日本文学の英訳タイトルクイズで英語力をチェックしよう!
海外でも多くの人に読まれている日本文学。英訳時のタイトルをもとにした、英語力と作品の知識が試されるクイズをご用意しました。あなたは一体何問正解できるでしょうか?
突然ですが、問題です。
以下の2つの言葉は、日本の小説を原作としたアニメーション作品の英訳タイトルです。日本ではどんなタイトルになっているか、わかりますか?
1.『The Tatami Galaxy』
2.『Ghostory』
「畳?宇宙?」、「そもそも『Ghostory』なんて言葉、無いよね?」と思う方もいるかもしれませんね。気になる正解は、1.『四畳半神話大系』、2.『化物語』です。
森見登美彦による、うだつのあがらない大学生が薔薇色のキャンパスライフを獲得しようと右往左往する『四畳半神話大系』は、「ドアを開けても延々と四畳半の自分の部屋が続いていた……」という衝撃的な展開を迎えます。畳が延々と続く様子を、果ての無い宇宙になぞらえたことからこのように英訳されたのでしょう。
また、西尾維新の代表作のひとつでもあり、怪異に遭った少女が次々と登場する『化物語』のタイトルは、もともと「化物」と「物語」の造語。英訳でも「ghost」と「story」を合わせることで、元のタイトルにもある言葉選びの巧みさが光っています。
このように、内容は同じでも、タイトルが日本と海外では異なる作品は多くあります。タイトルの由来が日本独自の文化や別の映画や楽曲だと、海外に住む人は具体的に作品のイメージをつかむことができない可能性もあります。
そこで今回、P+D MAGAZINEでは、英訳から、元の作品のタイトルを当てるクイズを用意しました。「なんとなく、あの作品だろう」というイメージから推測するも良し、「ひとつひとつ訳してみればわかるはず!」と自分の英語力を試すも良し。初級から上級まで、ご自身の想像力と英語力を試してみてください!
【答え方】英訳されたタイトルに合致する日本文学の作品を選択肢A〜Dの中から選び、「クリックして回答をチェック!」ボタンから解答と解説(その他の作品)をチェックしてください。 |
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【第1問】『No Longer Human』
A.『人間の証明』
B.『人間失格』
C.『人間そっくり』
D.『透明人間』
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【解説】
英訳でのタイトルには「失格」ではなく、「もはや〜ではない」という意味を持つNo longerという表現が使われています。他人の前では道化を演じる主人公の大庭葉蔵が、自殺未遂と薬物によって「もはや人間ではない」状態へと陥っていく様子が端的に表れていますね。
【その他の作品あらすじ】
A.『人間の証明』/ Proof of the Man……森村誠一のミステリー長編小説。被害者の持っていた『西条八十詩集』がキーアイテム。
C.『人間そっくり』……安部公房のSF長編小説。ラジオ番組「こんにちは火星人」の脚本家が火星人を名乗る男に翻弄される様子を描いている。
D.『透明人間』/ Invisible Man……H.G.ウェルズのSF小説。科学者が薬品によって透明人間に変身し、数々の事件を起こす。
【第2問】 『The pillow book』
A.『枕中記』
B.『満月の泥枕』
C.『夢十夜』
D.『枕草子』
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【解説】
平安時代中期に清少納言によって執筆されたとされる随筆。『枕草子』というタイトルは「枕元に置く日記帳や備忘録のような書物」であること、「和歌を詠むネタ=歌枕の解説書」であることなど、さまざまな由来がとなえられています。シンプルにpillow=枕、book=本と訳せば簡単だったかもしれません。
【その他の作品あらすじ】
A.『枕中記』/ The World Inside a Pillow……沈既済の中国の伝奇小説。主人公が道士から授けられた枕で寝たところ、出世を果たす夢を見たという話。
B.『満月の泥枕』……直木賞作家、道尾秀介のミステリー小説。貧乏アパートに暮らす住人たちの群像劇。
C.『夢十夜』/ Ten Dreaming Nights……夏目漱石の小説。「こんな夢を見た」という書き出しから始まる、10通りの不思議な夢の世界を描いている。
【第3問】 『The Moon over the Mountain』
A.『月山』
B.『山月記』
C.『よるのばけもの』
D.『孤高の人』
出典:http://amzn.asia/eYlyYVC
【解説】
中島敦の短編小説。若くして仕事で高い地位を得た李徴。自信家であった彼は詩人として名を残そうと辞職し、詩作に専念します。しかし、職を辞したことから経済的に困窮。再び下級官吏として働くことを強いられたことから発狂した李徴はその姿を虎に変えてしまうのでした。
『山月記』のタイトルは詩人を志していた李徴が吟じる一説「此夕渓山対明月」から来ていますが、英訳されたものでもMoon、Mountainと風光明媚な情景が描写されています。
【その他の作品あらすじ】
A.『月山』……森敦の小説。1974年に芥川賞を受賞。出羽の霊山、月山の寺にたどり着いた男が冬を越す様子を描いている。
