【寄席講座】そうだ、落語に行こう。

「落語」と聞いて「敷居が高そう」と思っていませんか?本当は、もっとカジュアルに楽しむべき大衆芸能なんです!そんな落語の魅力について、人気ブロガー「かるび」さんが語ります。

ここ数年ほど、落語ブームと言われますね。特にネットや雑誌等で「落語」特集の記事が一般誌、ビジネス誌を問わず取り上げられるようになりました。また、新聞等でも、首都圏版等の文化面では土日祝日は落語会や落語特集記事を頻繁に見かけます。 落語会に行くと、噺家さんが「本当にブームなんですかねぇ」とよく高座で話しているのを耳にしますが、ファンとして実際に落語会に出かけるとブームになっていることを非常に感じます。人気落語家のチケットはなかなか取れないですし、土日祝日の落語会は若い人も大勢見かけますので。若手のイケメン落語家には、追っかけのような女性も目立ちます。

実は私もそんなブームの中ハマりました

実は、私も落語に関してはそれほどファン歴が長いわけではなく、まさに今の落語ブームの中、落語との出会いがありました。 私が、落語にハマったきっかけは、懇意にしていたブロガーさんからの影響でした。そのブロガーさんが落語好きで、たびたび落語関係のエントリをアップしていたのを見て「じゃあちょっと聞いてみるか」と、長距離ドライブのお供に桂歌丸や三遊亭円楽の落語会のCDを購入して、車中で聴き始めたのがきっかけです。 長距離ドライブ中、嫁も子供も疲れてぐっすり寝ている時に、試しに聞いてみると、「あぁ、意外と面白いな」と、見慣れた「笑点」メンバーのCDだったこともあって、すんなりと入って行けました。 そんなわけで、落語ファン歴はまだ1年くらいの新参者なのです。ちょうど今年の春に会社を退職して自由な身になったこともあり、落語にかける時間が増えました。最近は、月に5~6件のペースで落語会や寄席に通い、落語会に行かない日も、毎日必ず2話くらいCDやネット動画、テレビなどの落語を聞いて、ハマっていきました。  

実はすごく敷居が低い落語。気軽に付き合えます

rakugo3 ところで、「落語」って聞くと、どうも「日本の伝統芸能」といったおもむきで、ちょっと敷居が高いようなイメージを持っている方もいらっしゃるかと思います。 でも、実は全然そんなことないんです。 私自身、落語会や寄席でも、つまらない演目や演者さんの時は普通にウトウトしてますし、自宅で聞いている時も、洗濯物を干しながら、とか料理を作りながら、、、みたいに家事のお供として聴いていたり、ウォーキングの際にかけ流していたりとか。割と肩肘張らず、適当な感じの距離感でハマっているのです。 私も、最初はそんな感じがしていました。なんか和服とか着ていて、難しそうな話をするのかな?と。 落語は、一言で言うと「オチのついた話」です。話し手である「落語家」が着物を着て、座布団に座ってオチのあるストーリーをえんえんと話し続ける大衆芸能です。ストーリーは江戸時代から現代まで、様々な時代と場面があり、そんな中、人間模様の喜怒哀楽を面白おかしく、時には人情味たっぷりにプロの噺家さんがしゃべるわけです。 確かに、江戸時代から連綿と続く日本独自の「話芸」なので、長い期間を経て定まってきた落語独自の形式や作法はありますが、「伝統芸能」というより「お笑い」の一種だと思えばいいと思います。喜怒哀楽色々な感情を表現する場面がありますが、基本は「笑い」が中心であり、「漫才」や「コント」に近いノリで捉えればいいと思います。  

初めての落語

では、初心者が落語に入っていくにはどこから手を付けたらいいのでしょうか?おそらく、全く落語に触れたことがない人は、ここが一番の悩みどころとなるのかもしれません。 そこで、私がオススメするのは、以下の3ステップでの入門です。

ステップ1:音源や映像に気楽に触れてみる

ステップ2:落語の「ライブ」に行ってみる

ステップ3:さらにお気に入りの落語家を掘り下げて聞いてみる

まずは、気楽に落語の音源や映像を見たり聞いたりしてみましょう。そこで、ある程度「落語ってこんな感じなのか」とわかったところで、落語家が話している「生」の現場に足を運んでみましょう。 落語家のライブは、驚くほど安いので、気軽に行けると思います。そして、ある程度慣れてきたところで、何人かの気に入った落語家を見つけて、その人を中心に色々な落語の演目に触れて掘り下げていくのが良いでしょう。 それでは、もう少し詳しく見ていくことにします。  

