アメリカ人はどんな本を読んでいるのか?大統領選挙イヤーに売れている本は?-ブックレビュー from NY【第4回】

1.アメリカは再び勝たなければならない。

今のアメリカは敗者だ。戦って勝たねばならない。そのためには強い軍事力を持つ必要がある。持っているだけで脅威となるような最強の軍事力を持つべきである。アメリカは再び偉大な国になるまで戦い続けなければならない。

2.政治メディア

これまでトランプとメディアは共存関係を続けてきた。大統領立候補前もトランプは良きにつけ悪しきにつけメディアに登場し話題になった。その結果、トランプはメディアに広告を載せる以上の効果を得て、メディア側もテレビは視聴率が上がり、新聞や雑誌は多くの読者の関心をとらえた。大統領立候補後もテレビ討論会にトランプが登場すると視聴率が跳ね上がった。しかし、トランプは大統領立候補以後、メディアを経由するだけでなく直接人々に語り掛けて功を奏している。トランプとメディアの共存関係のバランスが崩れてきた。《政治メディア》による《トランプ叩き》は、メディアに頼る必要のなくなったトランプに対するメディア側の危機感の表れである。

3.移民問題

メキシコから国境を越えて流れ込んでくる多数の不法移民を防ぐために、国境線に沿って巨大な《壁》を建設する。しかし、現存する移民法を確実に施行することだけでも成果をあげられる。1100万人以上の不法移民をたったの5000人の移民担当官で取り締まることは不可能で、移民法の完全施行のためには移民担当官の数を増やす必要がある。

不法移民の子供が市民権を得ることや、生まれた子供にアメリカ市民権を取らせる目的で出産時だけアメリカに滞在する“Birth Tourism”に関しては、憲法修正第14条の解釈の再検討が必要だ。移民の子孫であるトランプは移民そのものに反対なのではなく、優秀な人材の移民を促進し、犯罪者など質の悪い人材の不法移民を取り締まるべきだと主張する。

4.外交政策:平和のための戦い

外交政策のカギは、《強い軍事力》と《強い経済力》だ。軍事力は自国を守るためのもので、他国を守るために使うべきではない。サウジアラビア、韓国、ドイツ、日本、イギリスはアメリカの軍事力に頼るばかりでなく、コスト負担をすべきだ。イランとの友好関係回復は、中東におけるプーチンの力を強めただけで、長年のアメリカの友好国であるイスラエルとの関係を悪化させている。中国株の低迷や中国政府による通貨「元」の引き下げなどは、アメリカ市場に悪影響を与えている。中国の保護貿易政策やサイバー攻撃に対し、アメリカは強い態度で臨まなくてはならない。強い軍事力と巨大な消費力というアメリカ経済の強み(中国の輸出はアメリカの消費に大きく依存している)を背景に、アメリカは中国に対し強気の交渉を進める必要がある。

5.教育制度の失敗

現在の画一的(One-size-fits-all)教育制度は失敗である。アメリカの教育水準は世界で26位という低さだ。教育に自由と競争がなくなっているからだ。教育は中央集権のトップ・ダウンで行うべきではなく、地域の実情に合わせて行わなければならない。税金の制約のなかでより良い教育を行うには競争原理が必要となる。親に学校を選ぶ自由があれば、学校同士の競争を促し、成果のあがらない学校は閉鎖される。また教師間の競争も必要で、質の高い教師を教育の場につなぎとめて優遇する必要がある。アメリカの教育制度を正常に機能させることがアメリカを再び偉大な国にする第一歩となる。

6.エネルギー議論

“Global warming”(地球温暖化)、”Climate change”(気候変動)、”Extreme weather conditions”(異常気象)という言葉があるが、どうやら化石燃料を燃やした副産物が天候の変化を起こしている“らしい”。これが本当に人為的なものかどうかはわからない。問題は、いかにしてアメリカがエネルギー資源を確保するかだ。現在アメリカは天然ガスに関してはシェール・ガスなど十分な供給量を持っている。石油に関してはOPEC、特にサウジアラビアの石油に頼っているが、これは外交的にも経済的にも将来不安定要素となり危険である。アメリカ国内に眠っている石油の発掘を推進する必要があり、また石油を輸送するためのパイプラインの許可も必要だ。流行りの太陽光や風力発電など《再生可能エネルギー》いわゆる《グリーン・エネルギー》に関しては、将来的には重要なエネルギー資源になる可能性があるものの、現段階では費用対効果などの見地から実用化は時期尚早だ。

7.医療保険

医療保険制度改革、いわゆる《オバマ・ケア》が始まって2年目に入るが、複雑でお金のかかる保険制度はすでに問題だらけで、改善の兆しどころか、状況は悪くなる一方だ。自社の医療保険制度を保険会社と交渉して作り上げた経験から、アメリカの医療保険制度の再改革が必要であることはわかる。そのためには、専門家ではない政治家がプランを練るのではなく、保険会社間で制度を競わせ、一番良い医療保険プランを採用すべきだ。

8.経済が問題なのだ!

今アメリカにとって必要なのは《リーダーシップ》だ。19兆ドルの債務を抱えるアメリカの問題の根底は経済危機だ。タフな交渉ができる真のリーダーがホワイトハウスに居るべきだ。理論ではなく実際に雇用を創出し、経済を強化することができるリーダーは自分だけだ。

9.ナイス・ガイ

自分はナイス・ガイだと思っている。質問されると物議を醸すようなことでも思ったまま口に出してしまうので、人々の反感を買うことがある。そして攻撃されると言い返してしまう。普通の政治家は利口だから都合の悪い真実を言ったりはしない。政治家は選挙で選ばれてしまえば、何かを成し遂げる気がなくなってしまう。ロビイストたちにとっては扱いやすい。政治の世界に染まらないトランプはベテラン政治家、ロビイストたち、政治メディアの攻撃や中傷の的となったが、一般大衆にとっては新鮮に映った。自分こそは他の政治家と違い、公約を成し遂げることのできる真の共和党保守派である。

10.アメリカ人である幸運

アメリカ合衆国で生まれたことを非常に幸運だと思っている。あらゆる自由・権利と可能性を生まれながらに持つことができた。政治家の一番大事な目的はアメリカ市民の権利を守ることだ。そのために強い軍隊が必要だ。国家の安全を守るために働く軍人(現職、退役を問わず)を手厚く待遇する必要がある。

モーリー・ロバートソンが語る、「ぼくたちは何を読んできたか」③その青春の軌跡 モーリーのBOOK JOCKEY【第4回】
『異類婚姻譚』