○○○対火星人!? 【クイズ】“スゴいタイトル”を当てろ!
思わず吹き出してしまうようなタイトルからロマンティックなタイトル、「どういうこと?」と混乱するようなタイトルなど、名著のタイトルには一度聞いたら忘れられないようなものが多数存在します。今回はそんな“スゴいタイトル”をクイズ形式でご紹介します!
書店に並んだ本を見ているときに、特徴的なタイトルや尖ったタイトルの作品に目を引かれ、思わずそれを手にとって買ってしまった──という経験をしたことがある方は多いのでは?
今回は、そんな“スゴいタイトル”の小説やエッセイ、詩集を独断と偏見で選び、クイズ形式でご紹介します。思わず吹き出してしまうようなタイトルからロマンティックなタイトル、「どういうこと?」と混乱するようなタイトルまで、一度その名前を聞いたらもう忘れられない、さまざまなジャンルの名著を集めてみました。
【第1問】初級編
【問題】
本作は、小説家・舞城王太郎が2004年に発表した「小説」と「恋愛」、そして「死」をめぐる恋愛小説です。タイトルの空欄に入る言葉は?
『好き好き大好き〇〇〇〇〇。』
【答え】
『好き好き大好き超愛してる。』
出典:https://www.amazon.co.jp/dp/4062760819/
【解説】
本作のタイトルは非常に有名なので、すぐにわかった方も多いかもしれません。『好き好き大好き超愛してる。』は、小説家の主人公・治と、病気で亡くなってしまった治の恋人・柿緒との恋愛を描いた小説です。作中には治自身が書いたという設定の複数の恋愛小説が挿入されており、本作自体が恋愛小説の形式をとりながらも、人の死や恋愛をどのようにフィクションで扱うべきかという難しいテーマを扱った“メタ恋愛小説”としても読める作品です。
『好き好き大好き超愛してる。』は第131回(2004年上半期)の芥川賞候補作にもなりましたが、審査員のひとりであった石原慎太郎が「タイトルを見ただけでうんざりした」と評したことでも話題となりました。
【第2問】中級編
【問題】
本作は小説家・高橋源一郎が1983年に発表した小説で、改稿前のタイトルは『すばらしい日本の戦争』というもの。タイトルの空欄に入る言葉は?
『〇〇〇・〇〇〇対火星人』
【答え】
『ジョン・レノン対火星人』
出典:https://www.amazon.co.jp/dp/4061983652/
【解説】
このタイトルを初めて聞いた方は、「ジョン・レノン」と「火星人」という言葉のあまりの遠さ、突飛さに驚かれたかもしれません。
本作は、ポルノ作家である「わたし」と、「わたし」に突如手紙を出してきた「すばらしい日本の戦争」を名乗る人物との物語です。「すばらしい日本の戦争」の頭のなかは死体のことで埋め尽くされており、会話をしようとしてもときどき死体のことを口走るばかり。そんな彼に対し、「わたし」はさまざまな方法で死体のことを考えさせないための“治療”を試みます。
タイトルになっているジョン・レノンと火星人はストーリーに直接的にはまったく関係してきませんが、この言葉が象徴しているものを想像しながら読むと、物語の広がりをより感じられる……かもしれません。平易な言葉で書かれてはいますが、ナンセンスなユーモアや皮肉に満ちており、何度でも読み返したくなるような強度を持った作品です。
【第3問】中級編
【問題】
本作は1975年に詩人・谷川俊太郎が発表した、口語的な語りを特徴とする作品を集めた詩集です。この詩集のタイトルの空欄に入る言葉は?
