公開されることとなりました。今回はハリウッド映画化された「沈黙」に纏わる話や、その他の遠藤周作のオススメ作品をご紹介します。

1.ハリウッド映画化作品、『沈黙』(1966年)

ハリウッド映画「沈黙」の監督は、タクシードライバーなど数々の名作を世に送り出し、2006年に公開された「ディパーテッド」ではアカデミー監督賞・作品賞を受賞したマーティン・スコセッシ。監督は少年時代には映画監督ではなく、カトリックの司祭を志していたほど敬虔なカトリック信者として知られています。主演は「アメイジングスパイダーマン」シリーズで人気となったアンドリュー・ガーフィールド。日本人キャストとしては窪塚洋介や若手女優の小松菜奈が出演し、この作品でハリウッドデビューを果たしました。

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出典:http://www.amazon.co.jp/dp/4101123152

「沈黙」は、キリスト教文学の中でも世界的に高い評価を受けている作品の一つとなっています。江戸時代初期、キリシタン弾圧に苦しみながらも信仰を貫こうとするポルトガル人司祭の苦悩を描いた作品です。自分の信仰を貫くべきなのか、それとも苦しむキリスト教徒たちを救うべきか。「神の沈黙」について、悩み葛藤しながら司祭の下した決断とは?「神とは?」「信仰とは?」いったい何のためのものなのかと深く考えさせられる作品となっています。

沈黙の魅力を掘り下げた記事、「遠藤周作の『沈黙』が映画化されるまで」も合わせてチェックしてみてください。

島原の乱が鎮圧されて間もないころ、キリシタン禁制の厳しい日本に潜入したポルトガル人司祭ロドリゴは、日本人信徒たちに加えられる残忍な拷問と悲惨な殉教のうめき声に接して苦悩し、ついに背教の淵に立たされる……。神の存在、背教の心理、西洋と日本の思想的断絶など、キリスト信仰の根源的な問題を衝き、〈神の沈黙〉という永遠の主題に切実な問いを投げかける長編。

 

2.『海と毒薬』(1957年)

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出典:http://www.amazon.co.jp/dp/4101123020

舞台は九州の大学付属病院。太平洋戦争中に捕虜として捕えられたアメリカ兵が生きたまま生体解剖実験に利用されるというショッキングなテーマが扱われています。戦争や大学病院の権力闘争のために人はどこまで残虐になれるのか。良心とは、何が人を残虐な行為へと駆り立てるのか?キリスト教的倫理観や日本人特有の集団心理をひも解きながら誰の心にもある残虐性について考えさせられる作品です。

戦争末期の恐るべき出来事――九州の大学付属病院における米軍捕虜の生体解剖事件を小説化、著者の念頭から絶えて離れることのない問い「日本人とはいかなる人間か」を追究する。解剖に参加した者は単なる異常者だったのか? どんな倫理的真空がこのような残虐行為に駆りたてたのか? 神なき日本人の“罪の意識”の不在の無気味さを描き、今なお背筋を凍らせる問題作。

 

3.『深い河』(1993年)

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これまで数々の宗教、信仰に関する作品を発表してきた遠藤周作の集大成的作品といわれています。戦後40年ほど経った頃、5人の日本人がインドへ旅行に行く物語。神や宗教に対する西洋的な考え方と日本人の考え方とはどのような違いがあるのか、インドのガンジス河を舞台にそれぞれの人生観が表現されています。愛とは何か、神とは何か生涯にわたって考え続けた遠藤周作のたどり着いた答えがこの作品で描かれています。

愛を求めて、人生の意味を求めてインドへと向かう人々。自らの生きてきた時間をふり仰ぎ、母なる河ガンジスのほとりにたたずむとき、大いなる水の流れは人間たちを次の世に運ぶように包みこむ。人と人のふれ合いの声を力強い沈黙で受けとめ河は流れる。純文書下ろし長篇待望の文庫化、毎日芸術賞受賞作。

 

4.『わたしが・棄てた・女』(1963年)

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宗教的概念や罪の意識など重いテーマを扱った作品が多い遠藤周作作品の中で、最も読みやすい作品の一つとして多くの人に読まれています。雑誌の文通欄で知り合った女性の体を強引に奪うも、その後は冷たくあしらう主人公。どんな扱いをされようとも一人の男性を一途に愛し続ける女性の波乱に満ちた人生が描かれています。人を愛するとはどういうことなのか、物語の登場人物それぞれの生き方が疑問を投げかけます。

2度目のデイトの時、裏通りの連込旅館で体を奪われたミツは、その後その青年に誘われることもなかった。青年が他の女性に熱を上げ、いよいよ結婚が近づいた頃、ミツの体に変調が起こった。癩の症状である。……冷酷な運命に弄ばれながらも、崇高な愛に生きる無知な田舎娘の短い生涯を、斬新な手法で描く。

 

5.『銃と十字架』(2015年)

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出典:https://www.shogakukan.co.jp/books/09352240

17の世紀前半の、日本でのキリスト教弾圧についての史実をもとに構成されており歴史的な書物としても高く評価されている作品です。主人公は幼少期に神学校でキリスト教について学び、その生涯をキリスト教に捧げることを決心します。激しいキリスト教弾圧に屈することなく、個人で海を渡り日本人で初めて司祭となるまでの波乱に満ちた人生が描かれています。実在したペテロ岐部神父をモデルに書かれた本作品は、「沈黙」とともに遠藤周作のキリスト教観の理論的な最高峰と呼べる一冊であると評されています。
ためし読みはこちらから

17世紀前半の日本におけるキリスト教弾圧の貴重な通史であり、「沈黙」とともに、作者のキリスト教観の理論的な最高峰に位置する一冊である。一日本人ペトロ岐部の劇的生涯を描く。

 

最後に、日本人の宗教観とは

世界でも13カ国で翻訳されている「沈黙」の映画化に注目が集まっています。多くの日本人にとってはなじみ深いとは言えない、キリスト教というテーマですが、人生とは、信念とは、神とは、何かを考えさせられる壮大な作品となっています。映画を観る前に遠藤作品を読んでおくと、理解が深まり、より映画が楽しめるかもしれません。

また、P+D BOOKSでは遠藤周作作品をその他にも取り揃えています。
是非こちらもチェックしてみてください。

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