【著者インタビュー】トミヤマユキコ『夫婦ってなんだ?』 /ほとんど何の経験もなく挑む結婚は、そもそも『無理ゲー』

「ママタレ」「仮面夫婦」「年の差婚」などの現象を例にとりながら、“夫婦とは何か”という難問に挑んだ一冊。気鋭のライター、トミヤマユキコ氏にインタビュー!

【大切な本に出会う場所 SEVEN’S LIBRARY 話題の著者にインタビュー】

バンドマンの妻でもある気鋭のライターが、「いま 最も面白いコンテンツ」=夫婦を様々俎上に載せて考えた夫婦のなり方、あり方、続け方――

『夫婦ってなんだ?』
夫婦ってなんだ? 書影
筑摩書房 1512円

《いま一番おもしろくて勢いのあるコンテンツってひょっとして"夫婦"なのでは? そう思いたくなるほど、夫婦の周辺が騒がしい。結婚、離婚、妊娠、出産、不倫、セックスレス、モラハラ、DV。ワイドショーやネットニュースを日夜賑わせているこれらの言葉は、すべて夫婦と紐づいている》。かくしてトミヤマさんは夫婦について考え、探っていく。俎上に載せるのは『魔女の宅急便』からイチロー、樹木希林夫妻まで様々。笑って唸って夫婦について考えられる。

トミヤマユキコ
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●TOMIYAMA YUKIKO 1979年秋田県生まれ。早稲田大学法学部、同大大学院文学研究科を経て現在は東北芸術工科大学芸術学部講師。少女マンガ研究を中心としたサブカルチャー関連講義を担当。著書に『40歳までにオシャレになりたい!』『大学1年生の歩き方』(清田隆之さんとの共著)『パンケーキ・ノート』がある。

そもそも結婚ってなかなかの無理ゲーで、あまり愛とか信じすぎない方がいいと思う

 夫婦って何なんだろう。芸能人夫婦や、漫画・小説・映画などの作品に描かれた夫婦、「ママタレ」「仮面夫婦」「年の差婚」などの現象も例にとりながら、立てた問いの答えを探していった。
「調べれば調べるほどわからなくなったっていうのが結論ですね。でも、ほっとしました。『夫婦ってこうあるべき』と言う人は多いけど、実際にはすごく多様で、結構、みんな好き勝手にやっている。そういうことが本を読んでもらえばわかると思います」
 本を読んだ20代、30代の友人からは、「これなら大丈夫かも」という感想をもらったそうだ。
「若い人がよく、『無理ゲー(注・難易度が高すぎてクリアできないゲームのこと)』って言い方をしますけど、そもそも結婚ってなかなかの『無理ゲー』で、ほとんどの人が何の経験もなく挑むもの。それを恋愛感情という一本の柱で何十年も支えていくのは難しいはずで、あまり愛とか信じすぎない方がいいんじゃないですかね」
 トミヤマさん自身は結婚6年目。バンドマンの夫は、大学のサークルの先輩で、「先輩・後輩」「フリーランスで働く仲間」といった何本かの柱があってうまくいっているという。
 ちなみに「美容師」「バーテンダー」「バンドマン」は「付き合ってはいけない3B」と呼ばれているそうで、そうした世間の「決めつけ」に対するやんわりとした反論として書かれたエッセイも、本には収められている。
「私自身は結婚願望がまったくなくて、だから過剰に期待することもなく、夫婦って他人事みたいな感覚があります。だからこそ、観察するのが面白い、というところはありました」
 先ごろ退位された上皇・上皇后陛下の夫婦像の、現代的な新しさについても考察している。
「退位を前にした誕生日会見で、奥さまへの感謝の思いを語られましたよね。前の天皇陛下だと、たぶんありえないことで、陰で伝えるのではなく、あえて、人前で言葉にされたと思うんです。古き良き夫婦でありつつ、現代的にアップデートされた夫婦のお手本でもある。これって実は難しくて、すごいことだと思います」

素顔を知りたくて SEVEN’S Question+1

Q1 最近読んで面白かった本は?
チョ・ナムジュ『82年生まれ、キム・ジヨン』。

Q2 新刊が出たら必ず読む作家は?
本谷有希子さん。めんどくさい人しか出てこないので(笑い)、大好きです。

Q3 好きなテレビ・ラジオ番組は?
『タモリ倶楽部』。日本の教養番組の最高峰だと思って見ています。

Q4 最近気になるニュースは?
東洋英和女学院大学の学長が論文に引用した「カール・レーフラー」という人物がでっち上げだったこと。自分も大学教員なので、研究の世界で嘘をつく人の心理に興味があります。

Q5 最近ハマっていることは?
山形の大学と東京を行ったり来たりしているので、山形駅でお土産を買うこと。『米沢名物 牛丼弁当 牛肉どまん中』にハマっています。

Q6 趣味は?
芸能ゴシップをチェックすること。小学生の頃から、芸能人の本名と芸名を対にしてノートに書いてました。

Q7 好きな芸能人は?
マリウス葉(Sexy Zone)。雑誌のアンケートで「ここぞという時の勝負プレゼントは?」と聞かれ、「彼女の女友達との旅行」と答えて感動しました。歌って踊れて頭もよくて恋愛観もパーフェクト。尊敬してます。

Q8 いちばんリラックスする時間は?
漫画を読んでいるとき。頭がほぐされて、いろんなことが考えられるようになります。

●取材・構成/佐久間文子
●撮影/黒石あみ

(女性セブン 2019年6.13号より)

初出:P+D MAGAZINE(2019/12/17)

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