ハクマン 部屋と締切(デッドエンド)と私 第102回
タイミングが
なにより大事である
催促の仕方だが、やはり初手で怒るのは良くない。
最初から追い詰めると「原稿」ではなく「自害」という形で落とし前をつける作家が出ないとも限らない。
そこまで責任感がある作家は最初から締め切りを破らないとは思うが「失踪」の可能性は十分にある。
最初優しく、そして「こちらの過失の可能性」も考慮した催促が好ましい。
私も稀に原稿を送ったはずなのに催促が来る場合がある。
その際は、自分が送っていることを5億回ほど確認してから「〇月〇日に送っているとは思いますが、念のため再送します」と、不快感をケツから脱腸させながら再送している。
これは担当のメール見落としの場合が多いが、こちらが送信ボタンを押し忘れていた、というケースもある。
向こうの過失と思って詰めたらこちらの過失だった、というのは一番避けたい。
よって何かを催促するときは「行き違いがありましたらすみませんが」というエクスキューズを一応入れた方が良いだろう。
こちらが見落としている場合もあるかもしれないし、この業界では「Wi-Fi が便所のように詰まる」という怪現象も良く起こる。
怒るのは確実に相手が悪いと言えるようになってからで遅くない。
そして地味に大事なのは「〇までに出してもらえますでしょうか?」と、次の締め切りを提示することである。
正規の締め切りは過ぎてるんだから、なるはやに決まっているだろうと思うかもしれないが「なるべく早く」などという漠然とした言い方は「来れるなら来て」と同じであり、ならばこちらも「行けたら行く」と言って行かないに決まっている。
次の締め切りを提示した方が「この日までに出せばノーカン」という新ルール設立により作家もモチベーションと落ち着きを取り戻すことができる。
そろそろこの原稿を書き終わるが、担当からの催促はまだ来ていない。来る前に送ることも可能だが、多分来てから送るだろう。
メールを送るという作業も意外と労力を使う。やはり催促ぐらいないと送る気になれない。
(つづく)
次回更新予定日 2023-3-10