ハクマン 部屋と締切(デッドエンド)と私 第91回

ハクマン第91回
発達障害の診断を受けて
特に諦めたものがある。
それが「電話」だ。

先日久しぶりにS学舘から漫画の新刊が出た。
この媒体もS学舘なので伏せる必要はないのだが、S学舘のSがシットのSを表しているのはあまりにも有名なので一応伏せさせてもらった。
編集に指摘される前から、コンプラを意識するのが令和のデキる作家である。
ちなみにシットはもちろんファッキソガッデムシットのシットだ。

 

開始から学びの宝庫である。

最近の消費者はエンタメに面白さだけではなく、有益性を求めていたりするので、豆知識などは積極的に挟んでいった方が良いのだ。

そして件のFGS学舘から出た新刊も、私自身の発達障害を扱ったエッセイであり、専門家の監修や解説もついているので、私が出している本の中では学びがある方といえる。

このように、私は自身の発達障害を公言、むしろせっかくだからそれで小金を稼いでやろうという姿勢で活動しているのだが、その連載以外、まして実生活でそれを言うことはほとんどない。

先日、某炎上しがちな芸能人が自身の発達障害を告白したところ「障害を免罪符にするな」とまた炎上していた。

発達障害当事者としては世知辛いと思うのだが、怒る人の気持ちもわかる。
知らない人を突然殴った後で「特に意味のない暴力で人を襲う病なんです」と告白すれば、相手が「なら仕方がない」と、乱れた髪を直して颯爽と去ってくれるか、というとそんなことはない。
例え、そういう病(ビョウ)が本当にあり法的に無罪としても、実害を被った側からすれば納得がいかないだろうし、むしろ余計怒りが収まらない気がする。

だが、発達障害は病(ビョウ)ではないが、現在のところ完治する術はない。
発達障害を他人を納得させる術に使うのは悪手だが「自分がこれをできないのは仕方がないことだ」と自分を許すための免罪符にするのはありだと思っている。

 
カレー沢薫(かれーざわ・かおる)

漫画家、エッセイスト。漫画『クレムリン』でデビュー。 エッセイ作品に『負ける技術』『ブスの本懐』(太田出版)など多数。

◎編集者コラム◎ 『私たちは25歳で死んでしまう』砂川雨路
ゲスト/永井玲衣さん◇書店員が気になった本!の著者と本のテーマについて語りまくって日々のモヤモヤを解きほぐしながらこれからの生き方と社会について考える対談◇第16回