ハクマン 部屋と締切(デッドエンド)と私
漫画家・カレー沢薫による連載毒舌エッセイ。
例によってまた催促を受けてこの原稿を書き始めたのだが、例によって書くことはない。思えばこの連載は9割締め切りと担当への怨嗟、そして書くことがないという内容で構成されている。しかしそうなるのは当然であり、正直この連載は他のコラム連載の中でも群を抜いて書くことがない。他の連載はそれでも毎回テーマ的なものが投げてよこされるのだが、
数日前に税理士から確定申告が完了したので決算書などを取りに来いとの連絡があった。確定申告提出の締め切りは3月15日なので、締め切りの10日前に提出どころか全てが終わっているという状況だ。漫画で言えば、締め切りの1年前に原稿を提出し、掲載の半年前にネットに全部流出するぐらい仕事が早い。片や今、この原稿を催促を受けてから書
そろそろ催促が来るだろう、と思いながら今この原稿を書いている。いつもは来てから書いているので今回は著名人が死んだときのウィキペディアンぐらい仕事が早い。毎回催促を受けて「今からやろうと思ってたのに、完全にやる気なくしたわ」と部屋が汚い中学生ムーブをする前に書けば良いのではないか、と思うかもしれない。しかしこの仕事は余裕
そろそろ確定申告の時期だ。そう言いたいところだが「3月10日以降」を確定申告の季節と定めている作家も珍しくない。そのタイプにとって2月、まして1月から確定申告の準備を始める人間は、銭湯に行くのに家を出る段階から全裸になっている奴みたいなもので、通報した方が良いか迷うレベルの変態なのだ。しかし一般的に見れば先手全裸の方が
最近漫画編集者の Twitter アカウントが炎上したらしい。だが、私は当該ツイートを見ていない。何回かそれと思しきツイートは流れて来たが、スマホを窓から大遠投するなどして意識的に見ていない。何故なら私は基本的に編集者の口から出たというだけで何を言っていても怒るからだ。例え内容が「猫は神」という宇宙の真理だったとしても
これを書いているのは1月5日であり、この日から「仕事はじめ」という会社も多いと思う。私のところにもすでに、原稿の催促が3件、そして請求書を出せというメールが1件届いている。つまり作家にとって仕事はじめの日に仕事をはじめるのは、全裸になってから風呂に湯を張り始めるレベルの手遅れということだ。しかし誰でも年に一度ぐらいは全
もう年末だが、今年も特に何もなくただ肉体が1年老いただけだ。そう言いたいところだが、私は最近自分に「老化」の才能があることに気づいた。今年四十路になったのだが、どう見ても五十路、下手をすると還暦まで飛び級してしまっている。大器晩成というように、人間は死ぬまで成長期、まだ見ぬ才能にあふれている、おそらくあと数年もすれば「
昨日は2時間ぐらいしか寝てない。令和にもなって睡眠不足自慢とな?と驚愕されている方も多いと思うが、これが最近流行りの平成レトロというやつだ。しかし今日の日本には睡眠時間が短いことを嘆きながら顔のパーツを中央に寄せているやつが大量に出没していることだろう。これを書いている日の深夜0時より、ワールドカップの日本VSクロアチ
前回部屋にG(ゴリラ)が出現したことにより、部屋の掃除が急務となり、そのどさくさで古いPCを搬出し、新しいPCの導入に成功した。名作ギャグマンガ「稲中卓球部」に寝ている女のパンツを起こさないように脱がせる「パンツ職人」というのが登場したことがある。手練れのパンツ職人にとって相手の「寝返り」はピンチではなく様々な摩擦に乗
漫画家になって十数年、他の作家と交流することはほとんどなかったが、Twitterのボイスチャット機能に依存するようになってから、漫画家と話す機会が増えた。そこでわかったのは「漫画家は9割心療内科に行っている」ということだが、スタンド使い同士が惹かれあうように、たまたまそういう作家が集まってしまっただけだろう。「家にトレ
今年もあと3ヶ月である。毎年こう言ってため息をついている人間は時間が無限にあったとしても何も成し遂げないので安心してほしい。そもそも何を成し遂げていようと時間は流れるのだ。時間の流れを筋肉で止めることができるというなら、今年がすでに3ヶ月しか残ってない奴は筋トレ不足だったとして反省の余地がある。だがきんにくんの今年だっ
サインが終わる前にサインが始まる。ついに俺のスピードがコブラを超えてしまった。そう思ったが、どうやら周回遅れだったようで、コブラ君と教室に戻ろうとしたら、お前はもう一周と先公に言われてしまった。私は自著が発売するたびにサイン本を書くのだが、先月は2冊発売したため、1冊目のサインが終わらない内に2冊目のサイン本が到着して
防災省もドン引きの大型台風14号がやってきた。我が故郷は他の都道府県から忘れられているのはもちろん、住んでいる者さえ時々自分がどこに存在しているのか見失うレベルの地味県である。しかし、今年は4,630万円誤振込を皮切りに、甲子園で準優勝、その快挙の裏で私の集落は野生の猿に住民が60人以上襲われ、危うく村が滅びかけたりと
先日久しぶりにS学舘から漫画の新刊が出た。この媒体もS学舘なので伏せる必要はないのだが、S学舘のSがシットのSを表しているのはあまりにも有名なので一応伏せさせてもらった。編集に指摘される前から、コンプラを意識するのが令和のデキる作家である。ちなみにシットはもちろんファッキソガッデムシットのシットだ。開始から学びの宝庫…
現在私は漫画をフルデジタルで描いているのだが、デビュー当時はネームを紙に書き、それをファックスで送っていた。つまり私は団塊ジュニア世代で8050問題の50側、80サイドを担当してくれる年金受給者をメン募中、ということになるのだが、実際は団塊ジュニアに魚民で説教されているぐらいの年齢である。よって私がデビューした時にはネ
近い将来人間の仕事はAIに奪われるらしい。そんなものはくれてやれとしか思わないが、どうやら「AIに仕事を奪われ、お前らは餓死する」という脅しの意味らしい。そうだとしたら、人間が困ったことになるとすでに予想されているものを何故一生懸命開発しているのか。人間の仕事がなくなるということはそれだけ税金の世話になる人間が増えると
「小栗くん童貞だったことある?」これはあまりにも童貞の気持ちがわかっていない、小栗旬に対して発せられた名言である。確かに小栗旬ともなれば生まれた時から童貞じゃなかった可能性は十分にある。しかし、我々は皆生まれる時に女性器を通過しているのだ。しかも、体の一部を入ったかと思ったら出す、どっちつかずな態度を取り続けた上に「や
こう見えて私も日本漫画家協会の一員である。そう書いたところで今年度の会費を払っていないことに気づいて払いに行った、危うく一員じゃなくなるところであった。しかし漫画家協会の会費の支払い期日は4月1日から3月31日までなのだ。つまり今年度の会費は今年度中に払えば良いというガバガバビッチ締め切りなのである。さすが、漫画家協会