
仕方がない時に
仕方がないと諦めるのも
大事である。
防災省もドン引きの大型台風14号がやってきた。
我が故郷は他の都道府県から忘れられているのはもちろん、住んでいる者さえ時々自分がどこに存在しているのか見失うレベルの地味県である。
しかし、今年は4,630万円誤振込を皮切りに、甲子園で準優勝、その快挙の裏で私の集落は野生の猿に住民が60人以上襲われ、危うく村が滅びかけたりと、異例なほど全国ニュースで我が県の名を目にすることが多かった。
福岡と広島にフックをかけることで辛うじて浮かんでいることで有名な我が故郷だが、ついに完全沈没の前触れかもしれない。
ちなみに甲子園準優勝の野球部だが、メンバーがほぼ県外出身者だったことがちょっと物議を醸していたらしい。
しかし、我が県から都会に出ていくものは大勢いるが、せっかく我が県以外に生まれたのに、わざわうちに来るという悲壮なまでの決意を下手をしたら中学生ぐらいでしたかと思うと、とてもよそ者が、とは言えない。
むしろ「ならばお前はなぜ地元出身者のくせになぜ地元に貢献してないのか」という話になられたら困る。
ちなみに、集落を暴力で支配しようとした猿は主に2匹いたようだが、そのうちの1匹を捕獲してくれたのは、海外からの研修生の方達である。
県外どころか国外から来た方にまで助けられている一方で、4,630万円返さないニキは県内出身者である。
このように、この多様化かつ、グローバルな時代に出身を気にするというのは30過ぎで第一声が「どこ中よ?」なぐらいダサい。
そういう差別が一切ないといえば「自然」である。
ハリケーンが地元有力者の家を避けて通ったり、交番の前をやたら早足で駆け抜けていくということはなく、いつ誰が被害に遭うかわからない。
ちなみに猿は女子供老を重点的に狙っていたので「野生」は意外と人間と同レベルで相手を見ていることがある。
しかし自然災害は、運よく来ない、ということもあり、我が地元は幸いにも災害が少ない土地でもあった。
しかし、今回冒頭の台風14号が直撃コースだったのである。
カレー沢薫(かれーざわ・かおる)
漫画家、エッセイスト。漫画『クレムリン』でデビュー。 エッセイ作品に『負ける技術』『ブスの本懐』(太田出版)など多数。
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