【ビジネスパーソンの“秘密基地”を目指して】おそらく世界初!ビジネス書専門店“天狼院書店「Esola池袋店」STYLE for Biz”に行ってみた。
「本だけでなく、その先にある体験までを提供する次世代型書店」をコンセプトとする天狼院書店は2018年4月24日、ビジネス書を専門に取り扱う店舗、天狼院書店「Esola池袋店」STYLE for Bizを新たにオープン。店長を務める木村保絵さんに、「初心者にもおすすめのビジネス書」など、さまざまなお話をお聞きしました。
「本だけでなく、その先にある体験までを提供する次世代型書店」をコンセプトとする天狼院書店。多くのファンを獲得し続ける中で、2018年4月24日、ビジネス書を専門に取り扱う店舗、天狼院書店「Esola池袋店」STYLE for Bizを新たにオープンしました。
店内には良質なビジネス書はもちろん、「ビジネス」を広義でとらえて、小説や漫画も販売。ビジネスをテーマとした読書会や、スキルアップのための講義も開催され、まさに“ビジネス”に関する情報が集まる場となっています。
他に類を見ない、ユニークなコンセプトの店舗は、どのような経緯でオープンしたのでしょうか。今回は天狼院書店「Esola池袋店」STYLE for Bizで店長を務める木村保絵さんに、「初心者にもおすすめのビジネス書」のご紹介を含め、さまざまなお話をお聞きしました。
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おそらく世界初!ビジネス書専門店がオープンするまでの経緯。
―― 天狼院書店「Esola池袋店」STYLE for Bizがオープンするまでの経緯をお聞かせください。
木村保絵氏(以下、木村):以前より、天狼院書店の代表である三浦には「ビジネス書を専門的に販売する店舗を作りたい」という構想があったそうです。実際に「ビジネス書の実売力を磨くことによって、ビジネス書の売り上げが単に伸びるだけではなく、その力は他の分野にも活きるので、書店や出版社の総売り上げが上昇する」と公式ブログでも述べているように、ビジネス書の販売を重要視していました。
構想自体はあったものの、2013年にオープンした東京天狼院の店舗は店舗面積が小さく、ビジネス書を専門的に販売することが容易ではありませんでした。しかし今年、PHP研究所で100冊以上のビジネス書の編集に携わっていたような、ビジネス書の専門知識を持つ方が天狼院書店に参加し、よりビジネス書を専門的に扱えるようになったのもきっかけとなり、今回のオープンに繋がったのです。
―― オープン後、お客様からはどのような反響がありましたか。
木村:ビジネス書を普段から読まれる方から、「ここまで厳選されていると選びやすい」、「これまで読んだビジネス書もたくさんあるし、新しく入った本も良いものが多い。」など、嬉しいご感想をいただいています。
―― 来店されるお客様はどのような方が多いのでしょうか。
木村:お仕事帰りのビジネスマンの方が来店される一方、女性のお客様が多いのが意外でした。この店舗は女性向けのお店が中心のショッピングビル「Esola池袋」の2階にあるからか、オープン直後は「気になって入ってみたけど、自分の思っていた書店と違う」と判断し、すぐに出てしまう方もいましたね。しかしオープンから数ヶ月が経った今では、ビジネスの専門書を購入される女性のお客様も珍しくないように思います。
また、昨年の夏に発行した天狼院書店の雑誌『READING LIFE』で、天狼院書店は「本」を再定義しました。その結果、「お客様にとって有益な情報そのものが、“本”である」という結論に至りました。
この“本”をいかにお客様に提供するのかを天狼院書店は常に考えていて、書籍はもちろん、講座など情報の伝え方・受け取り方をお客様に選んでいただこうとしています。
―― ビジネス書を専門に取り扱う店舗ならではのイベントはありますか。
木村:天狼院書店の各店舗では、好きな本を熱狂的に語る「ファナティック読書会」が定期的に開催されています。「ビジネスに効く小説」、「マネジメントを学べる本」など、ビジネス書に特化したテーマに限定しており、読書会でお客様に紹介いただいた作品をコーナーで販売、何度か購入された本は「STYLE for Biz認定ビジネス書」として、常設している棚でレギュラー販売しています。
「ビジネスに効く小説」というテーマの読書会では、『シャーロック・ホームズ』シリーズを紹介される方がいました。私たちも「まさかそれを選ばれるとは!」と驚くこともあります。
―― 「ビジネスに効く小説」というテーマでありながら、ミステリー作品が紹介されるのはとても面白いですね。
木村:『シャーロック・ホームズ』シリーズを紹介された方曰く、「観察力をもとに得られた、数少ない情報によって事件を解決するホームズからは、ビジネスの場でも活用できる方法を学べるのでは?」とのことでした。たしかに、営業の方は取引先で、接客の方はお客様のちょっとした表情の変化や温度感を見ることで、ビジネスの課題が解決することもありますよね。
小説からハウツー本まで。ビジネス書専門店の店長による、おすすめビジネス書。