C.『よるのばけもの』……住野よるの小説。夜になると怪物になってしまう主人公がクラスメイトでいじめの対象になっている少女と交流する。
D.『孤高の人』……新田次郎の小説。登山家、加藤文太郎の生涯を題材にした作品。
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【第4問】 『The Maid』
A.『儚い羊たちの祝宴』
B.『博士の愛した数式』
C.『家族八景』
D.『家政婦は見た』
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【解説】
筒井康隆のSF小説。人の心が読めてしまう能力を持った主人公、火田七瀬は住み込みの家政婦としてさまざまな家庭にやってきます。しかし、その能力から行く先々の家庭でトラブルを起こしてしまうのでした。
英訳でのタイトルは七瀬の職業、家政婦をシンプルに訳したもの。作品を読んでいた方であれば、簡単だったのではないでしょうか。
【その他の作品あらすじ】
A.『儚い羊たちの祝宴』……米澤穂信の短編推理小説。上流階級の女性たちが参加する読書サークル、“バベルの会”で起こる惨劇が描かれており、登場人物の中にはメイドがいる。
B.『博士の愛した数式』/ The Housekeeper and the Professor……小川洋子の小説。第1回本屋大賞受賞作。交通事故による脳の損傷で記憶が80分しか持続しない元数学者の“博士”の元にやってきた家政婦の“私”とその息子による物語。
D.『家政婦は見た』……松本清張の作品『熱い空気』が原作となったテレビドラマ。主人公の家政婦が、家庭の暗い部分を覗き見てしまうのがお約束の展開。
【第5問】 『A Wild Sheep Chase』
A.『羊群は地獄に堕ちる』
B.『羊と鋼の森』
C.『羊たちの沈黙』
D.『羊をめぐる冒険』
出典:http://amzn.asia/8eeRaba
【解説】
村上春樹の代表作のひとつ。「星型の模様を持った羊を探すこと」を依頼された主人公の“僕”がガールフレンドとともに北海道へ向かうこの作品は『A Wild Sheep Chase』と英訳されました。
英語には「A Wild Goose Chase」という表現がありますが、直訳すると「野生のガチョウを捕まえること」となります。「野生のガチョウを捕まえることが容易ではないわりに、ガチョウそのものの価値が低い」ことから転じて「途方にくれる」、「無駄骨を折る」といった意味を持つようになりました。
「北海道という広大な土地で、1匹の羊を探す」という途方もない依頼を既存の表現とうまく組み合わせた英訳タイトルです。
【その他の作品あらすじ】
A.『羊群は地獄に堕ちる』……志茂田景樹の長編小説。選挙の裏で行われる、宗教団体の策略を暴いた作品。
B.『羊と鋼の森』……宮下奈都の小説。2016年本屋大賞受賞作。ピアノの調律師として働く青年が成長する姿を描いている。
C.『羊たちの沈黙』/ The Silence of the Lambs……トマス・ハリスの小説。映画化された作品もよく知られている。天才的な洞察力を持つ、人肉嗜好のハンニバル・レクター博士が登場する。
【第6問】 『So long!』
A.『その時までサヨナラ』
B.『さよならクリストファーロビン』
C.『さよなら絶望先生』
D.『サラバ!』
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【解説】
西加奈子の小説。主人公の圷歩の半生を追った作品で、2015年の直木賞を受賞しました。
作中でもキーワードのように使われる、「サラバ!」という言葉を直訳した、『So long!』が英訳時のタイトルです。「さようなら」や「また会いましょう」ではなく、思い切りの良さがそのまま表れていることがわかります。
【その他の作品あらすじ】
A.『その時までサヨナラ』……山田悠介の小説。家庭を顧みなかった主人公が不慮の事故によって妻を失ったことをきっかけに変わる物語。
B.『さよならクリストファーロビン』……高橋源一郎の小説。『くまのプーさん』の登場人物、クリストファー・ロビンが自身の存在意義を考えた結果、物語を書いていこうとする話。
C.『さよなら絶望先生』……久米田康治の漫画。何事もネガティブに受け取ってしまう教師、糸色望と教え子たちが繰り広げるブラックコメディ。
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【第7問】 『Can Anyone Hear Me?』
A.『わたしを離さないで』
B.『ベルカ、吠えないのか?』
C.『おーいでてこーい』
D.『君にしか聞こえない Calling You』
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【解説】
星新一の短編小説。ある日、突如出現した穴に「おーいでてこーい」と呼び掛けた人々。返答どころか、石ころを投げ入れても何も反応が無いことに気がついた人々は、ゴミや放射性廃棄物をどんどん捨てていきます。そんなある日、工事現場の作業員は空から「おーいでてこーい」という声を聞いて……。
