【MARUZEN&ジュンク堂書店渋谷店】図書館に負けない快適さ!~この本屋さんがおもしろい~Vol.4

連載Vol.4は、渋谷にある本屋さん、「MARUZEN&ジュンク堂書店渋谷店」を紹介。比較的新しい書店ですが、そのアイテム数の多さからいつも大勢のお客様で賑わっています。書店員さんへのインタビューにも“こだわり”が詰まっています!

ここが強み、と言えるのは、アイテム数の多さ

渋谷店の開業は2010年と、まだ比較的新しい、「MARUZEN&ジュンク堂書店渋谷店」。
その屋号の由来は、起業した工藤恭孝代表取締役社長の父親が工藤淳さんであったため、その名前を逆にして(淳工藤)、“ジュンク堂”となったとのこと。

そんなユニークな由来を持つ「MARUZEN&ジュンク堂書店」、渋谷店の注目すべきところは、そのアイテム数の多さ。
とにかく豊富な品揃えが特徴で、その陳列方法にも工夫が凝らされている点です。

「他社さんに負けない、本の数が揃っていると思います。まるで図書館のようだとよく言われるのですが、書架に陳列することで、多くの本を、探しやすい形で見せることができていると思います。」

書架

そう語るのは、文芸書担当の、勝間準さん。
日々、本を売るために、どんな工夫をされているのかを伺うと、

「フェアは月に1回のペースで実施します。世の中の動きをよく見て、何が求められているのか、何が売れそうか予測を立てて、それぞれのジャンルの担当者がアイディアを出し合い、企画を立てて実施します。」

文芸書担当として、「これが売れる」という感触があるのは、どんな本なのでしょうか?
「渋谷店では、翻訳ものがよく出ます。チリの作家、ロベルト・ボラーニョの『2666』や、世界の文豪の全集など、割と高額なものが多いですね。」

たしかに、店内を見渡すと、重厚かつ荘厳な雰囲気を醸し出す、全集などの高価な書籍がズラリ。

文学全集棚

「都内でも、ここまで(全集の)品揃えが豊富なところは、なかなか無いと思います。専門書の取り扱いも豊富ですよ。」

渋谷店は、客層としても年齢層が高いため、専門的な書籍を買い求める人が多いそう。

「お探しのものが見つけやすいように、そして手にとっていただきやすいように、ということを心がけて陳列しています。」

お客様の中には、こだわりの強い方も多く、文庫が出ている作品でも、単行本で欲しい、というリクエストも多々あるといいます。
「欲しい、という声がある本は、必ず用意します。欲しい本が手に入る書店、と思っていただけることがとても嬉しく感じるので、品揃えに関しては自信を持っています。」

各ジャンルの担当者がいるので、探しものが見つからない、などということもほとんどないのが強み。

勝間様おすすめ01

常連さんが多く、個人的に質問を受けることも多いそうで、
「何か面白い本はないか、と質問されることもよくあります。たびたび電話でのご質問を受けますね。そのようなお客様からのリクエストにお応えするためにも、日々情報をアップデートするように努力し、できるだけたくさんの本を読むように心がけています。」

勝間さんがかつて勤務していたのは、駅の横にある書店だったそうで、その立地の違いからも、本の売れ方は全然違うと言います。

「新刊が出たときの、動き方が全然違いますね。新刊ばかりが伸びると思っていたらそれは違っていて、たとえば新聞の書評に載ったりした作品にすぐ反応が出ます。新聞やネットの情報によって、売れ行きが大きく変わってくるので、常に情報収集のアンテナを張るようにしています。」

まさに、日々の努力。
そんな勝間さんに、「渋谷店で一番売れた(売った)本は?」と伺ってみると、

「渋谷店で一番売った本は、コミックエッセイで、『わたしの舞台は舞台裏 大衆演劇裏方日記』(メディアファクトリー)という作品。私自身が、コミックエッセイ大賞の選考委員をしていたこともあり、全面にそれを押し出して、レジ前に積んで展開したんです。結果、1ヶ月に60冊くらいは売れました!」

