読みもの
その試合から九日後、鴇田は星栄中ソフトボール部7番の彼女──死体発見後の報道で綿貫絵里香(わたぬきえりか)という名を知った──を犯した上で殺害した。 試合の翌日から、会員となったカーシェアリン
次の日は、コーヒーを飲む時間もなく、朝から電話にメールにと対応に明け暮れた。 「わかりました。本日必ず伺いますので。大丈夫です。……はい。失礼します」 電話を切って思わずため息をつく。こんな日に限
せっかく本店に来たからということで、芦屋川店には入っていないブランドにも立ち寄った。静緒と同じマンションに住む百合子(ゆりこ)・L・マークウェバーに頼まれた、ルイ・ヴィトンの新作のパーカーとキャップ
NIMAさんにご紹介したのは、元町本店のすぐ側にある老舗の弁護士事務所Rで、オーナー弁護士の一人であるT先生が代理人を引き受けてくださることになった。 アシスタントにはIT関連に詳しい若手のM先生
気付いたら苦手な人のことを延々と考えてしまう。玉恵はそんなことでエネルギーを消耗したくなくて、電車のおじさんの語ったアドバイスを心の中でリピートしました。 「メガネには罪はない」 思い出しましたが
弁護士にもいろいろある。本当にいろいろある。 「いや、一般人としては、国家試験通った人はみんなできる人で、ましてや司法試験なんて難関を突破した人はスーパーマンだって思うじゃない? でも実際はピンキリ
「響け!ユーフォニアム」のアニメが放送されていた2015年、私は人生の岐路に立たされていた。そう、就職活動である。アニメ化したら専業作家で問題ないだろうという気持ちと、いやいや人生そんなに上手くいかな
NIMAさんは、あれこれ聞いてこず、黙って必要なだけ情報を渡してくれる静緒を気に入ったらしい。徐々に自分のことを話してくれるようになった。 「昔いじめられっ子でねー。中学で不登校になって家で絵ばか
「塾でも、K大付属豊中中は難しいから、ランクを落として付属茨木中はいかがですかっていうのよ。私はまあ、結局最終的にK大に入れるならいいか、と思っていたんだけど」 「なにか問題が?」 「お姑さんが、反対
「なんて?」 「だから、転職」 「うそでしょ」 「できる人間が、もっといい待遇を求めるのはあたりまえでしょ。会社が困るなら、もっと給料払って引き留めれば良い」 彼の発言は、どこからどうつついても正論
美容整形外科に来た。 芦屋にある、待合室はすべて個室、そこにある椅子もすべて猫足という、ある意味ブランディングのしっかりしたオール自費診療クリニックである。 「こちらがバッカルファットですね」
おそらくこれが2020年最後か2021年最初の記事になるはずなのだが今の時点では判然としていない。 WEB連載には年末進行がない代わりに「正月休みという概念」も消失している場合が多く、ただでさえ誰が読
人は、よろこびがなくては生きていけない。からだが水を必要とするように、心はよろこびを希求する。 だが、私たちはしばしば、何が自分にとって真の「よろこび」であるのかが分からなくなる。分からないものを
インスタブックの新しいアカウントで女たちとセックスしながらも、鴇田は浅見萌愛を忘れることができなかった。たんにセックスのみならず、殺人というそれまで知らなかった快感が加わったことにより、彼女は鴇田に
あれは忘れもしない小学三年生か四年生かそのくらいの頃、友達数人といっしょに禁断の果実を食いまくったことがある。校庭の隅に植わっているビワの木が、毎年夏になると実をたくさんつけるのだが、絶対に取ったり食べたりしてはいけないと朝礼で言われていたのだ。
墺太利(オーストリア)が独逸(ドイツ)の一部分になったあたりから、アンティヌッティはニコデモに向かってはっきりと、作曲を促すようになった。 「なぜ書かないの?」アンティヌッティはあどけなさを装うよう
北風ではなく太陽を 飲み会などで出る血液型性格診断の話題が苦手だ。「A型は几帳面」などとしたり顔で言っている本人も、相槌を打っている同席者も、本気でそうと信じているわけではないだろう。なのに、「非科
荒川河川敷を出ると、ふだんは聴かないAMラジオをつけ、一時停止や法定速度をきちんと守って車を走らせながら、②と③について思考を巡らせる。 ②。警察が優秀でやる気があれば、インスタブックを通じて