『夜中に台所で〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇』
【答え】
『夜中に台所でぼくはきみに話しかけたかった』
出典:https://www.amazon.co.jp/dp/4791750861/
【解説】
こちらは奇抜というよりも、とてもロマンティックで美しいタイトル。詩集『夜中に台所でぼくはきみに話しかけたかった』には表題作のほか、『芝生』『一九六五年八月十二日木曜日』『シェークスピアのあとに』といった詩が収められています。
表題作は“武満徹に”、“小田実に”とサブタイトルがつけられた複数の詩の連作から成っており、そのすべてが口語的な語りだけで書かれているのが特徴。谷川俊太郎は、当時朗読を前提とした詩作のことをよく考えていたと語っており、タイトルのとおり誰かに向かって静かに“話しかける”ような作品が多く収録されています。
(あわせて読みたい:谷川俊太郎の“スゴい”詩7選)
【第4問】上級編
【問題】
奇想天外なアイデアを用いた大衆小説の書き手として知られる作家・山田風太郎。本作は彼が1956年に発表した作品で、名探偵・荊木歓喜が、複数の容疑者のアリバイを紐解きながら売春宿の女主人の殺人事件を解決していく推理小説です。タイトルの空欄に入る言葉は?
『〇〇〇関係』
【答え】
『十三角関係』
出典:https://www.amazon.co.jp/dp/4334731228/
【解説】
本作は、推理小説や伝記小説を得意とし、娯楽小説『忍法帖シリーズ』で名を馳せた作家・山田風太郎による探偵小説です。売春宿の女主人が殺害され、解体された死体が風車に飾られるというグロテスクな事件を、名探偵・荊木歓喜がさまざまな角度から検証していくという本作。女主人が殺される直前、7人の客に会っていたという事実がトリックの鍵を握ります。
複数の人物の愛憎入り交じった関係性を『十三角関係』というキャッチーなタイトルにしてしまう手腕は、大衆小説の名家・山田風太郎ならでは。同書に収録されている短編小説『チンプン館の殺人』なども、タイトルのユニークさを裏切らない面白さです。
【第5問】上級編
【問題】
本作は神経学者のオリヴァー・サックスが1985年に書いた作品で、トゥレット障害(チックという一群の神経精神疾患のうち、音声や行動の症状を主体とし慢性の経過をたどるもの)や自閉症、アルツハイマーなどと闘う人々を描いた医学エッセイです。タイトルの空白に入る言葉は?
『〇を帽子とまちがえた男』
【答え】
『妻を帽子とまちがえた男』
出典:https://www.amazon.co.jp/dp/4150503532/
【解説】
「妻を帽子とまちがえる? 一体どういうこと?」と思われた方もいるかもしれません。本作は、脳神経外科医として診療をおこなう傍ら、優れたエッセイストとしても活躍したオリヴァー・サックスの代表作のひとつです。
表題作にもなっている“妻を帽子とまちがえた男”は、実際にオリヴァー・サックスが診療したPという患者。Pは優れた音楽家ですが、視覚的な認知能力を非常に特殊な形で喪失しており、嗅覚を駆使したり歌を歌いながらでないとものを認識することができないという症状を持った人物です。Pは花を見てもそれが何であるかわからず、香りを嗅ぐことで初めて“美しいバラだ”と認識します。また、ときに彼は長年連れ添った妻を帽子とまちがえ、彼女の頭を抱えて被ろうとしてしまう──という奇行に走ったりもします。
そんなさまざまな患者たちのエピソードを、愛と敬意に満ちた丁寧な記述で振り返っていく本作。医学エッセイの歴史に残る名著です。
おわりに
“スゴいタイトル”クイズ、何問正解できましたか? もちろん全部知っていた、という読書家の方もいれば、今回初めて知る作品が多かった方もいるかもしれません。
今回ご紹介した作品は、すべて「タイトルだけ」が面白い作品ではなく、その内容もタイトルのインパクトに負けず素晴らしいものばかりです。恋愛小説から詩集、医学エッセイ──とジャンルはさまざまですが、どれも期待を裏切らない作品のはず。読んでいるときに「スゴいタイトルの本読んでるね」と言われたら、ぜひその面白さを周りの人にも伝えてみてください!
初出:P+D MAGAZINE(2020/11/30)