【栃木県民マンガ】負けるな!ギョーザランド!! 第7回 夢のコラボだ!金次郎とギョーザが合体!? まんが/いちごとまるがおさん 監修/篠﨑茂雄

郷土のヒーロー・二宮金次郎と、郷土を代表する食べ物・ギョーザ。このふたつがなぜこんなにも有名になったのか、チャオズとイチマルが明らかにする! 宇都宮ギョーザの味の決め手、栃木のニラがおいしいわけも大公開するぞ‼

ギョーザランド第7回バナー

いっとき、大ブームとなった食べるラー油。
発祥の地は石垣島で、香ばしくて食欲をそそると評判をとった。
しか~し、栃木には〝これぞ栃木〟という〝かける食品〟がある。
「ご飯にかけるギョーザ」だべ
で、実際に食べてみっと、まんま餃子。
たれのなかに落ちた餡そのもの!
ご飯にのせっと、餡とご飯とがダイレクトに絡まりあい、
ひょっとすると皮つきの餃子よりも
ご飯との相性はいいかもしれねぇ
栃木のオリジナリティは、ここでも発揮されているのだ!

マンガ中の記号(※1)などは、マンガのあとに出てくる用語解説「餃子国の歩き方」の番号と対応しています。

ギョーザランド第7回漫画1
ギョーザランド第7回漫画2
ギョーザランド第7回漫画3
ギョーザランド第7回漫画4
ギョーザランド第7回漫画5
ギョーザランド第7回漫画6
ギョーザランド第7回漫画7
ギョーザランド第7回漫画8
ギョーザランド第7回漫画9
ギョーザランド第7回漫画10
ギョーザランド第7回漫画11
ギョーザランドの歩き方 ロゴ

(※1)二宮尊徳

ギョーザランドの歩きかた1

 江戸時代後期の人物で、一般的には「金次郎」で通っているが、「金治郎」が正しいらしい。尊徳は諱(いみな。限られた人だけが呼ぶことが許された実名)で、正式には「たかのり」だが、「そんとく」と呼びならわされている。その尊徳は、窮乏する村々の経営を立て直したことで知られ、故郷の小田原だけでなく、長く住んだ栃木でも郷土のヒーローとして尊敬を集めている――なんてことは、栃木県民だったらみんな知ってるよね?

 数度にわたる洪水で家や田畑が流され、貧しい暮らしをしていた尊徳は、荒れ地を開墾して菜種や苗を植え、そこから得た収入で田畑を買い戻す――ということを地道に繰り返して、生家の再興を果たした。その手腕を買われて、小田原藩家老の家の再建を任されると、これに成功。次いで小田原藩主の分家・宇津家の所領であった桜町(現在の栃木県真岡市)の再興を任される。

 尊徳が主導した改革は「報徳仕法」と呼ばれ至誠(まごころを尽くすこと)、勤労(社会の役に立つ成果を考えながら働くこと)、分度(自分の立場に合った生活をすること)、推譲(勤労と分度で生じた余剰の一部を子孫や社会のために譲ること)の4つの考えは、荒廃にあえぐ多くの農村を救った

 晩年は幕府に召し抱えられ、日光山領の仕法を命ぜられた。県内には、二宮堰(宇都宮市)や二宮堀(日光市今市など)の灌漑施設、神社(日光市今市の報徳二宮神社や真岡市の桜町二宮神社)、地名(真岡市二宮)などにその名が残っているので、栃木県にお越しの際はぜひチェックしてくろ。

 尊徳は担当するエリアを精力的に歩き回ったが、そのエネルギー源は呉汁。大豆をふやかしたものをすりつぶし、みそ汁に入れたものだ。いろんな地方で郷土料理になっている呉汁はたんぱく質が豊富で、プロテインを飲んでいるようなもの。身長180㎝の大男だったと伝えられる尊徳の元気の源はこれだった!?  以前はどの小学校にもあった薪を背負って歩く像が撤去されつつあるそうだけど、渋沢栄一、松下幸之助、御木本幸吉、稲森和夫……と、そうそうたる経営者に影響を与えた尊徳の教えは、このまま風化してほしくねぇなぁ。

(※2)鬼怒テクノ通りと宇都宮北道路

ギョーザランドの歩きかた2

 栃木には、一般道なのに猛スピードでかっ飛ばしても、警察に捕まらない道路がある。え、ヤンキーが暴走してるだけだろうって? チッチッチ、合法なのだよ。

 かねてから一般道の最高速度に関して研究を重ねていた警察庁は、2009年に立体交差、上下線分離など危険性が少ない道路について、規制速度を70km/hないし80km/hとする指針を策定。で、2012年、高速道路並みに整備された鬼怒テクノ通り(真岡市~宇都宮市)が、最高速度80km/hとなったのだ。

 でもこれは日本で2例目。じゃあ最初はどこかってーと、やはり栃木県の宇都宮北道路(宇都宮環状道路~東北自動車道宇都宮IC)だ。警察庁が速度制限の上限を上げる前の2005年から最高速度80km/hに。すげーな、栃木。

(※3)餃子のまち

ギョーザランドの歩きかた3

「浜松が宇都宮に勝った」「今度は宮崎がナンバーワンだ」とかまびすしいが、王者・宇都宮は、統計の数字なんかに揺るがねぇのだ。

 日本で最初に餃子を食べたのは茨城県人の徳川光圀だとか。光圀はラーメンも最初に食べたというから、よっぽど新し物好きだったんだろうな。その点、二宮尊徳に倣って、質実剛健を旨とする栃木県人は、そんなに浮ついてはいないぞ。

