【熱狂的なファンが多い作家】太宰治のおすすめ作品5選をご紹介
戦前から戦後にかけて活躍した昭和を代表する文豪の一人である太宰治。今回は読んでおきたい、太宰治のおすすめ作品5選を紹介します。
青森の裕福な家庭に生まれた太宰治。戦前から戦後にかけて活躍した昭和を代表する文豪の一人です。女性関係や複数回の自殺未遂、薬物中毒などスキャンダラスな話題でも注目を集めていました。『火花』で第153回芥川賞を受賞した又吉直樹も最も影響を受けた作家は太宰治だと公言しています。今でも熱狂的なファンが多い、太宰のおすすめ作品をご紹介します。
斜陽
出典:http://www.amazon.co.jp/dp/4101006024
上流階級の家族が没落していく様子を描いた作品です。発表後間もなく作品はベストセラーとなり、小説に登場するような上流階級の人々を指す斜陽族という流行語も生まれました。
戦時中、貴族出身の主人公のかず子、母親と2人で暮らしていました。戦後、GHQによる財閥解体がなされ、かずこは東京の自宅を売却し伊豆で暮らすようになります。戦争から帰ってきた弟は、家のお金を持ち出しては東京へと出かけています。ある日弟を訪ねて行った東京で、かずこは妻子持ちの男性と運命的な出会いをして…。最後には「自立」を誓う主人公の姿などに、たくましさを感じるストーリーとなっています。
御伽草子
出典:http://www.amazon.co.jp/dp/4101006075
昔話にもある有名な童話をもとにした4つの短編、『瘤取り』『浦島さん』『カチカチ山』『舌切雀』が収録された短編集となっています。どの物語もストーリーは原作と同じようなものですが、設定が少し変わっています。『こぶとり』では、2人のおじいさんのキャラクターが変わっていたり、浦島太郎をもとにした浦島さんでは、竜宮城の描き方が変わっていたり、玉手箱の結末も昔話とはだいぶ違うものになっています。昔話の結末に納得のいかない部分を、太宰なりの物悲しさを含んだ解釈で書き換えています。大人が読むのにふさわしい内容となっているところが特徴的です。
女生徒
出典:http://www.amazon.co.jp/dp/B000JA3ZQW
『斜陽』と同じように、女性の独白というスタイルで書かれている作品です。主人公は、御茶ノ水の女子校に通う少女。主人公が朝起きてからの1日を通して、思春期の少女の揺れ動く気持ちが細かく描写されています。過去や未来、不安と希望がごちゃ混ぜになり、ころころと移り変わる少女の心の中を覗いているような感覚になります。思春期の少女の気持ちを淡々と描くという構成で、ここまで読み応えのある作品に仕上がっているところに太宰の突出した才能が感じられます。
満願
出典:http://www.amazon.co.jp/dp/B009IY4XFC
酒に酔って足に怪我をした主人公は、病院で治療を受けます。そこで病院の先生と意気投合し、それから毎日のように先生の家に通うようになります。先生の家の縁側で目にした何気ない風景が描かれるというシンプルな構成となっています。数ページのとても短い作品で、登場する人物やシーンも少ないですが、随所に印象的な文章がちりばめられています。言葉選びのセンスはさすがで、テンポのいい文章運びでさらに引き込まれます。日常の何気ない風景が見事な情景描写で表現され、ふと景色が浮かんできて心に残ります。
晩年
出典:http://www.amazon.co.jp/dp/4101006016
『葉』『道化の華』『猿面冠者』『思ひで』など15の短編が収められている短編集です。第一回芥川賞の候補作ともなりました。太宰自身の語りで構成されるものから、時代物のフィクションなど様々なジャンルの作品が収録されています。『道化の華』は、妻の浮気を知らされた太宰が、自殺を前に書いた遺書のようなものだと言われています。女と心中して自分だけが生き残ったという設定の主人公。療養所で過ごす主人公と見舞いに来た友人たちとの会話がユーモアを交えて描かれます。文章の歯切れが良く、とても読みやすい作品です。
最後に
太宰は1948年に、自宅近くの玉川上水で愛人と入水自殺をして亡くなりました。自殺未遂などの影響で暗い作品というイメージを持たれる太宰作品ですが、ユーモアを取り入れたものなどバラエティに富んだ作品を多く遺しています。日本を代表する作家の名作をぜひ読んでみてください。
初出:P+D MAGAZINE(2016/12/17)