ハクマン 部屋と締切(デッドエンド)と私 第42回
独創的なほど怒るのが
編集者という奴である
また担当の「進捗どうですか?」のメールを受けてからこの原稿を書いている。
だがそれを言うのは癪なので、「原稿は出来ていたけど、未送信になってました」と言って送ろうと思う。
おそらく漫画家に限らず、全く同じ言いわけをして納期を破っている人間が全国に推定3億人ぐらいいると思うので、もはや「未送信だった=やってなかったの隠語」と言っても過言ではない。
何故なら他ならぬ編集者もネームの返事が遅れた時などに全く同じ言いわけをするからである。
この「弁明にすらオリジナリティがない」という時点で作家には向いていなかったのかもしれない。
しかしそういうつまらない言いわけより「うちの三歳児がLANケーブルにトイレットペーパーの芯を流してしまったため」と弁明した方が何故か余計怒られるのだ。
原稿に既視感があれば没にするくせに、言いわけは独創的なほど怒るという一貫性のなさで作家を翻弄するのが編集者という奴である。いつか自己矛盾に耐え切れず自壊すれば良いと思う。
ちなみにこの6月末で専業作家という名の無職になって、丸2年経った。唯一残っていた会社員だった痕跡の任意継続保険が切れたから間違いない。
会社を辞めてから、単純に見積もって一日10時間ぐらい時間の余裕が出たはずなのである。
それにもかかわらず何故未だに会社員時代と同じ言いわけメールを書いているのか、もはや不可解を超えて恐怖である。何らかの超常現象が起こっているとしか思えない。
しかし「超常現象のせいで」と言うと怒られるのだ。よくそれで異能力バトル漫画や、ホラー小説の担当が出来るなと思う。
仕事の量が増えたかというと、大して変わっていないと思う。
つまり、会社を辞めたことにより浮いた10時間を使って、一日42時間だったツイッターの時間を68時間にするなど、いくら時間があっても時間の使い方が下手くそなせいである。
逆に、ない時間を錬金してしまっているような気もするが、残念ながらこの能力はツイッターにしか使えないのだ。
ご存じの通り「やればできる」という「根性論」「精神論」はオワコンの時代である。
唯一その文化が残っているのはソシャゲのガチャぐらいのものだ。
あれは未だに「出るまで回す」という根性と「おしっこがまん教」「左乳首タップ教」という精神論を最後まで信じた奴が勝利する世界だ。
つまり、どんな仕事でも、残業や徹夜をすることが仕事熱心と呼ばれる時代は終わったのだ。むしろ仕事を時間内に終わらせる能力がないから残業していると思われてしまう。