モーリー・ロバートソンが語る、「ぼくたちは何を読んできたか」①その青春の軌跡 モーリーのBOOK JOCKEY【第2回】
冬が始まり、みぞれが降る一歩手前の頃合いで、あの才女にまた出会った。路上の出会いだった。才女も休学し、アルバイト生活をしていた。
ギンズバーグに触発され、ビート文学の源流を訪ねてアメリカ西海岸に移住した才女は、同じ志を持つ同年代の若者たちとルームシェアし、ドラッグを摂取し、自由に性交し、路上を徘徊し、旅した。だがドラッグには楽しいだけで無害なものもあれば、危険度の高いものもあった。才女はアルバイトをしていた会社の上司と不倫し、その後別れた。知り合いと山に登りLSDを服用し、人事不省となった状態で放置され、裸で朝まで山をさまよい歩くなどかなり危険な目にも遭い、別の男女関係で傷つき、同居していた親友は麻薬に酩酊した状態でボーイフレンドと喧嘩し、路上の石で殴打されて死亡。裁判になっているところだった。元祖ビートニクからビートを受け継ぐという夢が破れていた。
「君、若いのに才能があるね。すごいよ、この表現力は」「天才じゃないの?」「いや、天才でしょう」と持ち上げられ、そのつもりになって全力投球し、なぜかその結果過ちを犯し、汚れ、PTSDを患う二人は、そのまま22歳の恋人同士になって付き合うことになった。
ハーバード大学を休学中の才女はカリフォルニアの行脚から戻り、身も心も癒すべく、数多くの本を読んでいた。その中でひときわ傾倒していた著者の一人がカルロス・カスタネダだった。
<第3回につづく>
日米双方の教育を受けた後、1981年に東京大学に現役合格。1988年ハーバード大学を卒業。国際ジャーナリストからミュージシャンまで幅広く活躍中。現在は「Newsザップ!」(スカパー!)、「所さん!大変ですよ」(NHK総合)にレギュラー出演のほか、各誌にてコラム連載中。
初出:P+D MAGAZINE(2016/01/19)