エッセイ連載

小説丸で読めるエッセイたち。

辻堂ホームズ子育て事件簿
2022年11月×日 カチャ、と小さな音がした。朝6時過ぎの薄暗い寝室。夫と私は寝ぼけ眼をこすり、布団から顔を出す。夫が驚いたようにこちらを向く。私はぼんやりと、いま何の音で起きたんだっけと考えている。私がベッドにいるのを視認した夫がドアのほうを振り返り、動揺した声を発する──「●●!?」(●●=娘の名前)。夫婦そろっ
武田綾乃「おはようおかえり 京は猫日和」 第4回「思い出の京の味」
寂しがりたがり 私が結婚したのは去年の十二月末。その時に、「もしかしたら結婚について悩んでいる人達におすすめの本を教えてくださいというエッセイの依頼が女性誌あたりからくるかもしれないぞ!」と思い、オススメの恋愛本リストを密かに持っていた。だがしかし、一向に依頼が来る気配がない。これはもしかすると大事に大事に大事に温めす
辻堂ホームズ子育て事件簿
2022年10月×日 編集者さんに連載原稿を提出するときは、前月の原稿ファイルを開いて「名前を付けて保存」し、その際に連載回数の数字を書き換えることにしている。今回は驚いた。このエッセイ、本日で20回目なのだという。20か月。思えば遠くへ来たもんだ。そんな記念すべき20回目の原稿、いつも以上に緩く楽しく適当なテンション
武田綾乃「おはようおかえり 京は猫日和」 第4回「思い出の京の味」
ゼクシィって意外と実物を見たことない 九月某日、結婚式をした。入籍自体は昨年の十二月末だったのだが、コロナの状況がどうなるか分からなかったのと仕事のスケジュールに鑑み、少し間を空けて九月に設定した。ところが、いざ蓋を開けてみると2022年の夏はコロナが大流行。間を空けた意味とは……!(それでも九月にはある程度落ち着いて
辻堂ホームズ子育て事件簿
2022年9月×日 「ママぁー、といれぇー!!!」ある朝。保育園の入り口に、泣き声が響き渡る。保育士さんに抱かれた2歳娘が、腕の中で身をよじり、私に向かって必死に手を伸ばしている──。先月、引っ越しをした。これまで住んでいたマンションから、旧祖父母宅へ。一人暮らしをしていた祖母が去年の秋に亡くなり、1年近く空き家になっ
武田綾乃「おはようおかえり 京は猫日和」 第4回「思い出の京の味」
地震、雷、火事、歯医者 人生には怖いものがたくさんある。地震、雷、火事、親父……なんて言葉もあるが、私だったら親父よりも歯医者の方が百倍怖い。なぜ突然そんなことを言い出したかというと、現在、歯医者の待合室でこのエッセイを書いているからだ。虫歯の治療ではなく、定期健診の為にやってきている。真っ白な内装は素敵だが、そのくら
辻堂ホームズ子育て事件簿
2022年8月×日 先月のエッセイ原稿を、「言葉が増え始めた娘が、『ゲラ』という単語を覚えた。」という一文から始めたところ、担当編集さんから「その件も非常に気になります(笑)」というメールの返信をいただいてしまった。仕込んだのは夫だ。ようやく喋ることに興味を示し始めた娘が、2文字の単語なら何でも真似してくれるようになっ
武田綾乃「おはようおかえり 京は猫日和」 第4回「思い出の京の味」
家の本、置くスペースなさすぎる問題 先日、八咫烏シリーズの作者である阿部智里さんとアフタヌーンティーに行った。阿部さんとは定期的にお茶する仲で、いつも面白い本や漫画を教えてもらう。「最近、ファンタジー小説を読みたい気分なんですよ」と言った私に、阿部さんが勧めてくれたのが海外児童文学の『アルテミス・ファウル』シリーズだった
辻堂ホームズ子育て事件簿
2022年7月×日 言葉が増え始めた娘が、「ゲラ」という単語を覚えた。……という話はいったん脇に置いて、今日は子どもの睡眠について書いてみたいと思う。今から2年近く前、娘が生後7か月頃のこと。私の祖母と母が、自宅に遊びにきた。女4代揃って女子会(?)をしていると、ずり這いをして床を動き回っていた娘がぐずり始めた。お腹…
