藤谷治
このお話は、著者がかつて下北沢に開いていた本屋さん・フィクショネスを舞台にした、店主や常連客たちが巻き起こす悲喜こもごもの人間ドラマです。実際に登場人物とまんま同じひとは、そこは小説なので存在しないようですが、かなりイメージに近い人なんかもいると聞いています。ちなみに、私は仕事場を兼ねていたそのお店に何度もお邪魔した
鳥肌が立つ、という表現は恐怖を感じたときにつかうものだと指摘されたことがあるけれど、感動が極まって全身をぶるっと震えが走ったとき、やはりぷつぷつ鳥肌が立つのは生理現象としてたしかにあることだ。本を読んでいてさーっと肌が粟立つほどの感情の高ぶりが起こると、ああこんなにも物語に没入していたんだなあと、はっとする。そこまで
小説というのはある意味、歴史とは逆の表現形式だ 藤谷治さんの新作『ニコデモ』は、戦時中にフランスに留学していた青年と、北海道の開拓民となった家族の数奇な運命の物語。意外にも出発点は、「ファミリーヒストリーを書かないか」という依頼だったとか。さて、その経緯とは? 一人の男と、とある家族の不思議な縁 藤谷治さんの新作『ニコ
足跡をたどる ──『ニコデモ』について── どんな家にも、遠い親戚にまつわる奇談のようなものが、ひとつやふたつはある。僕の母方の曽祖父の最初の結婚で生まれた長男、というのだから、遠いどころか親戚と言えるかどうかも判らないほどの人の話だ。この人は20世紀のはじめにフランス人と結婚して、子どももいたにもかかわらず、
1970年代、あるロックバンドが最高のアルバムをひっさげて人々の記憶に残る名曲をいくつも残しながらヒットチャートを駆けのぼり、そして突然音楽シーンから姿を消した。「ザ・シックス」のフロントマン、ビリーと、天性の歌声をもつデイジー・ジョーンズが出会い、たがいに相容れないまま詞とハーモニーをぶつけ合い、火花を散らすように音楽を生み、聴衆を魅了して伝説をつくったロックバンドこそ、あの「デイジー・ジョーンズ・アンド・ザ・シックス」だ。
書店店主とある常連客の物語
「小説の中にいっぱい小説を詰め込む、ということをやってみたかったんです」
と、藤谷治さんは言う。新作『燃えよ、あんず』についてだ。
「それにはどうすればいいかということで
人に言いたくないような恥ずかしい思いを
音楽一家のもとで育ち、チェロの腕前には自信のあった"僕"、津島サトル。しかし東京芸術大学附属高校の受験に失敗し、新生学園大学付属高校の音楽科に進学。普通科は女
小説自体が一つの旅であり、経験になる作品
高頭……刊行前のプルーフ本で『世界でいちばん美しい』を拝読しました。この小説は「けむり」というタイトルでいつかは書きたいと、藤谷さんが構想に十年をかけられた物
天真爛漫な一人の天才とその親友
島崎哲には親友がいる。雪踏文彦、通称せった君。小学生の頃、勉強ができなくて周囲から馬鹿にされていたせった君だが、島崎がピアノを弾く姿を見ただけで同じ曲を弾いてみせて周