ステップ1:無料音源や映像に触れてみる

まずは、いきなりライブに出かけるのではなく、何か手っ取り早く聞いてみるのが良いと思います。幸いなことに、落語は、無料か、安価にいくらでも音源や映像が手に入ります。まずは、気軽に聞いてみましょう。以下が、おすすめの情報源です。

● Eテレ「日本の話芸」

(毎週日曜 午後2時 | 再放送 毎週月曜 午後3時 / 総合 再放送 毎週土曜 午前4時30分) 毎週1回30分、ベテラン落語家(※たまに講談の時あり)が古典落語から新作落語まで幅広く、持ちネタを1話30分かけて披露する番組です。出演する落語家は、基本的には人気のベテラン落語家が多く、クオリティは保証付き。

● NHK総合「演芸図鑑」 

(総合 毎週日曜 午前5時15分) コントや漫才、落語、ホスト落語家のトークと3部構成の番組ですが、この中の落語コーナーがおすすめです。1回10分~15分くらいの短めの落語が聞けます。こちらに出演する落語家も一流の落語家が多いので、安心して楽しめます。基本的に短いので、笑える話が多めです。

● CD・DVDでみる

DVDやCDで落語を鑑賞するのも楽しいもの。私のおすすめは、できるだけ「新しい」存命中の落語家や、名前を聞いたことがある落語家のCDやDVDです。 昔の大御所の落語は、クオリティは良いのですが、若干時代の雰囲気や笑いの質が違っているので、最初に聞くとつまらなく感じることも意外に多いのです。既に亡くなった落語家の大全集系から聞いてみるなら、「立川談志」か「古今亭志ん朝」なら、現代的なセンスとテンポを兼ね備えているので馴染みやすいと思います。

[編集部より] 小学館ではCDブック、DVDブックにて「落語コレクション」シリーズを発売中! この記事でおすすめされている「立川談志」や「古今亭志ん朝」の落語もお楽しみいただけます。 公式リンク:小学館 落語コレクション

 

ステップ2:落語のライブに行ってみる

少し慣れてきたところで、「生の落語」に触れてみましょう。というのも、落語のライブは、他の日本の古典芸能や演劇、アイドルやバンド、クラシック等のコンサート等に比べて、圧倒的に安いので経済的にも入りやすいのです。 例えば、一流の落語家を多数動員したお祭り的な一番高い落語会でも、上限5000円程度で、通常は2000円~3000円程度で見ることができます。若手や新人の落語会なら1000円や500円など破格の値段のものも多数あります。ですから、気軽にどこかまずは足を運んで、生の落語の「空気」に触れてみるのをおすすめします。 さて、落語のライブは大きく分けると寄席よせ「ホール落語」の2つに別れます。以下、その2つを分けて説明します。

● 『寄席』

pixta_12565260_M 「寄席」というのは、常設の落語専門の演芸場で行われる落語家の興行で、東京都内に数軒、大阪と横浜に1軒ずつ営業しています。たいてい1回につき4~5時間と長丁場で、1回の興行中に落語を中心として、「色物」と言われる浪曲・紙切り・コントなどの演芸も含め、10演目くらいの演目があり、盛りだくさんです。これだけたっぷり見て、入場料は、2,000円~3,000円とこれまた破格の安さが魅力です。 寄席は、数十名から、多くても300席位のアットホームな場所が多く、落語家と観客の距離が圧倒的に近いのが特徴です。また、寄席によっては飲食やアルコールの持ち込みもOKで、リラックスしながら見ることができます。 1回数時間の長丁場なので、次から次へと演者が出てきますが、別に全部見なくてもOKです。いつでもフラッと入ってフラッと出られますし、面白くなければ寝ても大丈夫です。私も、寄席に行ったらビールを飲んで不覚にも意識が飛んでしまっていることもよくあります。

● 『ホール落語』

もう一つは、通常の演劇やコンサート用のホールで行われる「ホール落語」です。こちらは、1名~数名程度の落語家が、寄席よりも大人数のお客さんを相手に、じっくりと落語を聴かせる落語会が多く行われています。 大人数が次から次へと登場する寄席では、各演者の持ち時間は15分程度ですが、ホール落語ではじっくりと大ネタを聴くことができます。また、各落語家の腕の見せ所でもある、落語の本題に入る前のフリートーク部分である「マクラ」もたっぷり楽しめます。たとえば、人間国宝でもある大ベテラン、柳家小三治の独演会では、この小三治の「マクラ」を楽しみに聞きに来るお客さんが多数いると言われています。  

ホール落語と寄席はどちらがいいのか?

