アメリカ人で根強い人気があるファンタジー・古代戦記の名作がベストセラーに!-ブックレビュー from NY【第3回】

NY在住ジャーナリスト・佐藤則男が紹介する、アメリカのベストセラーランキング。今回は、映像化もされやすいジャンル「ファンタジー・古代戦記」から、注目の作品を紹介します。

<第3回>アメリカ人が大好きなファンタジー・古代戦記の名作

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George R.R. Martin. A Knight of the Seven Kingdoms. Bantam Books, New York. 2015. 355ページ. US$30.00  (Illustrations by Gary Gianni)

今月のベストセラー事情

今回の「ニューヨーク・タイムズ ベストセラー事情」は、ハードカバー・フィクション部門のトップ10(2016年2月7日の週)を紹介しよう。

 注:カッコ内の数字は前週の順位;鍵カッコ内の数字はベストセラー入りしていた期間(週数)

1.(-)BLUE, by Danielle Steel. (Delacorte.) A woman whose life has been shattered befriends a homeless boy. [1 ]

幸せな結婚生活を送っていたジニー・カーターは交通事故で一瞬にしてすべてを失ってしまった。生きる意味を見出そうと苦闘しているとき、ブルーという名前のホームレスの少年と出会い、不思議な友情が芽生えるが……。

2.(1) MY NAME IS LUCY BARTON, by Elizabeth Strout. (Random House.) A woman struggles with memories of her impoverished and disturbing childhood and its effect on the present as she attempts to reconcile with her mother. [2 ]

ルーシー・バートンが手術から目覚めると長い間連絡をしていなかった母親が見舞いに来ていた。母と娘の会話から浮き彫りになるルーシーの不幸な子供時代とそこからの逃避、作家志望、結婚、娘に対する愛情。2人が会話を通して次第に理解し合う様子が感性豊かに描かれている。著者のエリザベス・ストラウトはピューリッツァー賞作家。

3.(4) ALL THE LIGHT WE CANNOT SEE, by Anthony Doerr. (Scribner.) The lives of a blind French girl and a gadget-obsessed German boy before and during World War II.   [90]

盲目のフランス人少女、マリー・ロールと機械マニアのヒットラー青年隊の少年、ウェルナーが第二次世界大戦中にサン・マロで遭遇する。著者のアンソニー・ドーアはピューリッツァー賞作家。

4.(3) THE GIRL ON THE TRAIN, by Paula Hawkins. (Riverhead.) A psychological thriller set in the environs of London. [54]

レイチェルは毎日同じ通勤電車に乗る。ある日、車窓からショッキングな場面を目撃してしまう。警察に見たことを通報したのだが……。ロンドンを舞台にしたサイコスリラー。

5.(6) THE NIGHTINGALE, by Kristin Hannah. (St. Martin’s.) Two sisters in World War II France: one struggling to survive in the countryside, the other joining the Resistance in Paris. [47]

1939年、第二次世界大戦中のフランスの姉妹の物語。ヴィアンヌは郊外の自宅をナチスに占領され、娘と2人、生き残るために苦闘する。一方のイザベルは対ナチ・レジスタンス運動に身を投じる。

6.(2) THE FORCE AWAKENS, by Alan Dean Foster. (Del Rey.) Three decades after the defeat of the Galactic Empire, a new threat arises; an adaptation of the screenplay of the new “Star Wars” movie. [3]

銀河帝国が滅びてから30年、新たな危機が迫っていた。映画「スター・ウォーズ/フォースの覚醒」のノベライゼーション。

7.(7). ROGUE LAWYER, by John Grisham. (Doubleday.) The attorney Sebastian Rudd is a “lone gunman” who hates injustice and the system and defends unpopular clients. [14 ]

セバスチャン・ラッドが主人公の法廷スリラー・シリーズ最新作。彼は典型的な《町弁》ではない。弁護士事務所を持たず、銃を携帯し、相棒のボディーガード兼運転手が運転する防弾車を乗り回す。不正を嫌い、他の弁護士が尻込みするような依頼人の弁護だけを引き受ける。

8.(-)WARRIORS OF THE STORM, by Bernard Cornwell. (Harper.) Forces are gathering against Uhtred, the greatest warrior of the kingdoms of Wessex, Mercia and East Anglia; the ninth book of the Saxon Tales. [1 ]

「サクソン物語」(“Saxon Tales”)シリーズの9作目。イングランドのウェセックス、マーシア、イースト・アングリアを支配する王国はバイキングの脅威にさらされていた。王国の最も偉大な戦士Uhtredはマーシア北部を守っていたが、そこにバイキングとアイルランド連合軍が迫りつつあった。

9.(5) SCANDALOUS BEHAVIOR, by Stuart Woods. (Putnam.) In the 36th novel in the series, Stone Barrington hopes for a restful stay in the English countryside, but relationships with local neighbors complicate matters. [2 ]

ストーン・バーリントンが主人公のロングセラー・シリーズ36作目。波乱に富んだ生活に終止符を打ち、英国の田舎で平和に暮らするつもりだったストーン・バーリントンだったが、意に反し、英国に着くや否や複雑な事件に巻き込まれてしまう。

10.(-)FEVERBORN, by Karen Marie Moning. (Delacorte.) Solving an ancient riddle to prevent the Earth from vanishing on the streets of a dangerously magical Dublin; a Fever novel. [1 ]

ダブリンを舞台にしたファンタジー小説シリーズ「フィーバー」(“Fever”)の8作目。古代、妖精と人間を分けていた壁が崩れて以来、宇宙の秩序が乱れ、今や地球は少しずつ消滅しつつある。地球を救えるのは、失われた神話に出てくる《歌》だけだが……。

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『震災復興の政治経済学 津波被災と原発危機の分離と交錯』