【平野啓一郎のオススメ】幅広い読者が支持する作品

若くして数々の名作を世に出し、当時最年少で芥川賞を受賞した実力派作家、平野啓一郎。文学的な表現を多用し、読み解くのはそう簡単ではないながらも、幅広い読者に愛されています。今回はそんな平野啓一郎の読んでおきたい作品を紹介します。

平野啓一郎とは?

作家・平野啓一郎は、1975年に生まれました。デビューからこれまで多数の本を出版しており、その形式は大長編から短編集まで多岐にわたります。ジャンルも幅広く、「考えさせられる物語」が多いのが特徴です。新人の時には「三島由紀夫の再来」と評されるなど、デビューから今に至るまで注目されています。彼が描く作品の多くは、活字を絵のように用いたり、視覚に訴えるものが多いのが特徴です。こうした奇抜な発想が、現代の読者を魅了しているのです。

それではここから、平野啓一郎のオススメ作品をご紹介していきます。

1.ドーン

ドーン_書影
出典:http://www.amazon.co.jp/dp/4062772639

2009年に発売され、第19回Bunkamuraドゥマゴ文学賞を受賞した作品です。こちらは未来の宇宙船を舞台とした物語。火星から帰還した主人公たちが、ある重大な秘密によって世界を左右する問題に巻き込まれるという展開になっています。秘密が徐々に解き明かされていくので、ひとたび読めば平野ワールドに引き込まれること間違いなしです。また作中では平野啓一郎自身が生み出した本当の自分とは何かを問う、「分人主義」という概念も登場するので、読めば読むほど考えさせられる作品といえるでしょう。

人類初の火星探査に成功し、一躍英雄ヒーローとなった宇宙飛行士・佐野明日人さのあすと。しかし、闇に葬られたはずの火星での“出来事”がアメリカ大統領選挙を揺るがすスキャンダルに・・・。

2.決壊

決壊_書影
出典:http://www.amazon.co.jp/dp/4101290415

この作品から、平野啓一郎のファンや読者が増えたと言われており、殺人事件を犯した人間と、それを取り巻く人々の心理が描かれています。インターネット時代の問題といえる匿名による言葉の暴力、ネットを介した暴力などを、絶妙な描写で描き、繊細な心理描写が読者を魅了します。現代の抱える問題を捉えたストーリー展開なので、老若男女幅広く読めるというのも、読者が増えたきっかけといえるでしょう。
こちらは平成20年度、芸術選奨文部科学大臣新人賞を受賞した作品でもあります。

地方都市で妻子と平凡な暮らしを送るサラリーマン沢野良介は、東京に住むエリート公務員の兄・崇と、自分の人生への違和感をネットの匿名日記に残していた。一方、いじめに苦しむ中学生・北崎友哉は、殺人の夢想を孤独に膨らませていた。ある日、良介は忽然と姿を消した。無関係だった二つの人生に、何かが起こっている。

3.日蝕

日蝕_書影
出典:http://www.amazon.co.jp/dp/4101290318

この作品は平野啓一郎を語る上では外せない一冊でしょう。当時平野啓一郎はまだ学生であり、これがデビュー作になります。また、最年少で第120回、芥川賞を受賞した作品でもあります。文体は森鴎外を意識していると言われ、極めて文学的であるために読むのは難解ではありますが、ぜひ読んでおきたい一作です。

現代が喪失した「聖性」に文学はどこまで肉薄できるのか。舞台は異端信仰の嵐が吹き荒れる十五世紀末フランス。賢者の石の創生を目指す錬金術師との出会いが、神学僧を異界に導く。洞窟に潜む両性具有者、魔女焚刑の只中に生じた秘蹟、めくるめく霊肉一致の瞬間。

4.マチネの終わりに

マチネの終わりに_書影
出典:http://www.amazon.co.jp/dp/4101290318

恋愛を中心に繰り広げられる、様々なテーマを絡ませた物語です。2016年に出版されたもので、恋愛小説という側面から、対象は高年齢層の読者といえるでしょう。連載中から、多くの読者がその美しい世界観に引き込まれていました。芥川賞受賞作家が描く至上の恋愛物語。恋愛小説好きにはぜひともおすすめしたい一冊です。

結婚した相手は、人生最愛の人ですか?ただ愛する人と一緒にいたかった。なぜ別れなければならなかったのか。恋の仕方を忘れた大人に贈る恋愛小説。

最後に

平野啓一郎のオススメ作品は如何でしたか?
紡ぐ言葉の一つ一つに時間を掛けジャッジをしているという平野。その積み重ねがセンスとして評価され、数多くの読者に支持されているのではないでしょうか。
多数の作品を発表していますので、是非あなたに合う作品を見つけてみては如何でしょうか?

初出:P+D MAGAZINE(2016/09/21)

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