内館牧子のオススメ作品を紹介【女性ならではのメッセージ】

NHKの連続テレビ小説や大河ドラマを担当するなど脚本家として大活躍の内館牧子。大相撲通としても有名で、2000年からは女性で唯一の横綱審議委員として活動していました。今回はその内館牧子のオススメ作品5選をご紹介します。

十二単衣を着た悪魔

十二単衣を着た悪魔_書影
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容姿端麗で頭脳明晰な弟に劣等感を感じている主人公の兄。大学を卒業しフリーターのままで、彼女にもふられて自分に自信を持てないでいます。そんな主人公がある日、源氏物語という架空の世界にトリップしてしまう物語です。現代人としての知識を使って、源氏物語の世界で陰陽師として活躍するようになり、次第に自分に自信を持っていく主人公。源氏物語のファンであるという著者が、古典と現代小説を見事にミックスさせたエンターテイメント小説に仕上げています。なんとなくとっつきにくいと感じている人も多い古典の物語が、とても身近に感じられる読みやすい一冊です。

59もの会社から内定が出ぬまま大学を卒業した二流男の伊藤雷。それに比べ、弟は頭脳も容姿も超一流。ある日突然、『源氏物語』の世界にトリップしてしまった雷は、皇妃・弘徽殿女御と息子の一宮に出会う。一宮の弟こそが、全てが超一流の光源氏。雷は一宮に自分を重ね、光源氏を敵視する弘徽殿女御と手を組み暗躍を始めるが…。エンタメ超大作!!

終わった人

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冒頭に登場する「定年は生前葬だな。」―というセリフがネットでも話題になりました。有名大学を卒業して大手銀行員として勤務しながら、子会社に出向し定年を迎えたサラリーマンの物語です。仕事をしていないと不安になり、雇われ社長として働き始めるもその会社が倒産してしまいます。主人公は新しい仕事や趣味、久しぶりの恋にも挑戦し、定年を迎えた後の人生の意義をどう見出せばいいのかと考えます。気持ちのいいセリフのやり取りでテンポよく読みすすめていけます。まるでドラマを見ているような感覚にさせるのは脚本家としても活躍している著者ならではの筆力でしょう。

大手銀行の出世コースから子会社に出向、転籍させられそのまま定年を迎えた田代壮介。仕事一筋だった彼は途方に暮れた。妻は夫との旅行などに乗り気ではない。「まだ俺は成仏していない。どんな仕事でもいいから働きたい」と職探しをするが、取り立てて特技もない定年後の男に職などそうない。生き甲斐を求め、居場所を探して、惑い、あがき続ける男に再生の時は訪れるのか?ある人物との出会いが、彼の運命の歯車を回す―。

夢を叶える夢を見た

夢を叶える夢を見た_書影
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実際に夢を叶えた人、失敗した人に話を聞き、それをまとめたノンフィクション作品。夢に向かって挑戦した人と夢を諦めてしまった人を、「飛んだ人」と「飛ばなかった人」に分けてインタビューをもとにそれぞれの挑戦とその結果がまとめられています。飛んで夢を叶えた人もいれば、飛んだはいいが失敗した人もいます。飛べばいいってもんじゃない、何が成功なのか、どういう人生が幸せなのかは人それぞれなのだと思い知らされます。夢があるのになかなか挑戦できないでいる、今の仕事に不満があるけど思い切って転職する勇気がない、そんな時にとても参考になるストーリーがたくさん登場します。

「夢という爆弾」を爆発させて死ぬ人と、爆発させることなく「夢の不発弾」を抱えたまま死ぬ人。人生を終える時、人はそれぞれ何を思うのだろうか。本当に充実した人生とは、いったいどんなものなのか。誰もが抱く永遠のテーマに挑んだ著者初の渾身のノンフィクション。何とか人生を変えたい、と思い悩む全ての人に―。

エイジハラスメント

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2008年に単行本が出版され、2015年には設定が少し変わってはいますがドラマ化もされました。エイジハラスメントとは年齢を理由にした差別や嫌がらせのことで、中高年や若い女性に対して多いハラスメントと認識されているようです。主人公はとんかつ屋でパートとして働く34歳の主婦、大沢蜜。美人で自分磨きも怠っていない蜜ですが、仕事場での接待役は「若くて綺麗な女の子のほうがいい。」と言われてしまいます。若いこと=素晴らしい、とされている現代の日本社会で年を重ねながら女性たちはどう生きていけばいいのか。いろんな価値観を持った女性たちが登場し、それぞれの生き方を見せてくれます。

大沢蜜は34歳のごく普通の主婦。可愛い娘にも恵まれて、何不自由ない暮らしを送っていた。ある日、パート先でオバサン扱いをされた上、夫が若い女と浮気している現場を目撃。もはや蜜には、若くて綺麗な愛人と戦うだけの魅力はない。家庭もプライドも失いかけた蜜は、若返りの為に美容外科手術を決意するが、それで幸せな日々は取り戻せるのか!?

見なかった見なかった

見なかった見なかった_書影
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内館牧子が日頃から感じている疑問や不満、怒りなどが満載の笑えるエッセイです。編集者に対して、政治家に対して、文句を言うだけでなくユーモアを加えて仕上げているところがさすがです。豪快で舌鋒鋭い語り口で、読むだけで気持ちがスカッとするような痛快なエッセイ集となっています。

「挨拶に来い」と上から物言う傲慢な政治家を叱責し、過剰なへりくだり言葉を使う担当者を斬って捨て、老人から尊厳を奪ったと医療現場へ警鐘を鳴らす…。人生の機微に通じた著者が、日常生活で覚える怒りと不安に真っ向勝負で挑み、喝破する。ストレスを抱えながらも懸命に生きる現代人へ、熱いエールをおくる、痛快エッセイ五十編。

最後に

大企業でOLとして働いていた経験もある内館牧子。脚本家への転身を経て、長い間、第一線で活躍しています。社会に対して、仕事に対してこれでホントにいいの? という感覚と、女性ならではの鋭い意識が感じられる作品ばかりです。

初出:P+D MAGAZINE(2016/09/27)

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