ハクマン 部屋と締切(デッドエンド)と私 第46回
この業界では自分の作品も
いつか売れる可能性がある
今、世間は鬼滅の刃の映画とおばさんの復権希望おじさんの話で持ちきりである。
ちなみに私の言う「世間」というのはツイッターの事であり、世間一般の遥か下流に位置する集落の話なのでご注意いただきたい。
後者は詳しく知ったところで、無駄な怒りで二酸化炭素排出量が多くなり、エコでないし、多分これが掲載される頃には118%の人がすっかり忘れていると思うので、詳細を調べてさえいない。
しかし鬼滅の刃の映画の情報に関してはどれだけ、目を閉じ、耳を塞ぎ、ついでに口と鼻を纏り縫いして死にかけても「聞こえますか…鬼滅の刃の映画大ヒットです」と脳内に直接語りかけてくるレベルでシャットダウンのしようがない。
何度も言うように私は同業者のサクセスが大嫌いだが、はっきり言ってこのレベルになると嫉妬も起きない。
海外セレブの優雅な生活を見ても我が心は不動、むしろ素敵と思う余裕すらある。
しかし、中高時代、己と同じスクールカースト下から二番目、と自分は思っている最底辺グループに所属し、しかもその中でも「こいつよりは上」と思っていた存在が、留学するとか独立するとか聞いたら、突然心が下方向に躍動し、全力で足を引っ張りたくなるとの同じで、自分と同レベルに売れてないと思っていた作家のサクセスの方が個人的には染みる。
よって、鬼滅の刃に関しては、そこまで面白いなら機会があれば読んでみようとすら思っている。
機会というのはもちろん「鬼滅の刃3巻まで無料公開」みたいな時であり、その瞬間(とき)を、特攻服で単車にまたがり、ツルハシを装備した状態で待っている。
読者には「金出して買ってくれ」と言うのに、自分は無料で読むつもりか、と思うかもしれない。
しかし、私は自分の著書を金を出して買って欲しいと思ってはいるが、同時に無料公開も積極的にしていくべきだと思っている方である。
現在、漫画は昔に比べると斜陽産業に係らず、作品数だけはプロアマ含め増え続けている。
よって、面白い面白くない以前に、そういう作品がこの世に存在すると知ってもらうまでのハードルが高い。
まして、存在することすら知られていない漫画に金を払わせるなど、もはや哲学かとんちの世界である。