―― では、ビジネス書初心者にこそおすすめしたい本をご紹介ください。
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木村:1冊目は原田マハさんの『本日は、お日柄もよく』です。
こちらは、主人公、二ノ宮こと葉が選挙のスピーチライターとして働くお仕事小説。どんな仕事においても、コミュニケーション能力は必要不可欠です。伝説のスピーチライター、久遠久美からスピーチのテクニックについて指導を受けること葉とともに、読者も「伝えること」の重要さやプロ意識を学べます。
―― 作中では「スピーチの極意」が紹介されていますが、実際に仕事のプレゼンの場でも活用できそうですね。
木村:ビジネスの場で活用できる知識がつくのと同時に、悩んだり、つまずきながらも前向きに挑んでいくこと葉に勇気付けられるのではないか、という理由から選びました。
2冊目は、山口絵理子さんの『裸でも生きる ~25歳女性起業家の号泣戦記~』です。
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―― 著者の山口さんは大学卒業後、バングラデシュでバッグやジュエリーのブランド「マザーハウス」を立ち上げたことがさまざまなテレビ番組でも取り上げられていますね。
木村:「途上国で、支援ではなく、ビジネスという形で力になりたい」と奮闘された山口さんの姿には、「大きなことを成し遂げた人は、ここまでやるんだ」と気づかされることでしょう。ノンフィクションであるからこそ、作中で描かれる出来事は多くの人に起こりうることかもしれません。
起業した方のビジネス書は、実際に起こった出来事が描かれているため、リアルな人間ドラマとしても読むことができます。
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また、3冊目はこちら。お客様に「おすすめのビジネス書は?」と聞かれたときはまず、この『好奇心を“天職”に変える空想教室』をご紹介しています。
―― 著者は小さな町工場からロケット事業に参入した植松努さんですが、『下町ロケット』のモデルにもなったことでも話題ですよね。
木村:この本で印象的だったのは、植松さんがアメリカのホームパーティーで趣味を聞かれた時のエピソードです。そこで「趣味は読書です」と答えた植松さんは、「じゃあ、あなたの書いているものを読ませて」と言われたそうです。
「いえ、私が好きなのは本を読むことであって、書いてはいないんですよ」と話す植松さんに、相手は「それでは誰かの提供したものを消費するだけで、趣味とは言えないのではないか」と投げかけます。
そこで植松さんは「時間やお金があってもどれほどあったとしても、既存のものを消費するだけでは満足できない。むしろ、自分の好きなことで新しいものを生み出していこう。好奇心を天職にして、どんどん挑戦していこう」と思い立ちます。ただ、そこで壁になるのは、周囲からの「どうせ無理」、「できっこない」という心ない一言。それを聞いて「どうせ自分にはできない」と諦めてしまうような環境をなくしたいと考えます。
―― たしかに、その一言は挑戦する機会を奪ってしまうように思います。
木村:本を読み終わった後、「あの時できなかったこと・諦めたことを、もう少し続けてみようかな」と思い出すきっかけになるかもしれません。私自身も「文章を書きたい」という夢を新たにし、ライティングゼミに参加したり、天狼院書店で働く、というように人生が変わった1冊でもあります。「どうせ無理」だと思い込んで、夢を諦めた経験のある人には刺さるでしょう。
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―― 続いては、天狼院書店の店主、三浦崇典さんの著書『殺し屋のマーケティング』ですね。
木村:『殺し屋のマーケティング』は、女子大生起業家の桐生七海が、「受注数世界一の殺しの会社」を作ろうと奔走する物語です。七海は「世の中で売れないものはない」とさえ言われている最強のマーケティング・マネージャー、西城潤に弟子入りし、マーケティング理論「7つのマーケティング・クリエーション」を伝授されます。
マーケティングでは、過去の傾向を分析したうえで売り方を考えることが多くあります。しかし、時代が大きく変化している以上、過去に成功したケースをそのままなぞって再び成功することも容易ではありません。「7つのマーケティング・クリエーション」では、ビジネスを始める際に重要なのは「ストーリー」であり、コンテンツの質を上げる、つまり実績を積み上げることで、強烈な上昇気流ともいうべき「スパイラル」が生じ、やがて受け取る側との間で信頼関係が構築され、ブランド化に至る……という流れが理論的に解説されています。この理論は天狼院書店でも取り入れており、3年で売り上げを10倍にも引き上げる事ができました。
―― 効果的なマーケティング理論を解説しつつ、読み物としても面白いため、マーケティング担当以外の人も得られるものがありそうです。
