『教室のゴルディロックスゾーン』刊行記念イベント 彩瀬まる×こざわたまこ 特別対談

読者を信じる
山本
僕、帯に「最高の少女小説が誕生した」って書いてしまったんですが、それだけじゃないよねってお話ししていたことも伺いたくて。
彩瀬
少女小説って言葉は間違っていないし、強いフックにはなるんですけど、この作品は、それぞれの世界や物事の考え方から安易に逃れることのできない人間が、孤独だけどどうやって生きていくか、という話だなと思って。あらゆる人に刺さる内容だと感じたので、少女ってイメージが強く出過ぎるともったいないような気もしました。
こざわ
難しいですよね。私自身、自分の小説が何小説なのかわかってないという……。今回たまたま、主人公が少女だったんですけど、今まで書いてきた話と芯はかわってなくて。少女小説って名付けていただいて、それを入り口に読んでくださる方がたくさんいると思うから、すごく嬉しいことなんですけど、私は今まで、やさしさや愛着を持って少女を書いてきた作家ではないと思うので、そこを蔑ろにしてきた申し訳なさみたいなところもあって……。
彩瀬
いや、蔑ろにはしてないし、少女っていうカテゴリーやラベルにこだわりの深い人はたくさんいるから、別にそれをやらなくていいと思う。
こざわ
そうですよね!
彩瀬
そこは分業すればいい……! でも、新しい女の子たちの描かれ方がしたなって、とても気持ちよかったです。初めて学生ものに共感できました。
こざわ
ありがとうございます。私は家族などのバックボーンが、自分の生み出す言葉に結びついているのを実感として持っている人間なので、今まではそういうものを書いてきました。でも、人間っていろんな要素でできているから、そうじゃない部分も書きたいなと思って書いていました。彩瀬さんの少女小説や学生ものも読んでみたいです。
彩瀬
私は転校が多い子どもだったので、クラスのヒエラルキーが読めなかったんです。みんながそれぞれ機微をくみ取るっていう回路がきちんと形成されなかった。だからうかつに学生ものに手を出したらやけどすると思って、手を引っ込めてるんです(笑)。でもこうやって思うのは、小説で書けることって本当にものすごく広いんだなということ。まだらでカオスなことが書けるし、そういうカオスなものを提示しても、きっと読者さんは受け止めてくれるんだろうなって思いますね。
こざわ
そう、だから読者さんをやっぱり信じるべき。
彩瀬
そう! 読者さんを信じなきゃいけない。我ら臆病になってはいけない。
こざわ
私、いつも〝嫌われちゃう〟って思いながら書いているんですよ。現実をその感覚で生きているから、せめて小説の中では嫌われたっていいじゃないかというのを書いているんだと思うんです。
彩瀬
小説って、実際はしんどいかもしれないけど、小説の中だとこの人好きっていうのもあるじゃないですか。
こざわ
うん、ありますね。
彩瀬
そういう許容が発生するゾーンだから。自分の見せていない領域を小説でだけは書けるって人もいますし、次の本もどんどん変わっていくんですね。
こざわ
だといいな……(笑)
イベントではこちらの記事に載せきれないほど、
お二人にたくさんのことをお話しいただきました!
イベントの雰囲気を少しでも楽しんでいただけましたら幸いです。
ご覧くださりありがとうございました!