 それはともかく、知る人ぞ知る存在だった餃子が市民権を得たのは戦後のこと。中国で戦っていた兵士が復員すると、各地で餃子づくりを生業にする人が続出する。とくに宇都宮に師団司令部を置いた第14師団は、餃子の本場・中国東北部を転戦していたので、日本に戻ってから餃子にかかわる人が多かったらしい。

 でも、宇都宮を餃子のまちにしたのは、市のとある職員。総務省「家計調査年報」の「ギョーザ購入額」で宇都宮市が常に上位に入っていたことから、「餃子で町おこしを」と提案したのだ。その後、業界団体「宇都宮餃子会」が発足し、官民一体でPR活動を繰り広げた結果、「餃子は宇都宮」というイメージができあがったわけ。

 浜松や宮崎がいくら「うちの勝ちだ」といっても、そもそも総務省統計の端っこのほうに記載されている「ギョーザ購入額」をクローズアップしたのは宇都宮。いわば、浜松や宮崎は宇都宮の掌の上で戦っているようなものなのだよ。え、違う? まぁいいじゃんか。

 ちなみに、マンガにもあるように家計調査年報の「ギョーザ購入額」はスーパーの焼きギョーザや生ギョーザが集計対象で、お店で食べる分や冷凍食品は対象外。これじゃ、本当の比較はできないっ、てことで、NTTタウンページ株式会社が調べた、人口10万人当たりの店舗数(餃子・しゅうまい店/2022年)を見てみよう

順位 都道府県 10万人当たり件数
栃木県 3.62
静岡県 2.61
宮城県 2.15
福岡県 1.87

 どうよ、やっぱり栃木がダントツじゃん!

(※4)にら

ギョーザランドの歩きかた4

 栃木の名物として、県外の人が真っ先に思いつくのは「いちご」に「かんぴょう」だべなぁ。でも「にら」を忘れねぇでくれ。生産量は高知と1、2を争っているうえに、栃木県産は半端じゃなくうまいし栄養価も高いぞ。なかでも宇都宮の隣・鹿沼は、日光連山からの良質な水や冬期の日照時間が長いなどの条件がそろっており、おいしいにらの一大生産地になっている。

 ほかの県では、1年で種まきから収穫までやってしまうが、栃木では2年1作。2年かけて育てているから、モノが違う。とくに冬を越して最初に収穫される「一番にら」は、甘みも強くて風味も豊かなので、早春に栃木を訪れる機会があればぜひご賞味を。

 宇都宮餃子がおいしいのも、その何割かは栃木のにらのおかげなのだ!

(※5)ご飯にかけるギョーザ

ギョーザランドの歩きかた5

 開発したのは、物流や人材派遣などを手掛ける株式会社ユーユーワールドの小川拓矢社長。海外で商談するとき、栃木らしい手土産が見つからず、ならばと自分で作っちゃったのだ。

 発想のきっかけとなったのは、お店で餃子を食べているときのできごと。餡がたれのなかに落ちてしまい、それを食べたらおいしかったので、「これイケるんじゃないか」と考えた。でも、これって餃子好きならだれしも経験していること。それをビジネスにしちゃうんだから、あんたはエライ!

 日経新聞などのメディアに取り上げられたことや、宇都宮餃子会公認となったことなどから販売は好調。従来の「スタンダード」に加えて、「旨辛」もラインナップし、コンスタントに月1万個を売っているという。

 第2弾、第3弾の商品も開発中というから、いまからワクワクが止まらない!

■プロフィール

まんが:いちごとまるがおさん

ギョーザランドいちごとまるがお

田んぼに囲まれた田舎で創作活動を続ける、ひきこもりのおたく姉妹ユニット。栃木県佐野市在住。
姉の小菅慶子(代表)は1985年生まれ。グラフィックデザインから漫画、動画編集、3DCGまでやりたいことはなんでもやる。通信制高校の講師も。趣味はゲーム、ホラー映画、都市伝説。

監修:篠﨑茂雄

ギョーザランド篠崎茂雄

1965年、栃木県宇都宮市生まれ。大学・大学院で社会科教育学(地理学)を専攻したのち、県立高校の社会科教員を経て、現在は博物館に勤務。学芸員として、栃木県の伝統工芸、伝統芸能、生産生業、衣食住等生活文化全般(民俗)の調査研究、普及教育活動を行う。
著書は『栃木「地理・地名・地図」の謎』(じっぴコンパクト新書)、『栃木民
俗探訪』(下野新聞社)など。

■作者よりひとこと

■今回のテーマ 「餃子LOVE」

・いちごとまるがおさん
ギョーザランドの漫画を描いていくにあたって、改めて自分と餃子との関係性について見つめ直したのですが、よく考えたら父が餃子が大好きで、週5回は冷凍餃子を食べていることに気づきました(笑)。
(それでも、宇都宮の人に比べたら食べてる量は少ないと思いますが……)
ちなみに我が地元佐野市でも最近「佐野餃子」を推しているので、そちらもどこかのタイミングで取材に行けたらいいなと思っております!

・篠﨑茂雄
家のまわりにも餃子専門店がいくつもあったから、餃子はおやつのような感覚で食べていました。お店の味もいいけれど、好みの餡を作って焼きあげた家庭の味も最高です。

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