木村:天狼院では、この作品をもとにした講座も開かれています。「7つのマーケティング・クリエーション」に沿って、社内における自分自身の立場を分析することで、足りない部分が見えてきます。
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『トヨタで学んだ「紙1枚!」にまとめる技術』では、トヨタで働く方々が行う、「必要な情報を1枚の紙にまとめる」方法を解説しています。
皆さんの中には、「なかなか仕事が終わらない」と悩む方もいらっしゃるかもしれません。そんなときは、A3あるいはA4サイズの紙1枚に線を引いて枠を作り、ひとつひとつのタスクを書き出してみましょう。すると、意外とすべての枠が埋まらないことに気づくはずです。そこであらためてタスクに優先度を付けた後、取り組んでみると仕事の終わりが見える……という思考の整理方法が述べられています。
―― 自分の頭の中を可視化し、複雑に思えていた状況を整理整頓することは、簡単なようで見落としがちですね。
木村:紙1枚にまとめることは、「相手に言いたいことが伝わらない」、「提案がなかなか通らない」という悩みも解決してくれます。アピールしたいことを同じく紙に書き出し、伝える順番を並べ替えるだけで要点のまとめ方がグッと向上します。
―― 「線を引いて枠を作った紙に書き出すだけ」なので、すぐに実践できそうです。
木村:著者の浅田すぐるさんは、他にも資料作成術や要点のまとめ方を解説する書籍を出版されていますが、誰にでもわかりやすく、実行できるものが多いです。
ビジネス書は読んで終わりなのではなく、実行に移すことが重要です。頭の中にあるイメージは、どんなに一生懸命伝えようとしても、なかなか完全には伝わりません。そこで、イメージを1枚の紙にまとめたものを見せれば、相手と情報を共有できるはずです。
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―― 最後にご紹介いただく『ザ・ファースト・ペンギンス 新しい価値を生む方法論』ですが、書き出しが印象的ですね。
これは、「新たな価値の創造に挑む人」のための本である。
木村:商品やサービスなど、何か新しいものを生み出すのは「カリスマ的な人」や「優れた才能の持ち主」であるというイメージを私たちは抱くかもしれません。しかし、新しい価値は失敗と試行錯誤を繰り返したうえで初めて完成するもの。この作品は、ひとつの部署が企業の核となる事業を作るストーリーを追いながら、発想をどう生み出すのか、そしてそれを実現するための方法を解説しています。
―― 『殺し屋のマーケティング』と同じく、物語形式であるためビジネス書を読み慣れていない人も理解しやすいかもしれません。
木村:イノベーションを創り出すためには、必ずしも特別な能力や才能が必要なわけではありません。「似ているものを足す」、「手元にある情報の共通点を見つける」、「再定義する」など考え方を変えることが求められています。仕事で悩んでいる人に効くビジネス書です。
“ビジネスパーソンの秘密基地”を目指して。
―― ビジネス書を選ぶ際のポイントをお聞かせください。
木村:「ビジネス書を普段から読んでいる人は、普段からバリバリ仕事ができる」というイメージですが、ビジネス書は自分に足りない知識を補うためのものでもあります。そこで、選ぶ時には「目次」に注目し、求めている情報が紹介されているかどうかを判断することも有効です。また、「尊敬する上司に、読んでいる本を聞く」というのも良いのではないでしょうか。
―― 尊敬する上司が読んだ本は、自分のレベルアップにつながるかもしれませんね。
木村:ビジネス書は巻末に参考文献が記載されていることが多いのですが、多くの本において参考文献となっている本は、そのジャンルで広く参考にされているということでもあるので、良い教科書になります。ただ、ビジネス書でも小説でも、最初からいきなり教科書的な本を読むのは、難しいでしょう。
―― たしかに、最初からドストエフスキーやカフカを読むよりも、興味を持って読み始めた作品を入り口に、やがて行き着くことが多いように思います。
木村:人によっては、ドラッカーやアドラーはハードルが高く感じるかもしれません。「ビジネス書は、同じジャンルを10冊読めばわかるようになる」といわれていますが、それは読んでいくうちに理解が深まることも踏まえてのこと。上司の他にも、「好きなお店の経営者が読んでいる」などというきっかけも良いでしょう。ビジネス書にあった情報を経営の場で実践されている方も多いので、より理解が深まります。
―― 最後に、今後の展望をお聞かせください。
木村:「ビジネス書は難しそう」という人にも気軽に来店いただき、ビジネス書を手に取っていただける店舗を作っていきたいです。同時に、仕事に活かせる最新の情報が集まる学びの場のような、“ビジネスパーソンの秘密基地”を目指していきたいですね。
天狼院書店「Esola池袋店」STYLE for Biz 住所:東京都豊島区西池袋 1-12-1 Esola 池袋2階 営業時間:10:30 ~ 21:30 電話番号:03-6914-0167 |
初出:P+D MAGAZINE(2018/07/16)