武田綾乃「おはようおかえり 京は猫日和」 第4回「思い出の京の味」
おなかは急に痛くなるもの 先日、胃腸炎になった。大の大人が腹を擦りながら四日間ほどベッドで寝込む状況というのは非常にテンションが下がるものだったので、こうなったらエッセイのネタにしてやる! と己を奮い立たせることにした。ちなみに大人になってから胃腸炎になったのは二年ぶり五回目だった。新鋭強豪校の甲子園出場くらいの頻度…
辻堂ホームズ子育て事件簿
2022年6月×日 「毎回俺の名言から始まる子育てエッセイってどうかな?」と、夫が突然提案してきた。何を言っているんだ。却下。どうも夫、そういうところがある。自分たちの日常がこうして発信されているのが面白いらしい。私にとっては喜ばしいことだ。家族のことを書く仕事は、家族の応援なしには実現しえないのだから。
武田綾乃「おはようおかえり 京は猫日和」 第4回「思い出の京の味」
おめめの天敵 コンタクトレンズがこわい。これは非常に切実な悩みである。コンタクトレンズがとにかくこわいのだ。だって、目を触ってる! コンタクトレンズをつけるという行為は、先端恐怖症の私にはとてもじゃないが耐え難いものなのである。正直に言うと、私はコンタクトレンズから逃げて来た。大学の卒業式も裸眼。両目0.2のぼや...
辻堂ホームズ子育て事件簿
2022年5月×日 辻堂ホームズ子育て事件簿、などというタイトルをつけているからには、たまにはミステリっぽいことを書かねばなるまい。先日、洗濯機を回そうとして、思いのほか中身がいっぱいであることに気がついた。洗濯物の量がやけに多く、蓋すれすれまで溜まっている。「昨日天気が悪くて洗濯しなかったからかなぁ、干すの面倒だな…
武田綾乃「おはようおかえり 京は猫日和」 第4回「思い出の京の味」
めいちゅう30% 先日、前撮りに行ってきた。前撮りというのは、結婚式より前の日にドレスや着物、衣装に身を包んで記念写真を撮影することだ。式で使うウェルカムボードやムービーなどに写真データを使用することも多いため、式の数か月前に撮る人が多いらしい。今回私は屋外での撮影を予定していたので、二週間前から天気予報を睨めっこす…
辻堂ホームズ子育て事件簿
2022年4月×日 最近『サザエさん』のアニメを見るのにハマっている。子どもではなく、夫が。しかもわざわざ録画しておいて、それを金曜日や土曜日の夜に再生する。どうしてリアルタイムで見ないのかというと、本来なら日曜の夕方に放送されている番組を〝先取りして〟視聴することで、「『サザエさん』がやってるのに明日も休みだ!」と爽快な…
武田綾乃「おはようおかえり 京は猫日和」 第4回「思い出の京の味」
幸福を呼ぶ猫 実家には現在猫が二匹いる。マンチカンの「ムタ」とさび猫の「ナナ」だ。年は大体二歳差ほどあり、ムタの方が先住猫だ。「ムタ」という名前はジブリ映画『猫の恩返し』に登場するムタさんからとった。身体が大きく、ちょっとぽっちゃりしていたからだ。前に飼っていた猫も「バロン」と名前を付けていて、我が家ではジブリ映画のキャラクターから...
辻堂ホームズ子育て事件簿
2022年3月×日 絶対に言葉を話したくない娘 VS 絶対に言葉を話させたい母。最近娘は、私にクレヨンを手渡してきて果物の絵を描かせることにハマっている。そこで先日、こんな攻防戦を繰り広げた。娘「はぁい!(サザエさんのイクラちゃん風に言いながらクレヨンを手渡してくる)」私「えー? なにー?」娘「んー!!(なかなか描いてもらえないことに激怒する)」...
武田綾乃「おはようおかえり 京は猫日和」 第4回「思い出の京の味」
大人な時間の使い方 二十代前半だった頃、編集さんに「最近の若い作家さんってどうやって過ごしてるんですか?」とよく聞かれた。その頃、作家の友人といえば青崎有吾さんと辻堂ゆめちゃんくらいだったので、「お茶しながら甘いものを食べてますねぇ」という答え方をしていた。実際、この三人で遊ぶ時にはお酒を飲むよりも甘いものを食べることの方が多い。