わたしの舞台は舞台裏_書影
https://www.amazon.co.jp/dp/4040667999

書店員として心がけていること

「笑顔。これに尽きる気がします。」
当たり前のことを、しっかり行うこと。
これが、接客業としてのモットーであると、勝間さんは言います。

「書店員に限ったことではないと思っているのですが、ありがとうございます、と、心からお伝えすることは、接客業として本当に重要なことだと考えています。」

そんな心のこもった接客が、常連さんなどに喜ばれる秘訣なのでしょう。

「しょっちゅうお見かけする方とは、面白かった本についての情報交換をしたり、コミュニケーションを取るようにしています。」

親しみやすい接客が、リピートしたくなるポイントになっているのかもしれません。

そんな勝間さんに、「青春の一冊は何ですか?」と質問。

「米代恭(よねしろきょう)さんの、『あげくの果てのカノン』です。コミックなのですが、設定や、ストーリー展開がとてもエキサイティングで、どんどん引き込まれてしまいました。帯には、『コンビニ人間』で芥川賞を受賞した、村田沙耶香さんの推薦コメントが入っているんですよ。」
ぜひ読んでみたい、注目の一作です。
勝間様おすすめ02

日々たくさんの本に接している勝間さんが、本を好きになったのには、どのようなきっかけがあったのでしょうか?

「もともとは、そんなに本を読む方ではなかったんです。書店に勤める前は、スーパーで
働いていて。最初は漫画くらいしか読みませんでしたね。ところが、ある時、西尾維新の作品を読んでみたら、ハマってしまって。魅力的なキャラクターたちや、世界観に魅せられました。今では、月に小説10冊、コミックは30冊くらいは読みます。食にまつわるエッセイなども大好きですね。」

文芸の担当になってからは、文芸の勉強も日々重ねているそうで、作家との交流も仕事の醍醐味のひとつだといいます。
「現代の作家さんだと、西加奈子さんのファンです。作家の方とはお話する機会もよくあるので、その素顔に触れることも多くて、お会いしてますますファンになるパターンが多いかもしれないですね。」

作家や、出版社の人との交流を通じても、面白い本に出会うことはとても多いそうで、
「今後も、面白い作家の方や作品に出会ったら、トークイベントをしたいです。
サイン会だと、どうしても、長くお話を聞く事はできないですが、トークイベントだと、
作家の方と共有できる時間が長いので、お客様にも楽しんでいただけると思うんです。」

イベントスペースとしても活用されている、喫茶エリアがあることも、MARUZEN&ジュンク堂書店渋谷店の売りのひとつ。

「静かに読書をするのに最適なスペースです。ゆっくり飲み物を飲みながら、くつろいで欲しいですね。」

おわりに

最後に、勝間さんにとって、本屋さんとはどんな場所か、を一言で表していただきました。

「楽しみが詰まっている場所。漫画をよく読んだ子供時代などは、新刊の発売日ともなると大急ぎで駆け込んだものです。これからも、ここから楽しさを発信していければと思っています。また、アマゾンのリコメンド機能などにはない、本と直に出会える場所でもあると思いますね。」

お客様の事を第一に考えながら、数多ある本の魅力を引きだそうと日々努力を重ねる勝間さん。そのインタビューを通じて感じたのは、「お客様のリクエストにとことん応える姿勢」がとても大切だということ。これからも、プロの目線で面白い本を発掘し、その魅力を目一杯引き出していってくれることでしょう。

【DATA】
店舗名:MARUZEN&ジュンク堂書店渋谷店
住所:東京都渋谷区道玄坂2-24-1 東急百貨店本店7階
電話:03-5456-2111
休日:元日
アクセス:JR、井の頭線、東急線、東京メトロ、渋谷駅徒歩10分

初出:P+D MAGAZINE(2016/12/07)

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