ハクマン 部屋と締切(デッドエンド)と私 第89回

ハクマン第89回
大ブレイク中の
AIお絵描きツールを
自分でも試してみた。

いくらAIが自分で学習すると言っても最初の指示が「これをドカーっとやってルカーっと叫ぶ感じで」では難しいだろう。もしくはとても精巧な小沢健二とスチャダラパーの絵が完成する。

おそらく現在でもアシスタント自体は優秀なのに作家の指示がルカーっとしているせいで、アシスタントは実力を出せず、出来上がるものは残念、作家はイラつくという誰も幸せになってない現場は存在しているのだろう。

ただAIにはわかるまで説明できるし、やり直しも要求できるという大きな利点がある。
相手が人間の場合、1回「はあ?」と聞き返されただけで心が折れて「自由にやってくれ」と言ってしまい出来上がったものがどれだけポストモダンでも「いいじゃん」と言ってしまうだろう。
その点AIなら、気を使わず何回でも要領を得ない説明ができるし何度でもやり直させることができるし、SNSに「うちの先生マジ何言ってるかわからねえ」と書かれることもない。

やはり漫画家のみならずAIはコミュ症の希望になる可能性が高いのでこのまま頑張って欲しい。

完全なるAI漫画家の誕生はまだ先かもしれないが、そのうち推しカプの名前を入力すればいくらでも作品を作ってくれるAIぐらい登場するかもしれない。

そうすれば、己の推しカプの創作がなくて餓死する人間がいなくなり、ある意味で食糧問題が解決される。

しかし、現在でも「ないから自分で描いているが、できたら他人が描いたものが見たい。他人が描いた推しカプからしか取れない栄養がある」と言っている自給自足の民は多い。

例えAIで推しカプ創作が無限に作れる世界になったとしても今度は「他人がAIに指示を出して描かせた推しカプ創作からしか取れない栄養がある」と言いだしそうな気はする。

ハクマン第89回

(つづく)
次回更新予定日 2022-8-25

 
カレー沢薫(かれーざわ・かおる)

漫画家、エッセイスト。漫画『クレムリン』でデビュー。 エッセイ作品に『負ける技術』『ブスの本懐』(太田出版)など多数。

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