もちろん、どちらから入っていってもいいのですが、最初に行くライブとしてなら、私のオススメは、どちらかというと「ホール落語」です。 まず、寄席はロケーションの問題があります。首都圏や大阪近辺在住でないとなかなか行けないという物理的制約があるからです。 加えて、寄席は必ずしも一流の演者だけが出てくるわけじゃないこともあります。2016年現在、東西合わせて800名程度の落語家がいますが、やはり上手な演者となるとそのうちの上位100名くらいのもの。落語の話芸としての本当の面白さをわかりやすく知るには、最初は上手な落語家を選んで、チケットを買い、彼らの話を「ホール落語」でじっくり聞いたほうが良いと思います。  

ステップ3:さらにお気に入りの落語家を掘り下げて聞いてみる

さて、ある程度慣れたところで、さらに落語についてよく知りたいと思ったのであれば、まずはたくさん数を聞いてみることです。江戸時代から何度も口演を重ね、定番となった話、いわゆる「古典落語」だけでも数百話は軽くありますから。   私のオススメは、色々聞いていく中で、数名程度、自分とフィーリングが合う面白い落語家をピックアップして、彼らのCDやライブなどを集中的に聞いていくやり方です。ネットや書籍、雑誌等で調べてみて、これは!と思う落語家を是非探してみましょう。 ここでは、私がいろいろ聴き比べてきた中で、特に落語初心者でも安心して聴ける実力とわかりやすさを兼ね備えた落語家を何人か紹介しておきます。  

初心者が安心して聴ける面白い落語家リスト

▼立川志の輔

shinosuke 出典:http://www.amazon.co.jp/dp/B00006K0JD

新作も古典も両方とも抜群に面白い。爆笑が絶えない新作落語に、「志の輔らくご」と自ら命名するように、丁寧で現代的な感性で再解釈し、分かり易く噛み砕いて構成される古典落語まで、その高座にハズレなし。チケットがいま一番取りにくい人気落語家。  

▼柳家喬太郎きょうたろう

kyouraro 出典:http://www.amazon.co.jp/dp/B005GJ3WIW

新作落語も古典落語も自由な感性で味付けし、ドッカンドッカンと笑いの渦に変えてしまう高座は、老若男女あらゆる層のファンを引き付けます。マクラでのウルトラマンを始め、マニアックなサブカルネタや、泣かせる人情噺まで引き出しの広さも随一です。  

▼春風亭小朝こあさ

koasa 出典:http://www.amazon.co.jp/dp/4418102388

マクラでの時事ネタから奥様方の観客いじり、本編に入った時の演技力、テンポの良さとどれをとっても一流で、どの口演もハズレがなく満足できます。36人抜きで「真打ち」に抜擢された実力は伊達ではありません。  

桃月庵白酒とうげつあんはくしゅ

hakushu 出典:http://www.amazon.co.jp/dp/B00MO6WEE8

リズム感と掛け合いのテンポの良さ、天性の声の良さと、現代的な感性での語り口が非常に分かり易く初心者でも安心して落語の世界観に没頭させてくれます。優しそうな風貌に似合わずマクラでの毒舌も聴き応え十分。  

▼柳家三三さんざ

観客が古典落語の世界に自然と入っていける口調の良さや、江戸の風を感じさせる語り口の滑らかさが絶妙。臨機応変に挟み込まれる小気味の良いくすぐりや時事ネタでしっかり笑わせてくれます。都内の落語会で姿を見ない日は無いほど多忙ながら、持ちネタは非常に豊富な本格派です。  

まとめ

落語家が高座にあがった時に、マクラで「今日はボーッとした気持ちでゆったりと聴いて頂ければ」と言うのを耳にすることが多いのですが、本当にそのとおりだと思います。事前知識も何の準備もいらず、頭を真っ白にして聴くだけでOK、そんな気楽な大衆芸能が「落語」です。 思い立ったらふらっと落語会や寄席に出かけてもいいし、音源をiPodなどに入れて、ジョギングや通勤のお供にしてもいいですね。是非、自分なりの楽しみ方を見つけて行ってもらえればと思います。  

[執筆者プロフィール] karubi

かるび Twitter: @karub_imalive Blog: あいむあらいぶ

 

初出:P+D MAGAZINE(2016/09/07)

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