ハクマン 部屋と締切(デッドエンド)と私 第107回
いつもより担当からの
催促が早い気がする。
おそらくGWの都合だろう。
そんなわけで一応メノレカリで「ケツ毛」と検索してみたが「ケツ毛ジョリー」「押忍!ケツ毛トリマー」というケツ毛処理用品しかヒットしなかった。
やはりケツ毛はケツ毛ジョリーを買ってでもなくしたいものなのである。
おそらく、ケツの毛を抜いて帰った方も「手ぶらで帰ったら兄貴にボコられる」などの背水の陣であり、相当冷静さを欠いていたのだろう。
「ケツの毛まで抜かれる」というのは「その場にいる人間全員不幸」という意味なのかもしれない。
実際私はケツ毛検索してしまうほど冷静さを欠いており、そのぐらい金がなくなった。
何が引き落とされたかというと、今年も無事追納となった税金各種、そして健康保険料である。
税金額はすでにわかっていたが、健康保険料の方が驚くほど値上がりしていた。
だがおそらく値上がりについてお知らせは来ていたはずである。
ただ自分が手紙類を「読まずに積む」という、まだ読まずに食ってウンコにして土に還す白ヤギさんの方がエコでマシな存在なため、それを見ていなかっただけだろう。
しかし、見ていようがいまいが凄まじい値上げである。
収入は上がらないのに、物価や社会保険料だけが上昇していくというこの状況は普通にやっていけない気がするのに、まだ窓の外に餓死体などは見られないのはどういうことなのか。むしろ自分が第1号になりそうな勢いだ。
しかしそんな中、スクウェア・エニックス社が物価上昇を考慮し作家の原稿料を大幅にアップさせたとして喝采を受けていた。
出版業界は電子書籍の需要が一気に上がって好景気になっているとはよく言うが、それを直接作家に還元しているところは少ないと思うので、その心意気やよしだ。
ちなみに私はスクウェア・エニックスと仕事をしたことは一度もない。
苦境の作家を支えようという崇高な精神を持った会社が、私に声をかけるなどという愚行を犯すはずがない。ますます同社の好感度が上がった。
しかし、今から仕事を貰うためにスクエニ社の靴をペッティングしていくつもりはないが、「スクエニ社で描く」というのは、私の子供のころの夢でもあった。
私は小学生時代ドラクエキッズであり「ドラクエ4コマ漫画劇場」のファンでもあったので、いつかここで描きたいと思っていたのだ。
ドラクエ4コマは読者投稿を受け付けており、そこからデビューした作家も多かったので、私も投稿しようと思ったのだが、4コマ漫画の枠線を引くことがどうしてもできなかったため投稿は断念した。
つくづくデジタルで漫画が描ける時代になって良かったと思う。
それがなければ私は今でも墨汁で引いた線を定規でこすって終わらせるだけの人生を送っていただろう。