ハクマン 部屋と締切(デッドエンド)と私 第167回

しかし、新人賞応募や持ち込みをして、担当がつくまでの苦労は漫画家志望者特有のものかもしれないが、その後の「いくらネームを出しても通らない」は漫画家になってからも続く行き詰まりであり、そのうち編集者からの返信が来なくなるのも、漫画家志望者だけの特権ではない。
だが、漫画家よりも漫画家志望者の方が過酷なんじゃないかと思える点もある。
まず、デビュー前の漫画家志望者には「締切」がない。
当たり前のことすぎて書くのを忘れていたが、この原稿も「今日が締切だぞ」という催促を受けてから書き始めているし、勝手にやってきた締切にキレている。
私は漫画家になって以来、ずっと締切にキレ続けているが、締切があるからこそ漫画家でいられるとも思っている。
「漫画家でいられる」というのは「原稿を完成させることができる」という意味だ。
漫画家志望なのに漫画を完成させたことがない、というのはよく聞く話だが、締切がないのだから完成しないのは当然だろう。私だったら少なくとも二親等以内の親族が人質に取られていない限り完成する気がしない
漫画家になってから締切を破ると休載扱いとなり、雑誌の場合は代原というかたちで、別の漫画が掲載される。
先日、久しぶりに「原稿落とした奴がいるから、お前の原稿を使いまわしで載せる」という連絡があった、昔はこういう他の作家が爆発したことによるクレーターを埋める仕事をよくやっていた。
誌面は確認していないが、おそらく「特別出張掲載!」みたいな文言で載っていたのだろう。だが実際は「○○が落としたおかげのごっつぁん掲載!」なのである。
つまり漫画家は締切を破ると、その分の収入はもちろん、信用も居場所も失いかねないので漫画家でい続けたければ何とか完成させるしかないのだ。
漫画家志望者には、そういった強制力がないため、原稿を完成させることに関しては漫画家よりも難しいと言えるし、やっと完成させた原稿が受賞など、日の目を見るとも限らない。
それを何回も繰り返していたら、志望者の内は病むなというのも無理な話になってくるだろう。
しかし、漫画家を諦めることになったとしても悲観することはない。むしろ確で体調を崩すような世界に入らなくて良かったと言える。
漫画家を諦めることは「挫折」とは言わない。「生還」が正しい。

(つづく)
次回更新予定日 2026-9-9
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