アジア9都市アンソロジー『絶縁』ができるまで⑤

アンソロジー『絶縁』ができるまで

 翻訳者の皆さんの推薦のもと、実際に編集部で作品を読み作家を選んでいきました。結果、ご執筆いただくことになった9名のみなさんをご紹介します!


村田沙耶香
(c)文藝春秋

村田沙耶香
1979年生まれ。2003年、初めて投稿した小説「授乳」で群像新人文学賞優秀作を受賞してデビュー。2009年『ギンイロノウタ』(新潮社)で野間文芸新人賞、2013年『しろいろの街の、その骨の体温の』(朝日新聞出版)で三島由紀夫賞を受賞。2016年に芥川龍之介賞を受賞した『コンビニ人間』(文藝春秋)は、30以上の言語で翻訳され、全世界の累計発行部数は100万部を突破した。以降も『地球星人』(新潮社)、『生命式』(河出書房新社)、『変半身』(筑摩書房)、『丸の内魔法少女ミラクリーナ』(KADOKAWA)と、新たな世界を読者に提示する作品を書き続けている。


アルフィアン・サアット

アルフィアン・サアット
1977年、シンガポール生まれ。名門ラッフルズ・ジュニアカレッジ在籍時から劇作家として活動を始める。1996年にはシンガポール国立大学医学部に入学するも、創作に専念するために2002年に退学。1998年に詩人としてデビューを飾り、1999年には短編集『サヤン、シンガポール』を発表。マレー語と英語での創作活動を行う数少ない作家の一人であり、デビュー時からマイノリティに対する抑圧に反発する姿勢が一貫している。現在はシンガポールの劇団W!LD RICEの専属劇作家。戯曲に『アジアン・ボーイズ』三部作、『ナディラ』など。邦訳された小説作品に『マレー素描集』(書肆侃侃房)。


郝景芳

郝景芳 ハオ・ジンファン
1984年、天津市生まれ。小学生の頃から科学に強い興味を抱き、名門・清華大学に進学。物理学で修士号、経済学で博士号を取得。経済学者として研究職に就いた後、現在は、子供と保護者を対象に、啓蒙的な一般教育プログラムを提供する公益事業「童行学院」を創設し、貧困地域の教育環境の改善を目指す。大学に入学してから本格的な創作を始め、2016年、「折りたたみ北京」でヒューゴー賞を受賞。邦訳は「折りたたみ北京」「見えない惑星」「阿房宮」、『1984年に生まれて』(中央公論新社)、『人之彼岸』『流浪蒼穹』(いずれも早川書房)など多数。


ウィワット・ルートウィワットウォンサー

ウィワット・ルートウィワットウォンサー
1978年、タイ・プーケット県生まれ、在住。普段は薬剤師として病院に勤務。タイではFILMSICK名義で映画の批評活動をするシネフィルとして知られ、タイ国内外でさまざまな映画上映イベントも企画。激化するタイ国内の政治対立で多くの人々が傷つくなか創作活動を始め、2013年に短編集『壊れたユートピア』を刊行。小説家としても広く知られるようになる。軍事クーデター後を生きる人々の苦悩を描く「2527年のひどく幸せなもう一日」は、邦訳がある。最新作は2020年に発表された中編『慰めの84段落』と短編集『奇形児の愛』(いずれも未邦訳)。


韓麗珠

韓麗珠 ホン・ライチュー
1978年、香港生まれ。失業対策として法令に基づき男女が互いに身体を縫い合わせて暮らすという奇抜な設定の『縫身』や、客から聞きとった物語を図案にする刺青師を主人公とする『人皮刺繡』など、香港の日常への省察に根ざした小説を多く執筆する。2019年5月には香港芸術発展局から「芸術家年奨」を受賞。スピーチでは「香港にこれからも言論の自由と司法の独立が存在し続けることを望みます」と訴えた。2019年の逃亡犯条例改正案への反対デモに端を発する政治的な激動の日々を、散文集『黒日』『半蝕』で描き出している。邦訳に短編「海を渡る」(藤井省三訳『すばる』2015年9月号)。


ラシャムジャ

ラシャムジャ
1977年中国青海省海南チベット族自治州貴徳県生まれ。北京の中央民族大学、大学院で学ぶ。現在は、北京の中国チベット学研究センターで宗教学部門の研究員として勤務するかたわら、チベット語で創作活動を行っている。文芸雑誌『ダンチャル』の主催する文学賞を5回受賞(歴代最多)、2020年には中国の四大文学賞の一つである全国少数民族文学創作〈駿馬賞〉を受賞している。代表作に、1980年代に農村で暮らした子どもたちの成長と都会での苦悩を描いた長編小説『雪を待つ』(勉誠出版)。2022年、短編集『路上の陽光』(書肆侃侃房)を刊行。


グエン・ゴック・トゥ

グエン・ゴック・トゥ
1976年、ベトナム南部・カーマウ省生まれ、在住。南部方言を用いながら、南部デルタに生きるベトナムの庶民の暮らしや情感を作品に描く。2005年に刊行した小説集『果てしない大地』および同名の中編小説で注目を集め、ベトナム作家協会賞(2006年)、ASEAN文学賞(2008年)を受賞。2010年には映画化され、大きな話題となった。2018年、同作のドイツ語版が現地でLiBeraturpreis賞を受賞。短編「楽しい映画作り」は邦訳されている。これまでに20作以上の短編集、エッセー集を刊行、長編作品に『川』、『水のクロニクル』がある(いずれも未邦訳)。


連明偉

連明偉 リエン・ミンウェイ
1983年、台湾・宜蘭生まれ。国立暨南国際大学中国語文学系卒業。国立東華大学創作与英語文学芸術碩士。海外での多様な就業経験に基づく作品で知られる。フィリピンの華僑学校フィラデルフィアスクール(尚愛中学)での中国語教師経験から中編小説集『番茄街遊撃戦』(デルモンテ通り遊撃戦)を、カナダのフェアモント·バンフスプリングスホテルでの見聞から、短編集『藍苺夜的告白』(ブルーベリーナイトの告白)をそれぞれ上梓した。その他、長編小説『青蚨子』では 故郷の宜蘭の歴史的記憶の再構築を試みている。いずれも未邦訳。


チョン・セラン
(c)melmel Chung

チョン・セラン
1984年ソウル生まれ。編集者として働いたあと、2010年に文芸誌『ファンタスティック』に「ドリーム・ドリーム・ドリーム」を発表して作家としての活動を始めた。2013年『アンダー・サンダー・テンダー』(クオン)でチャンビ長編小説賞を、2017年『フィフティ・ピープル』(亜紀書房)で韓国日報文学賞を受賞した。ほか邦訳作品に『保健室のアン・ウニョン先生』『屋上で会いましょう』『声をあげます』『シソンから、』『地球でハナだけ』(以上、亜紀書房)。SF、ファンタジー、ホラーなど多彩な作品を発表し、幅広い世代から愛されている。

(続きは次回に)

担当者かしわばら
※この本は二人で編集しました。そのうちもう一人も出てくると思います。

『絶縁』ができるまで⑥


\12月16日発売/

絶縁

『絶縁』
村田沙耶香、アルフィアン・サアット、郝景芳、ウィワット・ルートウィワットウォンサー、韓麗珠、ラシャムジャ、グエン・ゴック・トゥ、連明偉、チョン・セラン


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