ハクマン 部屋と締切(デッドエンド)と私 第114回

「ハクマン」第114回
人生の後悔というのは
「可能性」があるから
生じるのだ。

しかしあまりにもイメージトレーニングに注力しすぎると、せっかくの想像力を漫画にではなく「最高の結果を出した俺様像」のキャラメイキングで使い果たしてしまうし、最悪それで満足してしまうこともある。

ある意味コスパが良いとも言えるが、何せ現実には何も得ていないため、いつか現実とのギャップで自壊する。

それにイメージトレーニングの結果が良すぎると現実でそこそこの結果を出せても「思ったより伸びなかった」となってしまい、逆にやる気が失われてしまうのだ。

趣味で創作をやっている人でも「せっかく完成させてネットに投稿したのに思うような反応がもらえなかった」という理由でモチベを失い、描くことをやめてしまう人は多い。

しかし「反応がもらえなかった」という不満は「これだけ反応がもらえるだろう」という想像をしてしまったせいで起こっているので「完成させて投稿する」までをゴールとしておけば、そんなガッカリは発生しなかったし、1件でもいいねがつけば「想像以上の成果」としてやる気が上がったはずである。

ちなみに良い想像をしすぎるのも良くないが「こんな問題作を発表したら大炎上して、秒で住所が特定され卒アルが晒される」などの悪い想像もあまりお勧めしない。良くも悪くも結局「大反響」を想像してしまっているため「無反応」に耐えられなくなる。

もちろん私も良すぎる想像は得意であり、私ほどのベテランになればまだ存在していない自分の作品のアニメ化を想像するなど朝飯前だ。

ちなみに年を取ると「想像だけで満足する」を超えて「想像だけで疲れて寝る」ようになる。

良い結果を想像するのも大事だが、非現実的なことを考えている間にも、何故か現実の時間が経過していることも忘れてはならない。

「ハクマン」第114回

(つづく)
次回更新予定日 2023-09-10

 
カレー沢薫(かれーざわ・かおる)

漫画家、エッセイスト。漫画『クレムリン』でデビュー。 エッセイ作品に『負ける技術』『ブスの本懐』(太田出版)など多数。

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