【超主観的な快楽・恋愛観…】本好き美女が、江戸川乱歩『人間椅子』を読む。|文芸女子#2

本が大好きな美女をクローズアップ!江戸川乱歩のディープな世界にすっかりハマってしまったという「佳世」さんに、『人間椅子』を読んでもらいました。彼女がこの作品から得たものとは?「佳世」さんのフォトも盛り沢山です。

本が大好きな美女をピックアップする「文芸女子」のコーナー。
第2回目に登場いただくのは、江戸川乱歩の作品が大好きな女子大生の「佳世」さん。
一度ハマったら抜け出せないディープな江戸川乱歩の世界の虜となっている佳世さんに、『人間椅子』を読んでもらいました!

本が大好き、佳世さんをCLOSE UP!

佳世さんプロフィール写真

ー自己紹介をお願いします。

みなさん、はじめまして。別名「乱歩女子」の、佳世です。
長崎県松浦市出身で、1993年7月17日生まれ、蟹座の22歳です。
血液型はB型。どうぶつ占いでは「オオカミ」で、サービス精神が旺盛な性格。
趣味は猫カフェ巡りで、休みの日には大好きな猫と戯れによくお店に行きます。

ー好きな作家さんはいますか?

好きな作家はもちろん、江戸川乱歩。
その世界観に浸りながら、じっくり読書している時間が最高に幸せです!
他にも、谷崎潤一郎が大好き。耽美的な文章に心を奪われて、よく読むようになりました。

ー最近のマイブームはなんでしょうか?

読書はもちろん一番の趣味なのですが、マイブームは東京散歩。
九州の出身なので、東京の街のすべてが新鮮に感じるんです。どの街にも、それぞれの魅力が溢れていて、刺激的に感じますね。
読む本を選ぶ時には、本好きな友人に、おすすめの一冊を推薦してもらって、それを読むことが多いです。

ーインタビューより

佳世さん写真

一度読み出したら止まらないくらい、江戸川乱歩の作品が大好きな佳世さん。
何もかもを忘れて乱歩の世界に没頭しているときが、至福のひとときだそう。

文学をこよなく愛する佳世さんが書いた、『人間椅子』の感想文を、ぜひ読んでみてください。
作品の魅力が、手に取るように伝わってきますよ。

江戸川乱歩「人間椅子」を読んで

私にとってこの作品の主題は「超主観的な快楽、恋愛観」です。

快楽も恋愛もそもそも主観的で個人的なものですが、現在の私たちの快楽、恋愛観はいつのまにかある程度のレベルで均質化されてはいないでしょうか。「私自身にとっての私自身のための快楽、恋愛観は本当に今思い描いているものとマッチしているのだろうか。」江戸川乱歩先生の短編小説「人間椅子」は、そんな小さな自問自答を、登場人物への感情移入や物語の意外性とともに楽しめる作品です。

「人間椅子」少し不気味さを感じさせる作品名ですよね。私がまずこのタイトルを聞いてはじめにイメージした物語は、「解体した人の体を使って家具を作る殺人鬼が登場する推理小説」でした。この憶測の段階で既にかなりの奇怪さを覚えますが、実際のストーリーは私の憶測よりもはるかに奇怪で、衝撃的なものでした。

この物語には「椅子の中に隠れて入り込んだ椅子職人が、椅子越しの感覚から甘美な恋の世界にのめり込む姿」が描かれています。「人間椅子」とは「人間でできた椅子」ではなく「人間が潜り込んだ椅子」なのです。この椅子職人は身を潜めた椅子の皮越しに感じるぬくもりや柔らかさ、においによって人間を感じ、愛したのです。

この物語はまず、外務官の妻であり人気作家の佳子のもとに、ある不気味な手紙が届くところから始まります。そこには見知らぬ男からのとある告白とお願いが綴られていました。その内容は、椅子職人が奇怪な恋に目覚め溺れ、さらなる願いを抱くようになったというものでした。その内容の気味の悪さに恐怖する佳子の元に同じ送り主から追加でもう一通の手紙が届き、物語は終わります。そして、静かな不気味さと奇怪さが強く印象に残ります。

「素敵な笑顔」、「スタイルのよさ」、「着ている衣服」・・・私たちは普段誰かに相対した時、目で見た情報を頼りに相手の印象を作っていくことが多いのではないでしょうか。確かにその人の声を聴く聴覚、香りを感じる嗅覚、触れて感じる触覚も相手の印象を形作る大切な要素ではありますが、視覚からの情報への依存度がとても高いように思われます。この人間椅子の椅子職人が触覚に特化した甘美な世界に溺れていく姿は私たちに視覚以外の感覚を研ぎ澄ますことの魅力を感じさせてくれます。私たちが普段接している相手も視点を変えたり、感じ方を変えれば、普段の印象とは全く異なるものを感じられるのではないかと不思議な期待を覚えます。

一見、椅子職人の趣向や行動の不気味さが強く印象づけられがちですが、彼のこの大変個性的な愛し方から、私は恋の形や愛の形の自由さ「主観的な恋愛観」へのヒントをもらえたように思えました。

そして、この椅子職人が自身の奇怪な快楽の世界を手紙という形で告白するという文章の構成によって、私たちはこの物語をぞくぞくする期待と恐怖を楽しみながら読み進めることができます。さらに、30分ほどで読み終えてしまうことができる短編なので、ちょっとした空き時間にもおすすめです。是非一度読んでみてください。

佳世さん写真

終わりに

佳世さんの読む、江戸川乱歩「人間椅子」の感想はいかがでしたか?
佳世さんがこの作品から得た「恋愛観へのヒント」は、とても新鮮な“気づき”だったようですね。

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初出:P+D MAGAZINE(2016/01/28)

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