元々のタイトルは作品の重要な台詞をそのまま使用していますが、英訳のタイトルも「誰か、私の声が聞こえますか?」という呼び掛けになっています。日本語では「姿を見せてください」、海外では「反応してください」という呼び掛けで差が生じているのが興味深いですね。
【その他の作品あらすじ】
A.『わたしを離さないで』/Never Let Me Go……カズオ・イシグロの長編小説。海外では映画化、日本ではドラマ化された。主人公の持っていたカセットテープに収録されていた楽曲のタイトルが作品のタイトルにもなっている。
B.『ベルカ、吠えないのか?』/Belka, Why Don’t You Bark?……古川日出男の小説。4頭の軍用犬たちの血統が紡ぐ運命をもとにした、壮大な物語。
D.『君にしか聞こえない Calling You』/Calling You……乙一の短編小説。クラスで孤立していた少女が、頭の中で見ず知らずの少年とコミュニケーションを取る作品。
【第8問】 『Strangers』
A.『異邦人』
B.『星へ行く船』
C.『異人たちとの夏』
D.『美しい星』
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【解説】
妻子と別れたシナリオライター、原田はある日、少年の頃に亡くなった両親と出会います。幼くして死に別れた両親と原田は、失った思い出を取り戻すかのように交流を深めていきます。
すでに亡くなっている両親をstrangersとしたのは、「見知らぬ人」ではなく、「ずっと訪ねてこない人」という意味を用いたのでしょう。かつては家族であった両親と原田の関係性がていねいに表現されていますね。
【その他の作品あらすじ】
A.『異邦人』/The Stranger(The Outsider)……カミュの小説。母の死に無感動だった主人公が隣人の暴力沙汰に巻き込まれ、死刑を求刑される作品。
B.『星へ行く船』……新井素子の小説。地球に住む主人公の少女が家出し、宇宙へ旅立つ作品。
D.『美しい星』……三島由紀夫の小説。火星人や地球人に覚醒した家族の物語。2017年5月に実写映画が公開。
【第9問】 『Remote Control』
A.『ゴールデンスランバー』
B.『模倣犯』
C.『パノラマ島綺譚』
D.『[映]アムリタ』
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【解説】
伊坂幸太郎の長編小説。首相暗殺の疑惑をかけられた主人公の逃亡劇が迫力をもって描かれています。
この作品のタイトルは、ビートルズの曲名をもとにつけられました。しかし、『ゴールデンスランバー』そのものを英訳するのではなく、ラジコンヘリを使った爆破テロが起こったことから『Remote Control』として英訳されています。曲名からイメージが先行するため、このようなタイトルになったのでしょう。
【その他の作品あらすじ】
B.『模倣犯』/ Puppet Master……宮部みゆきの小説。「天才」を自称する犯罪者の暴走が被害者側・加害者側、ふたつの視点で描かれている。
C.『パノラマ島綺譚』/Strange Tale of Panorama Island……江戸川乱歩の小説。売れない物書きの主人公が、自分と瓜二つの富豪と入れ替わり、理想郷を作り出そうとする。
D.『[映]アムリタ』……野崎まどの小説。自主制作映画に参加することになった芸大生と天才と称される女性監督の話。
【第10問】 『Twinkle Twinkle』
A.『きらきらひかる』
B.『銀河鉄道の夜』
C.『流れ星が消えないうちに』
D.『天の光はすべて星』
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【解説】
江國香織の代表作、『きらきらひかる』は夫婦と夫の恋人、奇妙な三角関係を繊細な文章で描いた作品です。英訳されたタイトルは、誰もが知る童謡、『きらきら星』の歌い出しと同じ『Twinkle Twinkle』。タイトルのやわらかな雰囲気と童謡の可愛らしい響きがマッチしたタイトルですね。
【その他の作品あらすじ】
B.『銀河鉄道の夜』/ The Night of the Milky Way……宮沢賢治の小説。ジョバンニとカンパネラ、ふたりの少年が銀河鉄道に乗って旅をする。
C.『流れ星が消えないうちに』……橋本紡の小説。共通の大切な人を事故で失った男女が心の傷を抱えながら、再生していく。
D.『天の光はすべて星』/ The Lights in the Sky Are Stars……フレドリック・ウィリアム・ブラウンのSF小説。宇宙開発計画が中断された世界で、再び宇宙へ行こうと奮闘する男の姿を描いた。
おわりに
英訳タイトルクイズ、あなたは何問正解できましたか?英語力とともに読書の知識を試される問題の数々に、苦戦したかもしれません。
海外でも人気を集める日本文学。もしかしたら、あなたの好きなあの作品も英訳され、海の向こうで読まれている可能性もあります。作品やタイトルに見られる豊かな表現を味わうためにも、よく知る作品の英訳を読んでみてはいかがでしょうか。
【英語を学びたい人におすすめの本】
英訳タイトルクイズで苦戦した人も、自信を失う必要はありません。力をつけるのに最適な本があるのです!
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初出:P+D MAGAZINE(2017/07/18)